8.#雨・僕・嘘で文を作ると性癖がバレる
ぽかんと天を仰いだ。果てしなく広がる青い空から大粒の雨が降り注ぐ。白茶けた大地が瞬く間にきらきら潤っていく。
雲もないのに一体どこから。
――答えはすぐに見つかった。噂には聞いたことがあったけど実際に見たのは初めてだ。
「にいちゃ、あれ! ほら!」
ぐいぐいと僕の手を引っ張る弟が、もう片方の手でまっすぐそれを指した。慈雨を降らせる張本人、いや張本竜は、僕たちに見られていることなんてお構いなしで大空を駆け回っていた。
竜が咆哮すると空気がびりびり震えた。銀の鱗に覆われた尾が上下に大きく揺れればそのたびに降ってくる水の量が増える。雨は陽光を浴びてそこかしこに美しい虹を作り出した。
やがて竜は長い体躯を七色に煌めかせ、光の彼方へ消えていった。
「行っちゃったな……」
「すごかったね、にいちゃ!」
「うん。……さっきはごめん、お前の言う通りだった。嘘じゃなくて本当にいたんだな」
「へへ」
弟は僕にぎゅっとくっつくと嬉しそうに白い歯を見せた。
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#雨・僕・嘘で文を作ると性癖がバレる(410字)
2021年1月23日
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【オレサマ竜と春花の姫】
https://kakuyomu.jp/works/16816452219812653941
【オレサマ竜と始まりの約束】
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