9「解決」
本来の一回目の世界線では、山内は佐藤を取り逃し、ほのかが能力に目覚め、ガラスの容器に入れられ、あらゆる飲料水や貯水タンク、ダムなどの水分と言われる物に、ほのかの血が淹れられ、それを飲んだ人が次々に大きな怪我をしていく。
それは、人だけではく、動植物もそうであり、山の水に数滴垂らしただけでも、草木は枯れ、動物は苦しんだ。
専門家や研究者は、原因を追究する為に、色々と探ったが見つからず、やがて、人口は一気に減り、動植物も一気にいなくなっていた。
だから、山内の組織が動いて、タイムマシンを使って、身内である花山連へ依頼をしたのである。
二回目。
山内は、花山にほのかの監視だけ伝えていた。
朝早くに、占い喫茶に来たのは、監視をしていたから、夜もほのかが眠りに着いた後も、ほぼ徹夜で監視をして、ほのかが夜中、家を出たのを見ると、その後を尾行した。
佐藤を捕えようとしたが、徹夜が邪魔をして、逃がしてしまった。
ほのかはというと、占いの記憶を失っていた。
ほのかとは関わらず、佐藤は血の能力研究をしていた。
結果、やはり、ほのかの能力が欲しいとなり、目覚めさせ、その後は一回目と同じ展開になってしまった。
そして、三回目が、今の展開で、山内は、二回目の失敗は何だろうと思ったが、それは「連がほのかに恋をする気持ち」が必要だと考察した。
だから、今度は、あの時代に必要なポケットベルを渡した。
ポケットベルとの会話で、近くなる。
成功の鍵は、ポケットベルであった。
山内は、最初の未来を変え、人口や動植物を救え、とてもやり切った顔をしていた。
だが、まだ、この事件は、始末が終わっていない。
佐藤を捕えたが、佐藤が隠し持っていたほのかの血を口にした瞬間、身体中の傷という傷が開き、自ら命を断ったから、その処理をしなくてはいけなかった。
その山内は、花山連を思うと、とても感謝をしたと同時に、何か心が熱くなるのを感じた。
一回目の世界線にいるほのかは、助けてくれた花山にお礼を言った。
ほのかは、山内の組織が運営している病院で、検査を受けていた。
今まで、身体の自由が無く、動けなかったが、治療をされて動けていた。
「守ってくれてありがとうね。」
「いや、身体は大丈夫か?」
「ええ。話しを訊きました。貴方は、私の知っている連ではないのよね?」
「世界線的には、三度目の連となる。」
ほのかは、自分の手を合わせて、少しだけ指を絡ます程度に動かして。
「実はね。なんだか、貴方には助けられている感覚があるの。この世界線では、一番最初なのに、何故かね。」
「山内さんが言っていた。俺が、この最初の世界線に来てしまったから、違う世界線の記憶がつながり混ざるかもしれないと。」
俺が、関与しなかったら、この会話はないだろう。
「この最初の私が、花山炎と結婚をしたから、他の世界線の私は、花山という苗字に惹かれ探したと思うの。そして、子供の名前を連に、必ずするわ。」
「最初の貴方が、そう思ったから、俺は、連なんだろうな。」
「ええ。」
花山は、身体を伸ばして。
「では、そろそろ、自分のいるべき世界線に戻るよ。」
「その世界でも、世話をかけると思うけど、よろしくね。」
「こっちの俺も頼りにしてくれよ。きっと、見舞いにくると思うから、その時は、かわいい笑顔で迎えてやってくれ。」
「何よ。それ。」
そして、お互いに手を出して、二回、指で叩くと、花山は会話が終了するのを待っていた山内に近づいて、タイムマシンを履き、飛んだ。
元、自分のいるべき世界線に帰った。
いなくなった花山を見て、母は頬に涙を伝った。
病室に行くと、そこには、息子の連がいた。
「お袋、倒れたって聞いて、来たぞ。大丈夫か?」
「ええ、連が守ってくれたからね。」
「は?それよりも、ほら、見舞いだ。」
持ってきたのは、クッキーだ。
また、涙があふれて来た。
「お袋、まだ、どっか、異常が。看護師さん呼ぼうか?」
「いや、いいの。ありがとう。」
「親父の事は、俺が全部やるから、お袋は、自分の身体を心配していてくれ。」
「わかったわ。」
その顔は、とてもかわいい笑顔であり、連は少しだけ胸をときめかせた。
この世界線では、ほのかは能力に目覚めてはいるが、山内の組織が守っており、能力を発揮しなく、幸せに生を全うした。
けれど、一つの誤算が、ほのかの連に対する恋心がくすぶっていた事で、最初の世界線で芽生えた感情は、他の世界線でも宿った。
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