異世界100円ショップ‼~ただの店員の俺が魔物娘を救って、自分の“城”を成すまでの話。

松葉たけのこ

プロローグ 「これは正しき殺戮なのだよ」


 大戦であった。

 つまりは、大勢が死んだ。


 人間も、魔物も――今は変わりない。

 今は、全て等しく、肉塊である。


 殺して、殺して、最期には殺された。

 彼らは、栄華を誇る名家の騎士だった。

その最期が、こんな沼地に沈む骸とは。



「非情とすら言えない、この無常め」



 そして、彼女の最期もそうなる。

 最期は、沼の水を赤くするだけの塊だ。


 彼女は小さな身体に、似合わぬ白い鎧を纏って、銀の紋章がでかでかと刺繍された赤マントを羽織る赤髪の少女。

 左側面の頭にだけ角の生えた、“一角の魔人ハーフ・ディアブロ”。


 その名前は、クリュテ・エル・ミツォタキス。

 魔王軍大将の娘にして、13番小隊の副隊長。

輝かしい肩書きも、戦場では意味がない。


 この墓場では――意味がない。



「囲まれましたぞ、クリュテ様」


「言われなくても、分かってるって」



 泥の付いた白髪を拭い、しゃがれ声を上げる男。


 置いた歴戦の魔人、シメオン。

 彼の言葉にクリュテはうんざりと頷く。



「ったく。戦況は変わってねえんだからよ」



 私達を率いていた魔王軍大元帥サバナ。

 彼女が討ち取られた事で、魔王軍の統率は崩壊。


 私達の属していた大隊は壊滅。

 頼りの小隊長さまは、自慢の俊足で逃げ出した。


 私たちは置いていかれたのだ。


 そんな私たちを見下ろして、見下して――

 一人の騎士が声を張る。



「逃げ道はないぞ――魔王軍の残党ども」



 私たち、12人の小隊は囲まれている。

 草原の丘にいる私たちを、輪のような陣形で騎士たちが囲んでいた。


 ラデュード王国軍の騎士たち。

 いずれも屈強な猛者たちで、何より魔法耐性つきの全身鎧フルアーマーを身に纏っている。

圧倒的な強者たち。


 その騎士の一人、蒼天谷のヴィクトル。

 彼は、台詞を続ける。

声高らかに、口上を読み上げる。



「貴様らの悪は、今ここに断たれる」



 あまりにも鼻をつく、臭い台詞だ。

 クリュテは、鼻を鳴らす。



「なら、貴様らの悪はどうなる?」


「何だと……?」


「女神の名の下で行った悪は、誰が裁くんだ」



 聖騎士ヴィクトルは何も答えない。

 慣れた手付きで背中の剣を抜く。

その口の端を醜く歪ませて。



「女神は正義そのもの。我らは常に正しい」



 クリュテは悟る。

 その微笑こそが答えだ。



「これは正しき殺戮なのだよ」



 滲み出た、鬼が如き愉悦。

 そんな笑みだった。



「そうか。そんな物は無かったか」



 シメオンが静かにそう言う。

 クリュテに代わり、怒りを吐く。


 そのシメオンに、ヴィクトルは冷たく返す。



「ふっ……悪魔の癖にのか?」


「悪魔……――違うな。わしらは魔人だ」


「同じ事だ」



 それから、ヴィクトルは自らの剣を掲げ、叫ぶ。



「者ども、かかれ――!」



 その時だ。

 突如、光の塊が現れた。

人間と魔人の頭上に、現れた。


 あまりにも巨大な、光の塊が。



「何だ……?」



 その時、光の中に、彼らは見た。

 白く聳え立つ、細長い、巨大な棺。

それを思わせる、巨岩のような建造物を見た。



「飲み込まれる……――」


「クリュテ様!」


「卑怯な悪魔どもめ、新たな魔法を使いやがったか……逃がすな!」



 次の瞬間、敵も味方も、光の中に包まれた。

 突如現れた、白い箱の中に――



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異世界100円ショップ‼~ただの店員の俺が魔物娘を救って、自分の“城”を成すまでの話。 松葉たけのこ @milli1984

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