第4話 ドラマ化

「あぁ~……生き返るわぁ~」


「ほんと、温泉って、なんでこんなに気持ちいいのかねー」


「もう~、敦美姉さんったら。

 今日は、前みたいにのぼせて、溺れないでくださいよっ。

 あの後、ほんっとに大変だったんですからぁ」


「あーめんごめんご。

 あんまり志麻姉さんが話引っ張るから……

 ……って、これも死語だっけか」


「もういいじゃない~、気にしなくても~。

 どうせ私たち死語の世界の住人なんだから~。

 っていうか……溺れたのを人のせいにしないでよね〜」


「死語死語言わないでくださいっ」


「あれ、そういや香穂、語尾〝♡〟は、どうした? 外れてるぞ」


「あれはやめました」


「なんで? 可愛かったのに」


「だってぇ、音声に乗らないとこで頑張っても、

 ドラマ化したら、見えないじゃないですかぁ」


「え、何なに~?

 これって、ドラマ化の話が出てるの~??」


「いやいや、ないでしょ。

 ってか、これドラマ化するような話だっけ?

 ただ女三人が温泉浸かりながらだべってるだけの話じゃん」


「それは、まだですけどぉ。

 これからドラマ化するかもしれないじゃないですかぁ。

 だから、その時のために、なるべく音声に乗せられるところで個性を発揮するんですぅ!」


「いや、充分個性出てると思うぞ。

 ってか、まだ話始まったばかりなのに、

 ドラマ化することまで考えてるんかい」


「いや~ん、若者は夢があっていいわね~」


「ちょっと、志麻姉。

 今、私も一緒にくくろうとしたでしょ。

 違うからね? 私もまだ充分に若いからね?」


「四捨五入したら同じじゃな~い。

 そんな遠慮しないで~♡」


「遠慮するする。語尾 〝♡〟いらない。

 ってか、四捨五入しても同じじゃないから」


「志麻姉さん、夢は年齢で見るものじゃないんですよぉ!

 夢は、いくつになっても見ていいんですぅ!」


「香穂ちゃん……そうね、私が間違っていたわ。

 私も……映画化くらいは夢見てもいいかしら?」


「いいですよぉ! 映画化、やりましょう!

 映画化して、有名になって、出演料がっぽりもらいましょう~!!」


「おいおい、夢の話じゃなくて、金の話になってるぞ」


「お金は大事ですぅ」


「そうよ、もらうもの、もらえなきゃね~?」


「そりゃ、お金が大事なのはわかるけどさ……夢の話だよね?」


「こうなったら、映画化して、ハリウッドスターになって、

 憧れの映画俳優たちとめくるめく愛の泥沼関係に……」


「それはだめ」「それはだめです」


「えーだめ? 憧れちゃうんだけどなぁ」


「兄貴泣いちゃうよ」「お義兄さんが可哀想です」


「う……それを言われると痛いわね~」

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