第36話


◻︎◇◻︎



 国王は、生まれた時から、否、生まれる前から赤の一族の“奴隷”であった。



 真の王家である赤の一族が命じたことが全てであり、歯向かうことは一切許されない。


 そんな生活に、優秀な国王は辟易としていた。


 私利私欲に塗れた醜い醜い政策を、王家を隠れ蓑にすることで何度も何度も行ってきた赤の一族の腐敗ぶりは、言うまでもないほどに酷く、冷たいものであった。



 国王は決めていた。


 自分が王になった暁には、赤の一族を滅ぼすと。



 異国の姫と婚姻を結び、王となった国王は、まず盤石の地盤を作り上げた。


 赤の一族の妨害をもろともしない地盤を作るのには、長い長い時間と途方もないほどの労力が必要となった。



 そんな時、自分の考えを支持し、自分を陰から支え続けていた弟が死んだ。


 赤の一族の庶子を恋人にし、情報を聞き出してくれていた弟が、その女に殺されたのだ。


 あまりにもあっけない終わりであり、あまりもむごい殺され方であった。


 赤の一族の当主である老害は、弟の死に絶望する国王を嘲笑い、弟の死は『見せしめだ』と言い切った。



 それからは、ただただ人形のように過ごした。


 その頃には、自分の妾へと加え様子を監視していた弟の元恋人?が、弟の子供を産んでも何も感じなくなっていたほどには、感情が死んでいた。



 謀反も反逆も何も考えていない人畜無害を演じた。


 演じて、演じて、演じ続けて、その果てに、国王は1つの突破口を見つけた。


 そして、その突破口から、国王は赤の一族の完膚なきまでに滅ぼした。



 これが、10年前の赤の一族の悲劇の真実であった———。

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