4「4/9」

今日から、昼食がある。

学生らしく弁当を作って、教科書などを揃えて出かけた。

この時代、ペットボトルは、まだ飲料用としてなかったから、水筒にお茶を淹れて持っていく。





アパートを出ると、早速、出くわした。


大地の家から出て来るほのかに出会った。


「おはよう。」


大地から挨拶があった。

同じ制服を着ているからか、声を掛けてくれた。


「おはよう。大地さん。」

「あら?同じクラスだったかな?えーと。」

「花山です。」

「かざん君ね。かざんって、山から火が出るかざん?」

「花の山と書いて、花山です。」

「なんだかいいわね。」


そんな風に話をしながら、登校していく。

この機会を逃さない。


「ねえ。占いが得意なんだって?」

「ええ。占って欲しい?」

「一度、お願いしようかな?」

「うれしい。私の占いって、当たるんだけど、誰もやりたがらないのよ。」

「痛いんだっけ?」

「そう、私の占い、血で占うから。」


血液型占いかなって思ったが違って、針で指から血を出して、その血を紙に吸い込ませて、その形で占う物。


「覚悟するよ。」

「ええ、覚悟してください。」

「どこで占うの?」

「うーん、私の部屋がいいんだけど……、花山君は男性だよね。家に呼ぶと大変だわ。花山君の家っていっても、花山君の家族に何と言われるか。」

「俺、一人暮らしだよ。」


すると、大地は。


「それは、その珍しいね。」

「そう?高校生が一人暮らしって、そんなに珍しい?」

「珍しいよ。寮生活ならともかく、一人暮らしは…親は?」

「親は………。」


大地の顔を見る。

とても不思議そうにしていた。


「別にいいって。」

「寂しくない?」

「寂しくないよ。」


でも、本当は少しだけ寂しい。

目の前に母親がいる状況だ。

今すぐにでも、抱き着きたかったが、状況が状況だから、出来ない。


探偵事務所なんて開いてはいるが、疲れがたまっていたのか、母親と話しをすると心が和んでいく。


「花山君って、なんだか構いたくなるわね。世話を焼きたくなるっていうか。」

「そうですか?」

「なんだろう。ハンカチ持った?とか、宿題したの?とか、つい言っちゃいそう。他の男子には、そんな感情ないのに、花山君だと言ってしまいそう。」

「ははは……、あっ、そういえば、ポケットベルって持ってる?」

「ええ、持っているわ。」


制服のポケットから出す。

機種は、自分と同じのだ。


「俺も持っていて、番号交換しない?」

「うーん、まあ、いいか。」


ポケットベルの後ろを見せる。

ポケットベルは、後ろに番号が印刷されてシールとして張られている。

それを生徒手帳の白紙ページに記載した。

大地は、ポケットベル専用のリストが記載出来る小さいノートに写している。


「俺、持ったばかりだから、打つの遅いし、解読するのも遅いから、長く待って。」

「わかったわ。こっちは早いから、覚悟してね。」


危なかったと思った。

つい、スマートフォンを出して、写真を撮る所だった。

スマートフォンは役に立たないと思ったが、写真を撮るのは出来るから、身に着けていた。

瞬間的にポケットの中で、スマートフォンから生徒手帳に持ち替えた。

スマートフォンに慣れていると、こんな事があるから大変だ。


早速、登校中に公衆電話があり、試しにメッセージを送って見る。

花山は「15618513」と入れると、大地は「084」といれた。


「数字は配列でいれるのもいいけど、数字をそのまま読んでいれると簡単よ。」

「そうか。これだと簡単だね。」

「それと定型文っていうのが作れて、その一覧を相手に渡しておくの。※4※4と入力した後、定型文の番号を押すと、それが入力されるわ。」

「へー。」


大地は、自分が作った定型文を花山に渡した。

花山は定型文を見ると、01には早速、しゅくだいわすれた。が入っていた。

それを見て、少しだけ笑う。


「最初が宿題忘れたって、よく忘れるの?」

「ん?ああ、これは君が私に送る文だから、私が忘れるわけではないわ。」

「あー……、ああ、そういう事。」

「でも、私も、宿題忘れるっていうか、やらないのよね。」


母は、毎日、家計簿を入力する位、確りとした人で、宿題を忘れるなんて以外だった。


「そんな風には見えないけど。」

「そう?結構、面倒くさがり屋よ。私。」


母の事が知れて、少しだけ楽しくなった。

こんな人物だったのかと、驚かされる。





登校していくと、早速、クラスメイト二人にからかわれる。


「お前、この付近では見ないけど、転校生か?」

「転校生ではないよ。入学式にいたし。」

「で、どうして、大地さんと一緒に登校してきたんだ?」

「家が近かったからだよ。」


などと、質問される。

からかわれていたが、悪くはなかった。

だって、自分からみれば、母と話をしている感覚だからだ。


しかし、大地はどうだろうと見ると、女子が集まって話しをしていた。

少しだけ、こちらをチラチラと見ていた。


『あー、悪い事したかも。』


と思ったが、この一週間で俺は消えるから、消えたら噂なんてなくなるだろう。

それから話せるクラスメイトも増えて、色々と話しをした。

結構な情報が収集された。


今日は、下校も大地を尾行しながら、帰り、早速、情報をエクセルに入れる。

昨日の遠藤は、遠藤正樹えんどうまさきで歴史が好きだと知った。


それと今日からかってきたクラスメイト、山田一郎やまだいちろうは、アニメが好きで、毎日やっているアニメをビデオに撮って見ている。

もう一人は、前田道夫まえだみちおでゲームが好きで、ゲームセンターにいるのが多い。

家にもゲームソフトが、沢山ある。


また、大地の情報も書き加えた。


こうやってみると、結構、仲の良いクラスなのだと思う。


寝る前にメッセージが来た。


「666663643264」


このメッセージが来ると、とても安心する。

大地の部屋が明かりが消えると、花山も眠りについた。

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