第7話「私の義理のお姉ちゃんみたいな人が言ってたんだけど」
「
カフェ・
店に入るなり、
「別にわざわざ教えないだろ」
「そうかなあ。一緒に帰る時もあるんだから、寄ろうって誘ってくれてもよくないかな? ねえ、
「…………」
川越さん、無言&猫目でじっと常盤を見返す。借りてきた猫とは、こういうことをいうんだな……。
学校から
常盤はそれが気にならないのか、気になってるけど触れないようにしているのか、俺7:川越3くらいの割合で話を振ってくれていたが、川越は一回も返事をしていない。
事情を知っているから、逆に「話せよ川越」とも言えず、ここまで来てしまった。
「川越さんだって教えてもらいたかったよね?」
「…………」
まあ、そのおかげで川越とは来たことがあると常盤にバレなくていいっちゃいいのだが。いや、バレてもいいんだけど。
そもそも一緒に帰る時に「カフェ寄ろう」なんて女子相手に言えるはずないだろ。ましてや、常盤相手になんか。
昼休みに俺が常盤からの伝言を伝えて以来、つまり5、6時間目はずっと、川越は行くか行かないかを考え込んでいたようだった。
ホームルームが終わった直後、どうするか尋ねるために川越の席まで行くと、川越は俺を避けるようにカバンをガバッと持って教室の外に出ていく。ええ……。
川越の前の席の女子が、自席でカバンに色々しまいながら、
「
と聞いてくる。
「なんかしてるってなんだよ?」
「何かはわかんないけど、なんかしてる感じするじゃん。朝ちゃんが昨日から楽しそうな表情してるし」
「そうか……? 無表情を超えてむすっとしてないか?」
「ううん、楽しそうだよ。ゆ……あたしの義理のお姉ちゃんみたいな人だったらすぐ見抜いちゃう」
義理のお姉ちゃんみたいな人?
鋭いというかなんというか、当たらずとも遠からずな感じではあるものの、あまり仲良さそうには見えない方がいいような気がする。教室で話しかけてはいけないらしいし。
「でも今、無視されてたの見ただろ?」
「うーん。でも、だとしたら意識してるってことではあるくない? 好き避け?」
「好き避けではないだろうけど……」
「それに、私の義理のお姉ちゃんみたいな人が言ってたんだけど、」
だから、義理のお姉ちゃんみたいな人って何?
「同じ目的を共有出来る仲間がいるだけで、人生が色づくんだって」
「はあ……?」
なんだその話。
「つまり、私が言いたいのは、」
彼女は掃除ロッカーの横に立てかけてあった自分のものらしいギターを背負って、ドアの外を指さす。
「朝ちゃん、外で待ってるよってこと」
「……ほんとだ」
そこには、川越のカバンがはみ出して見えていた。
俺はすぐさま常盤のところに行って、「ちょっと待っててくれるか?」と話し、教室を出た。
「川越」
「……出てくるの、遅いわ」
拗ねた、というほど可愛らしくはなく、普通に不機嫌にむすっとした感じで川越は俺を上目遣いで睨む。知らんがな。
「今日の常盤さんとの会合って、あなたも行くのよね?」
「え、そうなのか?」
ていうか、会合って。
「行かないの?」
「あー……」
俺は耳打ちされた時のことを思い出す。
『柳瀬くん、もしよければ、こっそり、川越さんを私に紹介してくれないかな? 今日の放課後とか、空いてたら一緒にファミレスとかいきたいんだけど……』
正確にはそう言っていた。
紹介する、ということは、俺も行く……のか?
「……まあ、行くよ」
「じゃあ行くわ」
食い気味に川越が言った。腹は決まっていたのかもしれない。
「かなり気は進まないけど、あなたと常盤さんが話すのを見られる絶好の機会を逃すわけにはいかないわ。ていうか、それに行けないとしたら、あたしの元々の
「目論見」
また難しい言葉を。
「あなたのラブコメを見届けるっていう目論見よ」
「ラブもコメもする気はないけどな……」
とはいえ、川越が俺の視点でいろんなものを見ること自体は俺も協力したいと思っているから断る理由もない。
「じゃあ、俺、常盤呼んでくるから」
ということで、俺が常盤を改めて誘って、今日の紹介イベント(?)は実施されることになった。
ちなみに、お店は、川越がせめてうちの高校の生徒が来る可能性が高いところはやめてほしいという依頼により、俺のいきつけのカフェ・
俺たちが店に入ると、
「いらっしゃいませ」
とダンディな声のマスターが出迎えてくれたが、ちょうど窓際の丸テーブルの席に座った頃、
「ただいまー……って、あれ!? 柳瀬さん!? 今日はバイトじゃないんじゃ……」
黒いセーラー服姿の
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