第14話 旅に出る
ブンブクはお爺さんお婆さん、イチゴと桃太郎を頭に乗せて家に向かった。
家に帰る途中お爺さんは先程の戦闘で力を使いすぎたのかグッタリと眠っている。
家に着くとニコは元気を取り戻し、ブンブクの頭の上のお爺さん達を下ろし布団に寝かせた。
ブンブクは一本松での出来事をできるだけ詳しくニコに伝えた。
「う…うん…」
最初に目を覚ましたのは桃太郎だった。
「こ…ここは…家? おに…鬼は…どうなった…?」
混乱している桃太郎にニコが優しく語りかける。
「もう全部大丈夫だよ。 鬼は父ちゃんと母ちゃんが退治してくれたの」
「―――え、えーっ!?」
桃太郎は信じられない現実に変な声を出してしまった。
驚いている桃太郎に今までの経緯を説明する。
「最初はズバーンッ!って感じで母ちゃんがイチを助けて。 その後にシュシュシュ!って感じで父ちゃんが鬼を退治したの!!」
「―――姉さん、全然わかりません…」
ニコは困ったなぁという表情をしてブンブクに助けを求めた。
「ウチはこういうのを説明するのが下手だから、ブンちゃんがモモちゃんに説明してあげて。 ね、お願い」
ブンブクはしょうがないなという感じで、桃太郎に一部始終説明してあげた。
と同時にお婆さんとイチゴが目を覚ました。
ニコは現状がどうなっているかを二人に説明をしたが、やはり上手く伝えることができず結局二人ともブンブクが説明した。
「そうかぁ…。ジジィ、よー頑張ったのー」
と寝ているお爺さんの頭をお婆さんは優しく撫でた。
「ところで母ちゃん、父ちゃんは昔、すんごいお侍様だったんだねー」
それを聞きおばあさんの目は大きく見開いた。
ニコはお婆さんの態度を不思議そうな感じに思ったが話の続きをした。
「父ちゃんは昔、一寸法師っていうすごくてめちゃくちゃ強いお侍様だったんでしょう?」
お婆さんの顔は徐々に曇っていく…。
「それになんか鬼も妙な事を言ってたみたいだよ…確か一級なんちゃらって…一級って一番すごいって意味でしょ、やっぱり父ちゃんはすごいなぁー」
「一級」という単語を聞いたお婆さんは急激に顔面蒼白になった。
そしてブンブクの前に立ち、ブンブクを睨みつける。
「おい、ブンブク! おらは一寸法師の流れの話は聞いとらんぞ‼️」
「え⁉️話したポン。 ―――あれ、やっぱり話してなかったポン? うーん、どっちだかわからなくなったポン」
お婆さんは巨大なブンブクの下唇を鷲掴みにすると険しい顔でブンブクに問い詰める。
「話しておらん。さっさと話せ!」
お婆さんの剣幕にビビりブンブクは小刻みにブルブルと震えた。
「わ、わかったポン。 ちゃんと話すポン。だからその手を離してポン」
ブンブクはわずかに怯えながら一連の流れを詳しく説明した。
「はぁーーー」と深い溜め息をつくとお婆さんはその場であぐらをかいた。
「まずいの……。 三本足のカラスは
ニコはキョトンとしてお婆さんに問いかける。
「か、母ちゃん、どういうことなの…?」
お婆さんはニコを見つめて話す。
「昔ジジィは鬼どもといろいろあってな。 それでこうやって人気のないところで鬼に見つからん様に生活してたんだ。 それがまさか今頃になって鬼どもに見つかるとはな……」
そういったお婆さんはあぐらをかいた両膝を勢いよく両手で叩き気合を入れた。
「よし!家を出るぞ‼️ イチゴ、ニコ、桃太郎、ブンブク、旅に出る準備を今すぐしろ!」
突然のことに三人はあたふたし、イチゴが食い気味でお婆さんに問い詰める。
「おっかぁ、どうして家を出ないといけねんだ⁉️」
するとお婆さんはイチゴの目を見つめる。
「大群の鬼がジジィを討伐しに来るんだ。 今回は一体の鬼を運良く倒せたが、大群で来られた日にゃジジィとババァだけじゃ太刀打ちできん」
お婆さんは気持ちよく寝ているお爺さんを見つめる。
「人の気も知らんでこのバカタレは、自分が一寸法師だと余計なことを言いおって」
とお婆さんがお爺さんの頭を軽くペシッと叩いた。
「プスッ、プスプスプス」
叩かれたお爺さんの頭から「プスプス」と蒸気が溢れ出してきた。
それは徐々に全身に広がりお爺さんは蒸気に包まれてしまった。
「ジジィ、どうなっちまったんだ⁉️ ジジィ、生きとるか?大丈夫か?」
慌てふためくお婆さん達は、お爺さんを軽く揺するかただ見つめることしかできなかった。
次第に蒸気の濃度も薄くなり、お爺さんの姿を見ることができた。
そこには桃を食べる前のヨボヨボのお爺さんが横になって眠っていた。
お婆さんは直感でお爺さんの現状を把握した。
お婆さんも若返り後は極度の疲労感と身体の老いを感じた。
お爺さんの場合は鬼を倒す程に若返り、極限まで力を使い果たしたのだろう。
結果、お爺さんは極端に老いて桃を食べる前のヨボヨボの姿になってしまったのだろう。
「…わ、わしは……一寸法師じゃぞ……。 す、すんごく強いん…じゃぞ……。 姫は絶対……わしが…守る…ぞい……ムニャムニャ」
寝言を言い幸せそうな顔で寝ているお爺さんの禿げた頭をお婆さんが優しく撫でる。
「こんな一大事な状況だというに、ジジィは一人だけ幸せそうな顔をしおって……今度はおらがジジィを守る番かもなぁ」
お爺さんを大八車に寝かせ、お婆さん達は行くあてもない旅に出るのだった。
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