第8話
◻︎◇◻︎
襲撃を受けた次の日の朝、アザリアは住み慣れた王宮から姿を消し、とある酒場の最上階の3人掛けのソファーにて、艶やかに微笑んでいた。
「昨日のあれはどういうつもりですの?ハンドラー」
———こつん、こつん、こつん………、
遠い異国の工芸品であるガラス製の机の表面を右手人差し指で叩くアザリアは、足を組み白い美脚を惜しげなく晒し、左手を頬に当てている。
しゃらっと赤い猫っ毛が背中から胸に落ち、大きく開いた谷間から覗く白さに、ハンドラーは唾を飲み込んだ。
その行為は彼女の美しさに当てられたためか、はたまた一瞬で彼女に殺されてしまう射程範囲内に己が身を置いているからかは定かではない。
けれど、その笑みに怒りが滲んでいることは、長年の付き合いであるハンドラーにはお見通しだった。
「あんな雑魚では、わたくしを殺すも、王子さまを殺すも何もございませんわ。もう少しマシなのをお寄越しくださいませ。
わたくしが最後に頑張るにしても、あんな雑魚では体力削りにもなりませんわ」
思っていたことと反対の言葉がきたことに、ハンドラーは目を見開いた。
「あぁあと、わたくしを組織から切り捨てたいのであれば早めに行ってくださいませ。
わたくし、喜んで組織を出て独立いたしますから」
———ぱりぃん!!
机に打ち付けていた指を最後に強めに変更したアザリアの手によって、美しかった机は粉々になる。
「それでは、ご機嫌よう。ハンドラー」
彼からの返事を待つこともなくアザリアは出ていく。
だから、アザリアはこの時の彼のくちびるが弧を描いたことに気が付けなかった。
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