第31話 ゴーレム撃退

 地上では、キバガミとチョーコが魔物を撃退していた。

 キバガミのライフルが火を吹き、モンスターに風穴を開けていく。

 だが、数が多すぎる。

中にはカトウ・ケイゴに化けたダンタリオンのアナウンスに踊らされて、やけになって暴動を起こす民衆も。


 ダンタリアンが街中の巨大モニターを占拠して、街を襲うように演説をしている。


 意思の弱い人間たちは、ダンタリアンの言葉を真に受けて、操られていた。

 

「ヒャハハハ! 世界は終わりだ! 燃えつきろ!」


 無人になった車を、若者たちが鉄パイプでガンガンと叩いている。


「やめないか! 魔物をおびき寄せることになるぞ!」

 

「どうせ世界は終わる! みんな魔物に食われちまえよ!」


 キバガミがいくら説得をしても、若者はバカ笑いをしながら行為をやめない。


「あきらめるでち、キバガミ! 見捨てるしかないでち!」


「しかし!」


 猿型の魔物が、若者を頭から喰らおうとしたときだった。


「え~い」


 自暴自棄になった若者に向かって、ルゥが馬車で体当たりをする。


 転倒した若者を肩でどかせ、キバガミは猿型の眉間に銃弾を叩き込む。

 

「ルゥ、無事か?」

 

「はい~。この子たちにも、気絶してもらいました~」


 昏倒している若者たちを、足で蹴って馬車に押し込んでいく。


「では、わたしは他の人たちを助けてきますね~」


「助かるでち」



 こちらは、問題ないだろう。


 自分たちの役割は、菜音ナオトたちが帰る場所を守ること。


 命にかえても、この場は守り抜く。

 

 

 


 彫刻の大男が動き出し、鉄製の棍棒を振り回す。


「来たよダンヌさん! てや!」

 

 ボクは、剣にダンヌさんの魔力を注ぎ込んで、切りかかった。


 太い鉄の棍棒を、ダンヌさんの剣が切り裂く。

 ついでに、彫刻までキレイにスパッと真っ二つに。

 

「うわ。すっご」


菜音ナオトくん、後ろよ!」


 東洋の甲冑が、日本刀を振りかぶっていた。


「こちらは、任せて!」


 緋依ヒヨリさんが、ツバ迫り合いの状態に。


「おかしいわ。ゴーレムなのに、恐ろしく強い。まるで、人の魂が入っているみたいな」


 他のゴーレムたちも強く、緋依さんは劣勢に立たされた。


 ボクが数を減らすけど、また大量のゴーレムが行く手を遮っている。


「ナオト、こいつら、正体は生身だお」


「え?」


「ダンタリオンは倒した相手を剥製にして、自分の意のままに操っているんだお」

 

 自分に歯向かってきたかつての英雄たちを、死してなお使役するとは。気分の悪い相手だ。


「浄化してあげよう、ダンヌさん」

 

「わかったお。ヒヨリ、こいつらは物理じゃなくて、炎属性で倒すお」


「そうね。キリがないわ」


 緋依さんが、ボクと背中合わせになった。ボクと呼吸を合わせて、武器に炎属性魔法を流し込む。


「迷える英霊たちよ、天へ帰り給え……。【セイクリッド・フレア】」


 緋依さんが、刀を水平に振るった。

 ボクも、同じように剣で空を切る。


 剣から炎の柱が伸びて、英霊たちを浄化の炎で包み込む。

 緋依さんが流し込んだ聖属性の力が炎と混ざって、苦しむ英霊たちを燃やしていった。


「かつてダンタリアンによって命を落とした、伝説の勇者たちよ。今こそ永遠の眠りを」


 緋依さんの祈りによって、英霊たちが天へと昇っていくのがわかる。


「成仏してくれるかな?」


「するわよ。きっと」 


「ゴーレムしか頼れる相手がいないなんて」


「相手を信用しないやつの行き着く先なんて、こんなもんよ」

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