第二章 竹取の都編

第17話 竹取の都

「おっとぅおっかぁ、あそこに美味そうな食い物があるぞ!」


「こっちには可愛い着物が売ってあるよー。 母ちゃんあれ買ってー」


「兄さん姉さん、そんなにはしゃいだら迷子になりますよ!」


「フフフ、まるで桃太郎が一番上のお兄さんみたいじゃの」


 お爺さん達は『竹取の都』という都に来ていた。


 小さい都であったが人々は活気に触れ幸福感で笑顔に満ちていた。


 都の露店は日本中から集められた食べ物や衣服・生活用品が所狭しと並んでいる。


 ある一角では曲芸を生業にするサーカスが人々を興奮の渦に巻き込む。


 イチゴ達は見たことのない大勢の人の波に酔いながらも初めても都に興奮が収まらない。


 こうしている間にもイチゴとニコは次から次へと露店をハシゴしその若くありふれたエネルギーを放出している。


 桃太郎はある露店を見つけると目を輝かせ走り出す。


 その店の書店では、桃太郎が読んだことのない本で溢れていた。


 ―――そのとき「ホワンホワン」と鐘の音が鳴り響くと、大通りの人の波が二つに分かれ一本の道ができた。


 都の入口付近にはたくさんの人影が集まりその先頭には十二単じゅうにひとえを纏った女性が多くの家来を引き連れ群衆が作った道をゆっくりとまるで一つの芸術作品のように美しく一歩またまた一歩と闊歩かっぽしていた。


 女性の姿は美しいの一言で表すことができないほど、その美貌はこの世のものとは思えない。


 美しさの中に可愛らしいところもあり、大人びてはいるがその年は十六歳だった。


 その美しい女性が男性達に目を配ると求婚を願う野太い声に溢れ、女性に目線を向けると憧れの悲鳴がする。


 その美しい女性はまさに美とカリスマの権現ごんげのようだった。


 お爺さんとイチゴと桃太郎はその美しい女性を見た途端、心を奪われたかのように目がハートになり放心状態になっていた。


 ニコはその美しい女性に容姿に憧れ、うっとりと頬を赤らめ暑い眼差しで見つめている


 お婆さんもうっとりとしていたが、そこにはわずかな嫉妬心があった。


 美しい女性と家来たちは都の中央に向かい、そして消えていった。


 「オ、オレ、あんな美人初めて見た! 都はさすがにすげーな」


 「うんうん。 すごく良いよね。 ウチもあんな美人になりたいな」


 「ボクにはもう普通の人間とは思えないほど、あのお方の美しさは天女てんにょのようでした」


 三人はすでにメロメロの状態で、あの美しい女性の虜になっていた。




* * * * * * * 

 



「私は男だぁーーーッ!」


 というと豪快に十二単を投げ捨てた。


 そこにいたのは上半身裸の美しい女性だった。


 いや、その人物には女性特有の胸の膨らみはなく、細身ではあるが引き締まった胸板があった。


「父さん、いつまで私はこうやって女の格好をすればいいの? 私はもうこんな生活が嫌なの!」


「まーまぁ。 そうなげくな『かぐや』、この家もこの都もある意味お前のおかげでここまで発展した。 もうお前なしではこの都は成り立たんのだよ」


「そんな理屈は十分にわかってるよ。 でも、私だって普通の男の子として生活がしたいの」


「―――そうだ。今日の午後は休みにしよう。 たまには都の露店でも散策して気分転換をしたらどうだ? そのときはお前がかぐやだということがばれんように変装するんだぞ。 かぐや姫が露店にいるとわかったら大騒ぎになるからな」


「そんなのわかってるよ! 私だって騒ぎはゴメンよ‼️」


 そう言い終えるとかぐや姫は「バタン」とドアを勢いよく締め部屋を出た。


「はー、昔は素直でわがままを言わん子だったんだがなぁ」


「お父さん、かぐやちゃんは今までが良い子過ぎたんですよ。 逆に私は少しホッとしてますよ。 あの子が少しは自分の気持を表に出すことができて」


 かぐや姫の母親はそういうとがぐや姫の父親をなだめた。


「そうだな……女の格好で暮らすのも、最初はわしらのわがままから始まったようなものだからな……」


「その通りです。 子供のいない私達のもとへ神様がくださった奇跡ですよ。 そうでなければ竹の中から赤ん坊が産まれるはずがありません」


「最初はそうだったな。 あのときは腰を抜かして驚いたよ。 黄金に光る竹を切ってみると中から玉のように可愛い赤ん坊がいたんだからな」


「もともと女の子が欲しかった私達は、あまりにも可愛いかぐやちゃんを女の子として育ててしまいました。 かぐやちゃんも自分が本当の女だと思って、いままで生活していましたからね。 実は男だとわかったときにはショックだったでしょう」


「……そうだな。 しかしこの家がここまで発展したのもかぐやのカリスマ的な美貌があったおかげだ。 かぐやの美しさは日本中に広がり、かぐやを嫁に迎い入れたい高貴な者たちの貢ぎ物で、我が家は大きくなったわけだからな」


「それだけではありませんよ。 お父さんの手腕があったおかげで、我が家を含め小さかった集落もこんなにも栄えたんですからね。 お父さんでなければかぐやちゃんを『かぐや姫』という偶像アイドルにして、華やかな舞台ライブを演出することはできなかったと思いますよ。 かぐやちゃんが偶像アイドルとして活動してくてたおかげで、かぐや姫の小物グッズが売れ、舞台のチケットも飛ぶように売れたんですからね」


「そうだな。 この『竹取の都』はかぐや姫を中心とした経済圏になっている。 ……そうなるとやはりかぐやを男に戻すことはできん……」


 肩を撫で下ろすかぐや姫の父親を包むように母親が両手でかかえる。


「みんなで良い答えを探しましょう。 ね、お父さん」


 かぐや姫の父親は軽くうなずいた。

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