第27話 私だって許さないんだからっ!

『なんじゃ、この黄金に輝く小娘は……そこをどかぬか!』


「この人達は、私が守ります!」


其方そち如きがわらわに勝てるとでも?』


「やって見ないと分からないでしょう」


『ほざけ小娘!』


 霊鬼の鋭い爪がかぐや姫に襲いかかる。


「キャッ!」


所詮しょせんは小娘……口先だけのようじゃのー』


「ま……まだです!」


 かぐや姫は霊鬼の顔をめがけ拳を振り上げる。


「パシッ、バシッ、バシーンッ、バゴーーーンッ!」


 かぐや姫の最初の攻撃は霊鬼の半透明な体に受け流された。


 が、二発目以降の残像の攻撃は霊鬼に次々に当たり、当たるたびにその威力を増していった。


 四発目の攻撃が当たる時には、霊鬼の首はのけぞっていた。


「な、何じゃ、其方そちは? なぜわらわに攻撃を当てられる⁉」


 霊鬼はうろたえていた。




 イチゴと桃太郎はかぐや姫と霊鬼の戦いを食い入るように見ている


「おっかぁの攻撃は当たらないのに、どうしてかぐや様の攻撃は当たるんだ?」


「兄さん、それは違います。 かぐや様の最初の攻撃は霊鬼の体には当たっていませんでした」


「どういうことだ? 霊鬼の頭は確かに攻撃を受けていたぞ」


「それは二発目以降の攻撃です。 黄金に輝く残像の攻撃なら霊鬼に攻撃が当たるのかもしれません」


「ますます、わからん。 なんで残像の攻撃なら当たるんだ?」


「これはボクの推測でしかないんですが、残像の攻撃は肉体の攻撃とはまた別の攻撃だからかもしれません」


「……んーん。よくわからんが、残像で攻撃ができるならかぐや様にも勝機はあるな」


「そうですね」




 霊鬼は首を元の位置に戻すと、かぐや姫に襲いかかった。


『人間如きがっ! 調子に乗るなっ!』


 かぐや姫の顔に霊鬼の爪が突き刺さろうとしていた。


「調子になんてなってない! 私は真剣です!」


 かぐや姫に襲いくる鋭い爪を、上半身を前屈みに倒し避けた。


 そのまま霊鬼の懐に入ると、渾身の右フックを霊鬼の腹部へおみまいした。


「パシッ、バシッ、バシーンッ、バゴーーーンッ!」


 強烈な残像の四発目が霊鬼の腹部に直撃する。


「ギャーーーッ!」


 あまりの激痛に霊鬼は腹部を押さえのたうち回り、口からは青白い唾液をバラまいていた。


「許さん!許さんぞ!」


 起き上がった霊鬼は怒り狂い、目は充血し顔は般若のようだった。


 髪を振乱し両腕を振り回す。 そこには全く理性の欠片もない化け物となっていた。


「私だって許さないんだからっ!」


 かぐや姫は強烈な前蹴りを繰り出した。


 その蹴りは霊鬼の攻撃をくぐり、霊鬼の腹部へ再度攻撃をした。


「グギャーーーーーーッ!!」


 かぐや姫の四番目の前蹴りは霊鬼の腹部を突き破る。


 腹に大きな穴が空いた霊鬼は苦痛と怒りに満ちた顔を覗かせた。


 そして次の瞬間、全てが無に帰ったかのように弾け飛んで、跡形もなく弾け飛び消滅した。


 かぐや姫は勝利を確信した途端、体の力が抜けて、ガクッと膝から座り込んだ。


「かぐやっ!かぐや良くやったっ!」


 竹取の翁が必死な形相で駆け寄ると、かぐや姫を大号泣して抱きしめた。


「と、父さん……そんなに強くされたら痛いよ。 ……ハハハ……なんか自分でも信じられない……ケンカもしたことがない私が……あんな化け物を倒しちゃったなんて……」


 イチゴと桃太郎がかぐや姫の元へ駆け寄る。


「かぐや様、ホントにスゲーなっ! あの霊鬼を倒しちゃうんだからな!」


「本当にスゴイです!」


 褒めてくれたイチゴと桃太郎にかぐや姫は優しく微笑みかける。


「みんな無事で良かった……。 そうだ!お婆さんは大丈夫? 背中に大怪我してたみたいだから……お父さん、お婆さんをどこか安静にできる場所に運んであげて」


「そ、そうだな。 あのご婦人は我々を助けようとしてくれた方だからな」


「……あれ、なんかホッとしたらすごい眠気が……ゴメン、少し寝ちゃうね……」


 そう言うとかぐや姫はその場で横になり眠ってしまった。


 竹取の翁は眠ったかぐや姫の頭を優しく撫でる


「良くやったな、かぐや」


 そんな中、お爺さんは呆然と一人で立っていた。


「……わし……何もできんかった……」


 そういうとショボーンとしていた。

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