第21話 不吉な、石像のひび
「巫女・ゼルフィーネ様」と、とある子連れの母親が言った。
「下の子の病気が治らないのです。どうぞご加護を!!3日前から熱を出し、今も下がりません」
「それはそれは」と、ゼルフィーネが言って、用意していた護符に、別の呪文を唱え、手で紋章を浮かび上がらせた。
「これを水に浸し、その子のおでこに置いて、母親であるあなたが祈ってあげてください。そうすればきっと熱も下がるでしょう」とゼルフィーネが言った。
「ありがとうございます、巫女様」と言って、その母親は、上の子らしき子の手をひいて、足早に教会を後にした。
*
12時近くなり、リアンノンは目を覚ました。たっぷり睡眠をとったから、気分がいい。
服を着替え、みんなのいる所を探した。
だだっ広い封印の神殿を、皆の名前を呼びながら進んだ。おかしい。みんなどこにいるんだろうか。
「リアンノンちゃん」と、前方から声がした。ヅラさんのものだった。
「ヅラさん!!」と、リアンノン。
「うん、俺だけど。ちょっと大変なことになっててね!!」と言って、ヅラ・ヅラ・ラ・ラスコー二が、リアンノンの手を取った。
「大地の巫女である君の力が必要だったんだ!ちょうど起こしに行こうと思っていたところだった!偶然だね」と言って、ヅラは笑った。
「長が待ってるよ」と、ヅラ・ラ・ラスコー二。
「長」とは、12使徒の中でも、転生をせず、この世界アラシュアができてからずっと12使徒のひとりとして、悪神シェムハザから世界アラシュアを守る任務についている、壮年の魔術師であった。顔にある険しい一筋のしわが、厳しい年月を思わせる。経験豊かな魔法使い、という雰囲気を醸し出している。名を、スマローコフと言った。
「リアンノンちゃん!」と、向こうからスマローコフの声がした。ラスコー二とリアンノンが連れ立って走る。
「君、これ見たことあるかい・・・???」と、スマローコフが言った。
リアンノンとヅラ・ラ・ラスコー二が覗いてみると、神殿の奥にある巫女の石像に、縦にひびが入っていた。
「・・・・!!!」と、リアンノン。
「こ、こんなことは初めて見ました、スマローコフさん!」と、ヅラ。
「私もです」と、リアンノン。
「ここは、役目を終えた歴代の大地の巫女が、その功績として、石像を残していく場所。シェムハザを封印する要ともいえる。リアンノンちゃん、神々と通信することはできないかな」と、スマローコフ。
「アテナ神は・・・いつも一方方向の通信だから・・・私からはできません、前もお伝えした通り。スマローコフ様。手立てがないわけではありませんが・・・」
「俺の出番だね」と、ヅラが言った。
「俺の飼ってる鷹が、空に手紙を届けられる」と、ヅラ・ラ・ラスコーにが言って、リアンノンの方を向いた。
「天に手紙を出すのは、この800年で3度目だが、リアンノンちゃん、できそう??」
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