第15話 鬼の会議と尻子玉

 薄暗い巨大な部屋に大きな三つの人影があった。


 その三人のシルエットには頭部に鋭い突起物があり三人は鬼だと予想される。


 それぞれ角は一本、二本、三本とそれぞれ三人は他とは異なる角の本数が生えていた。


「一寸法師って生きていたみたいよ、ウケる~」


 と言ったのは肌がピンクで一本角の女の鬼だった。


「生きていたとしても、もう老人のハズだ我らの脅威にはならんだろう」


 全身が黒い三本角で大柄の鬼が冷静沈着に語る。


「それがね〜。昔みたいに若返ってたみたいなのよ〜。 しかも、昔より強くなってるみたいなの〜。 マジウケるんですけど~」


 と一本角の女がクスクスと笑いながら喋る。 


「ゴクゴクゴクッ、ぷファー―」


 二本角の青鬼が大量の酒を浴びるように飲む。


「昔より強いだぁー! 面白れーじゃねいか! 俺様にその一寸法師を狩らせろ‼️」


 その言葉をさえぎるように一本角の女の鬼が口をだす。


「ちょっと待ってよぉ〜、酒呑しゅてんくん〜。 最初に一寸法師を見つけたのは私の部下なんだからね〜。 だから最初は私の部隊が一寸法師の討伐をするの~」


「しゃーねーな、わかったよ。 好きにしろ!」


 そういうと二本角の青鬼はふてくされてまた浴びるように酒を飲んだ。


 三本角の黒い鬼は手を顎に当て考え込む。


「一寸法師の件といい、最近人間側で起きている異変、何か関連性があるかもしれんな」




* * * * * * * 




 大八車の持ち手を掴めないブンブクは太い縄を口に咥えた。


 イチゴと桃太郎は太い縄の先端を大八車の持ち手に結び、その結んだ縄をブンブクは咥えてピョンピョンと跳ね大八車を引っ張った。


 大八車の上には横になって寝ているお爺さんと、見守るように座っているお婆さんの姿があった。


 イチゴ達三人は大八車を後ろから押している。


 ふもとの村に着くとけったいな声が聞こえだした。


「河童様!河童様!オイラを河童にしてけろ!」


 一人で騒いでいたのは村に住む変わり者の弥七だった。


 その弥七がお爺さん等を見つけると猛ダッシュで近づいて来た。


「お前ら河童様を見なかったか!?」


 そう言ってきた弥七にイチゴが言い放つ。


「河童がこんなとこにおるもんか! 弥七は相変わらず馬鹿だな!」


 すると弥七はプンプンと怒り出した


「イチゴ、貴様はガキのくせに生意気だぞ! お前の尻子玉しりこだまを取っちまうぞ!」


 と言い弥七はイチゴの尻に顔をうずめた。


「お、おい、止めろ! この変態野郎!」


 弥七はクンクンとイチゴの尻の匂いを嗅ぐ。


 それを見ていたニコは両手で顔を覆い赤面し、桃太郎は大きな口を開けて呆然としていた。


 お婆さんは「ヤレヤレ」という素振りで呆れていた。


「臭えーっ、臭えーっ、臭えー尻だ! こりゃぁ、上物の尻子玉が取れんぞ!!」


 とイチゴの尻に顔を埋めた弥七は喜んでいた。


 イチゴは涙目になりながら必死に抵抗する。


「や、止めろーっ!止めろー!弥七ぃーっ!!」


 変な状況にも慣れてきたニコと桃太郎は徐々にイチゴと弥七の馬鹿げたやり取りを見て大笑いを始めた。


「く・せ・え、く・せ・え、イチゴのお尻はく・せ・え!」


 ニコはおかしな歌を歌い始め、桃太郎は手拍子をして音頭おんどをとる。


 その愉快な音頭につられてブンブクも上下にジャンプをしてノリノリになっていた。


「ひえぇぇぇぇーーーっ!」


 突然弥七は悲鳴を上げその場に腰を抜かし倒れてしまった。


 弥七は震えながらブンブクを指差す。


「お、鬼だぁー、鬼が出たっ!」


 先程から大八車の前にいたブンブクに気付かず、今更ブンブクがいることに弥七は気付いたようだった。


 弥七は驚きのあまり失禁し、大声をあげてその場から逃げ出した。


「鬼が出た!鬼が出た!鬼が出たぞーっ!!」


 ポカーン口を開き呆気あっけにとられたニコがボソッと喋る。


「弥七さんは何がしたかったの?」


 お婆さんは頭をポリポリかきニコの問いに答えた。


「弥七の行動などいちいち気にしてたら日がくれんぞ。 アイツの行動は理解不能じゃ」


 その言葉に少し納得したニコはイチゴの方へと視線を向ける。


 イチゴは前かがみになり左手は尻に添え右手は股間に添え、顔を真っ赤にして目には涙を貯めて小刻みに震えていた。


「オ、オレの尻は…臭くなんか…ねえ」





 お爺さん達はふもとの村を後にし、西の方へと旅立った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る