第7話 殺人事件?

「あはぁ~ん♡ …………生き返るわぁ~♡」


「出だしから色気爆発ですねぇ、志麻姉さん。

 知らない人がここだけ読んだら、

 声かと疑われちゃいますよ。

 温泉ですからね、温泉。誤解のないようにぃ」


「もう~ここんとこずっと仕事が忙しくて、

 子供寝かしつけた後にまたPC開いて、

 夜中まで仕事してるのよ~信じらんない。

 〝時短勤務〟って言葉、辞書で開いてみろっつーのよ」


「今、最後のセリフ……志麻姉さんじゃない男の人の声が聞こえたような……。

 それにしても、ひどいブラック企業ですねー。

 大丈夫です、訴えましょう。

 訴えたら勝てます、絶対」


「この金曜の夜に浸かる温泉と、

 可愛い妹二人との駄弁る時間だけが私の癒しなの。

 これがないと、ほんと私死んじゃう」


「義理とはいえ、そこまで言ってもらえて、

 香穂、感激ですぅ」


「ちょっと待て。

 死にそうだったのは、私だよ!

 前回のこと、誰も何も触れないとか、おかしくない?

 私、沈められそうになったんだけど!

 殺人事件だよ!

 本当に死んじゃったらどうすんの?!」


「あっちゃん、いたのね」


「敦美姉さん、静かだったから、

 てっきり今日は、まだ来てないのかと思いましたぁ」


「嘘つけっ! さっきからここにおるわっ!

 ちょっと最近、私への扱いがひどくない?」


「そんなことないですよぉ。

 愛してます、敦美姉さん♡」


「そんなことないわよ~。

 愛してるわ、あっちゃん♡」


「語尾〝♡〟で誤魔化すなっ。

 本当にタイトルが『湯けむり三姉妹は見た!』に変わるところだったよ!

 ってか、三姉妹じゃなくて、ただの姉妹になっちゃうじゃん!」


「あら、それはそれで、読んでみたい気もするわねぇ~」


「この際、わけのわかんないジャンルは捨てて、

 ミステリーに路線変更しましょうよ。

 絶対そっちの方が需要ありますってー」


「そうねぇ。

 それなら、やっぱり現場はスパ! かしら」


「いいですね!

 それもこんな田舎の片隅にあるスーパー銭湯なんかじゃなくて、

 本当にリッチで高級なスパで起こる殺人事件……」


「リッチと高級は同じ意味だけど、

 それだけ重要ってことね!」


「もちろんです。

 セレブな奥様方が集まる平日の昼間……

 そこで突然、悲鳴が……〝きゃー! 人が死んでるわ!!〟」


「そこへ、私たち美人三姉妹が居合わせて、犯人を見つけるのね!」


「一見仲の良いセレブな奥様方の間に、実は、

 夫と不倫関係にあった女への嫉妬と恨みが積もった結果の悲劇……」


「………今、私、犯人の気持ちがちょっと分かった気がするわ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

SPADABEL〜3人の義姉妹が温泉に浸かりながらどうでもいい話をただ駄弁るだけの話〜 風雅ありす@鬼姫完結しました! @N-caerulea

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ