10「後日」

元の次元に戻った花山連は、一週間ぶりの花山探偵事務所に来た。

鍵を開けて、椅子へ座る。


ふと、机を見ると、山内が残した報告書が、置いてあった。

色々と書いてあったが、気になるのは、佐藤の動機だ。


そこの部分だけ、報告書の中から探し出し、見つけて、読んだ。




佐藤砂鉄は、あの後、囚われたが自ら命を断った。


そもそも、どうして、こんな研究をしてたのかは、最初は、佐藤は能力を持っていた。

能力は、人と握手をすると、どこが悪いのかが分かる。

だが、周りに理解して貰えなく、苛立ちがあった。


能力を持っている人が発揮できる世の中になればと思い、研究をしてきた。

どこかで歯車がかみ合わなくなり、違う方面へと研究していき、能力を認めなかった世の中が悪いと思い、復讐に変わった。


復讐に、丁度いいと思った能力が、大地ほのかの能力だった。




動機を確認すると、一息吐き、月と日を見て、時間を見る。


十時十分を差していた。


「後、二分で地震が来る…か。」


すると、来た。

しばらく、そのままでいて、揺れが落ち着くと、IHクッキングヒーターでお湯を沸かして、お茶を淹れる。

登山リュックから、持ってきた新聞、資料、ファイル、ノートパソコン等を出して、記録を見た。


内容が違っていたり、全てが消えていると思ったが、違い、全てが残っている。


「はー、これが報酬っていわないだろうな。」


花山は、報酬は「金がいいな」って思ったが、たぶん、この情報は金では買えないほどの貴重な資料である。


履いていたタイムマシンを脱いで、探偵事務所の荷物入れに仕舞った。

新聞を落ち着いて読むと、地震の影にチラホラと研究所の設立情報があった。





気になって、早速、過去にアパートや大地の家があり、未来には占い研究所になる、今の土地に来た。

更地になっていた。


更地の建設計画があり、見ると、ここには公園が出来るとされていた。

研究所の設立は、阻止された。


その場で母に電話を掛けた時、近くで音が鳴った。

音は、直ぐ横だった。


「お袋。」

「連。」


ほのかと連は、顔を合わせると。


「どうして?」

「連こそ、どうしてここへ?」

「少し、この場所が気になって、それよりも元気そうだ。」

「ええ、おかげさまで。」


少し話しをした後。


「植物園に遊びに行く予定じゃなかった?」

「どうして、それを知っているの?あ、炎さんね。」

「お袋……いや、ほのかさん。今からデートしませんか?」

「何をいうの。もう。」


手を繋いで、連とほのかは歩き出す。

駅前に来ると、本屋があった。


「少女漫画の雑誌、三点セットはいかがですか?」

「え?別にいいわよ。」

「いいから。」


本屋に寄り、三出版から出ている少女漫画の雑誌を購入して、ほのかに渡す。

駅前の商店街を歩いて行くと、クッキーが売っている店があった。

クッキーを買うと、それも渡す。


「今度は、手作りを渡すよ。」


素直にほのかは受け取る。

ほのかは、懐かしい思いが胸いっぱいになり、泣き出してしまった。


「どうして、こんな事するの?」

「ほのかさんが、心残りをしていると思ったから。」


連は、あの時、ほのかの心に宿ってしまったから、申し訳ない気持ちがあった。


ほのかは、あの時から、花山連を探していた。

同じ苗字の人と一緒にいれば見つかるかと思った。

でも、もう見つかっていた。

自分の子供として。


「もう、子供ではないんだよ。」

「でも、恋心は色あせていないはずだ。だから、待たせてしまったかもしれないけど、答えます。」


その答えを、両手の指で。


「5、0、0、7、3、1」


と作ると。


「3、9」


ほのかも作り、笑顔になった。


「お袋、親父と仲良くな。」

「ええ。」


そのまま、生まれ育った家に帰った。

帰ると、炎がいて、一緒に帰ってきたほのかと連を抱きしめた。


今日、植物園に行こうとしたが、地震があったから、様子見でやめた。

やめたが、今日の新聞に、生まれ育った土地に公園が出来ると記事があり、気になったほのかは、訪れていたのである。


炎はなんとなく、息子の連と会うだろうと思い、一緒に帰ってくると思っていたから、一人でほのかを向かわせた。






その日の夜。


実家は、日本家屋であり、平屋で、庭がある。

庭に出ると、スマートフォンが鳴った。


「はい。」

『山内です。いかがですか?』

「おかげさまで。」

『それは良かったです。花山さんには感謝をしています。』

「なら、ご褒美を下さっても良いと思います。」

『それは、情報としてお渡ししたと思います。』

「やはり、あの情報を消さなかったのは、依頼料だったのか。では、仕事とか関係なしに、もう一度、会ってくれませんか?」

『それはかまいません。明日、事務所に行けばいいですか?』

「いや、今からです?どうせ、近くで見ているのでしょ?」


連は、家を出ると、家の表札がある門に、背中を預けていた山内を見つけた。

見つけられた山内は、驚いている。


「どうして、ここにいると。」

「スマフォから聞こえてくる声の裏から、俺の声が聞こえたから。」

「性能がいいのも、考えものですね。」

「なあ、俺と結婚してくれないか?」


山内は、いきなりでびっくりして、頭が真っ白になった。


「は?」

「一緒にいて、なんだかかわいいって思ってしまってな。仕事がってことなら、別にそのまましていてもいい。俺は、この次元にいるから、帰ってくる場所がここって決めてくれればいい。それに、老けた顔を、一緒に歩んで見たいんだ。」

「え、えええええ。」

「よければ、また、探偵事務所の扉を叩いて欲しい。」


山内は、照れているのか、飛んでしまった。






それから、一年後。


花山探偵事務所の扉を叩く音が聞こえた。

その音は、二回だ。


「待っていたよ。七海さん。」

「引継ぎ作業に、一年かかってしまいました。連さん。これからよろしくお願いします。」

「こちらこそ、よろしくお願いします。」


七海の手を取り、探偵事務所へ引き入れた。

七海は、花山七海として、花山探偵事務所に転職した。


終わり

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母を救う為に俺は飛ぶ 森林木 桜樹 @skrnmk12

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