第5話 夢は映画化

「ドラマ化するとしたらぁ~、私たちの役って、誰が演じると思いますぅ?」


「え、その話まだ続いてるの?」


「そうねぇ~香穂ちゃんは、可愛らしい感じがこう~…………」


「こう?」


「名前が出てこないんだよね、志麻姉」


「う……私、あんまり女優さんの名前とかよく知らなくて~……」


「むしろ名前を出してたら、それはそれでマズイんじゃない?」


「えーそれじゃあ……

 映画化したら、どんな話になると思いますぅ?」


「やっぱり、〝湯けむり美人三義姉妹は見た!〟じゃない~?」


「タイトル『SPADABEL』じゃないんかいっ」


「ミステリーですねぇ!

 きゃ~♡ 私、一度でいいからあのセリフ言ってみたかったんですよぉ」


「あのセリフって……やっぱり……」


「じっちゃんの名にかけて!」「真実はいつもひとつ!」「きゃ~人が死んでるぅ~」


「「え」」


「いやいやいや、志麻姉のはわかるけどね。

 香穂のは、それ何? なんで第一発見者役?」


「えーだって、人が死んでるところなんて、

 滅多に遭遇できるものじゃないじゃないですかぁ。

 こう事件がはじまるって感じがして、わくわくしません?」


「私、見たことあるよ~」


「え、マジ? 見たって、死体を?」


「まさか……お葬式で、なんてオチじゃないですよねぇ?」


「学生時代、サークル活動で山に登ってた時にね~。

 結構多いみたいよ、山で自殺する人って」


「うへぇ~……テンション下がるぅ……」


「ちょっと期待してたのと違って、香穂がっかりです」


「ご、ごめんね。

 映画の話に戻そっか~」


「ってか、この話ってさ、温泉で女三人がだべるだけの話でしょ?

 映画見てる人、ずっと温泉に浸かってる女三人がだべってるところを

 延々と二時間見せ続けられるの? 苦行なの?」


「そんなことないですよぉ、むしろサービスじゃないですかぁ。

 美人三姉妹の入浴シーンですよぉ。

 いつ身体に巻いているタオルがはらりと落ちるか、とか、

 湯舟から出るシーンはないのか、とか、目を離す隙すら与えません!」


「いや、それこそマズイでしょ。

 子供は見ちゃダメ、的な。

 年齢制限かかるよね、それ」


「そういえば、温泉映画ってあったわよねぇ。

 あれと被るからダメかしら~」


「ああ、何か顔のいかついおっさんが出てきて、

 温泉つくっちゃうやつだっけ?

 前に、志麻姉と一緒に見たよな」


「敦美姉さん、何言ってるんですかっ!

 あれは、むさいオッサンたちが温泉に浸かってますけど、

 こっちは、美人三姉妹ですよ?

 おっさんなんて、敵じゃありません」


「私、あの俳優さん好き~♡」


「私は、どちらかというと、あのニヒルな悪役王子の方が好きかなぁ」


「あっちゃん、影のある男が好きなのね~」


「……ちょっと二人とも、私の話聞いてます?」

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