5「4/10」

今日も弁当と水筒を持っていく。

昨日、自分で弁当を作ったといったら、山田と前田は驚いていた。

男子で弁当を作ってきて、それが見た目もよく、美味しいと来たら、注目された。


趣味が登山で、アウトドアの料理なら一通り、一人暮らしも長いから、料理位は出来る。




登校する為に、アパートから出ると、大地と会った。

どうやら登校する時間は、同じである。


花山は、おはようと挨拶をしたが、大地は何も言わず少しだけ速足で歩き、公衆電話まで行く。

花山のポケットベルが鳴った。


「084」


すると、花山も同じように「084」と入力する。


やはり、周りの目を気にして、話すのはしなかった。

少しだけ男子と女子で話しをしているだけで、関係性を訊いてきたり、想像して噂したりする。

その光景は、初々しいと思うのだが、実際には、とても苦しい。

もっと自由に、周りに何も言われず、会話をしたいものだ。


だが、このポケットベルという端末は、暗号であり、内緒の話をしたい時には、役に立つ。

スマートフォンのメール機能だと、読める文字で会話をするから、チラリと誰かに見られると、読まれてしまうので、恋愛をしたいが、内緒にしたい人には、いい端末だなと、自分のポケットベルを見ながら、思った。




その日も、大地を見ていたが、同じく女友達と話をして、授業を受けて、そのまま帰る。

家に入ったのを確認して、少し様子を見た後、アパートに帰った。

帰ると、ポケットベルが鳴った。


「724106」


ポケットベル変換表に基づくと、「みた6」になった為、これは数字を文字として読む方式だと思った。


「7はな、2はに………。なにしてる。かな?」


部屋の固定電話で、メッセージを送ろうとしたが、定型文を貰っていたから、使ってみる。


定型文

01 しゅくだいわすれた

02 おふろはいっていた

03 でかけてます

04 すーぱーにいる

05 がっこうにいる

06 うらないしてほしい

07 しょうごにまちあわせ

08 おやすみなさい

09 いいゆめをみてね

10 がっこうやすむ


この十メッセージがあった。

今に適切なメッセージといったら。


「02かな?」


※4※402を押して、送信した。

すると、帰ってきた言葉は。


「881。はやいか。」


確かに、帰って来てから直ぐだから、早いだろう。


その後、直ぐに「※4※406」と入っていた。

06は「うらないしてほしい」だったから、これを自分に置き換えると「占いはいつしてほしい?」かなと思い、予定表を見ると、明日は半日で帰れる。


明日は健康診断と体力テストがあり、身長、体重、視力、聴力、歯科検診、五十メートル走、幅跳び、握力、反復横跳びなどがあり、各自でその場へと行き、全部終わった時、結果を担任に提出して帰っていいとなっていた。


土曜日ではないのだが、早く帰れるのは助かる。

この時代は、まだ、土曜日が休みではなく、半日だけ学校があった。

元の時代だと、土曜日は休みだ。


明日の午後から、家でやらないかと聞いてみたいが、どうやって言葉を作ろうか。


これは、変換表と定型文だけでは難しいと思い、数字解読表も必要だと思った。

仕方なしに、変換表で答える。


「113241」と「※4※407」と二回連続で送信した。

分かったのか「118」と来た。


この時代には、ネット回線といっても公衆電話でケーブルを繋いで出来るだけであり、一般家庭にはまだ復旧していない。

だから、ネットで買い物とはいかずに、本屋へと向かう。


その前に、大地の部屋を見ると、電気が消えていた。

大地家の玄関が開き、大地が出て来た。


「どこへ行くんだ?」


しばらくアパートから見ていると、本屋方面へと行く。

丁度良く、後を付けた。





本屋に入っていく大地を見ていると、雑誌コーナーにいた。


こちらに気づいていないみたいだから、少し遠くで様子を見ていると、雑誌を三冊手に持ち、その他コミックを何冊か買っていた。

コミックは分からなかったが、取った雑誌は分かった。


「なるほど。」


雑誌が置かれている場所を見ると、少女漫画が載っている雑誌があった。

三冊ってことは、三出版から出されている代表的な物だ。

そこから導かれるものは、コミックも少女コミックだろう。


「漫画好きなのか?」


母の部屋には、漫画はなかったから読まないのかと思っていたが、元の時代では電子書籍があるから、そちらで読んでいるのかもしれない。


花山は、自分の求めているポケットベル変換表が書かれている本を購入した。

家に帰り、大地の部屋を見ると、もう帰ってきているようで、電気がついていた。

カーテンは閉まっていた。

家にいるのを確認した後、簡単に夕食を作り、食べている間に変換表を見る。

数字だけで、こんなに言葉に出来るとは、一種の暗号だ。


その一つの例として「500731」で「ごめんなさい」だ。

「5」が「ご」、「731」が「なさい」なのは分かるが、「00」が「めん」だと。

ポケットベル変換表、奥が深い。


それと、自分に送ってくれる定型文も作ろうと思った。

紙に数字を書いて、横に文字を作る。


01 れんらくほしい

02 がっこうにいる

03 すーぱーにいる

04 おふろはいっていた

05 いえにいる

06 てつだって

07 しゅくだいわすれてた

08 いえにいきたい

09 しょうごにまちあわせ

10 がっこうやすむ


ここまで作り、ふと見ると、この定型文、20まで作成できる。

ポケットベルは同じ機種だから、大地のポケットベルも20まで作成できるはずだ。

だが、花山に渡されたのは、01から10まで。

だとすると、11から20までは誰に使っているのか。


「まさか、彼氏?」


彼氏がいるとしても、学校ではそんな素振りはない。

そこから考察するに、学校以外。

年上か、年下か。

占いをしているといっていたから、その関係か。


色々と考えが巡り、間に、クッキーを作っていた。


山内が説明したのは、学校のクラスメイトって受け取っていたが、それ以外の固有関係もあるのを範囲として認識した。


今日も「666663643264」とメッセージが来て、大地の部屋を監視して、電気が消えたら、同じく寝た。

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