第32話 破壊神と女神

 ボクたちは、天空城の中核に到着した。


 まるで、宇宙空間のような場所である。

 足場は感じるが、現実世界ではない感じがした。


菜音ナオトくん、見て。空が」


 緋依ヒヨリさんが、窓を指差す。


 窓の向こうに、広大な宇宙が広がっている。

 呼吸はできるが、外には出られない。


「城から、日本列島が見える」

 

 どうやら、ボクたちは宇宙まで上がってしまったらしい。


「ようこそ。少しは、視野が広がったかよ?」


 ダンタリオンが、眼の前に現れた。まるで自分が、神であるかのような発言をする。

 

「どいつもこいつも、オレサマの邪魔ばかりする。特にあの女神ヤロウ!」


「シロアリを駆除するのは、当然の役割でしょう?」


「まあな。オレサマたちは、そうやって終わりの来ない戦いを続けている」


 ダンタリオンが、昔話を始めた。

 

「その昔、世界を想像した女神がいた。だが、同時にオレも生まれた」


 女神は地上を守る配下として、勇者ファム・アルファを作った。


 ファム・アルファは人として産まれることもあれば、時として人ならざる姿に変わって世界をダンタリオンから守ったという。


「オレサマは、ありとあらゆる世界に逃げた。そこで暗躍を続けてきた。しかし、どこの世界でもお前が邪魔をした。どこに逃げても、ヤロウは追ってきた! 忌々しいファム・アルファ! その一人がお前だ。アシタバ・ヒヨリ!」


「それが、私が生まれた使命よ。私は、ダンタリオンを消し去るために生まれたの」


「ああ、そうさ! だからオレサマが、その呪縛から解放してやろうってんだ! 虚しい戦いからな! なのに、お前はオレサマの指示を無視した!」


「そんなの許さないわ。第一、私はあなたたちがキライなのよ」


「そのヤロウは好きになったのにか?」


 ダンタリオンが、ボクを指さした。


「オレサマには、わかるんだぜ。お前さんは、そのオトコに惚れてやがる! ダンタリオンでもあるそいつにな!」


「私は、平井ヒライ 菜音ナオトに好意を持っているの。あなたなんかを、慕ったりはしないわ」


「だが、そいつはオレサマと同じ力を持ち、オレと同じ魔力量を持つんだ! オレサマといっしょに、女神のヤロウの因果から逃れたいなんて思わなかったのか?」


「思うわけないでしょ? 私は、人々を守るために戦ってるのよ」


「守る価値なんてないぜ。人類なんて。テメエ等も、見ただろ? 人間は少し精神をいじくってやるだけで、簡単に人をやめちまう。人であるのに、平然と人を殺すようになるんだぜ。これは、何万年も続くし、どこの世界だってそうだった。ウンザリなんだよ。人間が目障りで仕方がねえ。オレサマのエサの分際で、我が物顔で地上にふんぞり返りやがって!」

 

 だから、と、ダンタリオンはカトウケイゴの姿を変えた。


「オレも、もう人の姿をやめる!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る