第3話 湯けむり三姉妹3

「前回、いつの間にか私そっちのけで、

 何やら楽しい話題をされてたようで」


「あれ、香穂なんか怒ってる?」


「あ、香穂ちゃ~ん、おかえり~」


「もう立ち直ったの?」


「二人ともひどいじゃないですかぁ。

 私のことも仲間に入れてくださいよぉ。

 三人揃って〝湯けむり美人三姉妹〟なんですからね!」


「なんか殺人事件が起きそうなネーミングね」


「美人ってとこには突っ込まないんだ」


「何を話してたんですかぁ?」


「香穂。

 どうやら、志麻姉には、私たち姉妹にも言えない悩みがあるらしいんだ」


「え?! 本当ですか?

 一体何があったんですか??

 話してくださいよぉ~!」


「そうだ、そうだ!

 水臭いぞ!」


「硫黄の匂いじゃないかしら。

 ほら、ここって一応、源泉かけ流しらしいし」


「そういう話じゃなーいっ!」


「そうですよぉ!

 さっきのことなら温泉のお湯で綺麗に流してあげますからぁ。

 さあ、早く話してください~!」


「香穂ちゃん、うまいこと言うわね~」


「どうしてですか?

 私たち血が繋がってないからですか??

 義理の姉妹だから悩みすら話せないと言うんですか??

 私たちの関係は、水風呂のように冷めてしまっているというんですかぁ?!」


「香穂、ちょっと落ち着け。

 他のおばさん……じゃない、お客さんたちが引いてるぞ」


「いや、別にそういうわけじゃないんだけどさぁ……

 まあ、悩みなんて、誰だって持ってるものじゃない?

 あっちゃんや、香穂ちゃんだって、悩みの一つや二つくらい、あるでしょう~?」


「ないな」「ないですぅ」


「えー嘘だあ。

 話したくないだけでしょう~」


「………………」「………………」


「ほらぁ」


「先に志麻姉が言い出したんだから、志麻姉から先に話すべきだ」


「そうですよぉ。

 長女なんですから、一番は譲りますぅ」


「えー、こういう時だけ、長女を持ち出すんだからな~」


「いいから、吐けっ!

 じゃないと、いい加減お客さんが退屈し始めてるぞ!」


「そうですよぉ!

 それに、1000文字しかお喋りできないんですからね。

 早く言って楽になりましょっ」


「うー……本当に誰にも言わないでくれる~?」


「たぶん」「もちろんですよぉ」


「いや、そこは〝うん〟って言おうよ」


「うん」


「実は私………」


「実は?」「私?」


「妊娠……」


「え?!」「まさか?!」


「……した時に太った体重がまだ元に戻らないの~! (涙)

 ねぇーなんで~?

 産んだら元の体重に戻るものなんじゃないの~?

 ね、ねっ?」


「…………ぶくぶくぶく」


「ああ、敦美あつみ姉さんがのぼせて溺れているぅ!」


「すっごい説明口調ありがとう~」


「敦美姉さん、しっかり!

 こんな状況で香穂を一人にして逝かないでぇ~(涙)」


「いや、まずは助けてあげようよ」

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