第38話:そして水島さんと……
「え、えっと……私の事が好きって……で、でも、なんで……?」
水島さんは顔を真っ赤にしながら俺にそう尋ねてきた。
「何で好きかなんて……そんなのは決まってるよ。水島さんと一緒にいると毎日すっごく楽しいんだ。それに水島さんはいつも俺に向かって素敵な笑顔を見してくれるしね。だから俺はそんな素敵な女の子の水島さんとこれからもずっと一緒にいたいって思ったんだ」
「え……あ……」
水島さんの目をしっかりと見つめながらそう答えていった。
「え、えっと……い、いや、でもさ……ほら、私って部活してるから髪の毛はショートヘアにしちゃってるし、身長もちょっと高いし、肉付きだってそんな良くないし……私ってあんまり女の子っぽくないでしょ? だ、だからその……私みたいな男っぽい女よりも……冴木君にはもっと可愛くて優しい女の子の方が良いんじゃないかな……」
「ううん、そんな事は絶対にないよ。というか水島さんは多分勘違いしてると思うんだけどさ……水島さんだってとても可愛らしくて素敵な女の子なんだからね?」
「え……?」
俺がそう言うと水島さんはちょっとビックリとしたような目つきで俺の事を見てきた。
「だって水島さんは凄く綺麗だし、服装だっていつもオシャレだよ。それに肌のお手入れとか料理の練習とかさ、見えない所で努力だっていっぱいしてるでしょ? だから水島さんは気づいてないかもしれないけど、水島さんは本当に可愛くて女子力のある素敵な女の子だよ」
「さ、冴木君……」
「それにさ、水島さんは転校してきたばかりの俺に対しても凄く優しくしてくれたよね? 俺はそれがすっごく嬉しかったんだ。本当にありがとう。水島さんのそんな明るくて優しい所に俺はいつも救われてたよ」
「そ、そっか……うん、冴木君にそんな風に言って貰えて私も……すごく嬉しいよ」
俺の話を聞いた水島さんは顔を赤くしながら俺にそう言ってきた。
「うん。だからさ、改めてもう一度言うけど……俺と付き合ってほしい。これまでは友達として一緒に過ごしてきたけど、これからは恋人としてずっと一緒に水島さんの隣を歩いていきたいんだ。……どうかな?」
「……うん……私も冴木君と一緒に……これからもずっと一緒にいたいよ。だからその……私で良ければ……よろしくお願いします……」
水島さんは顔を赤くしながらも優しく笑みを浮かべてそう言ってきてくれた。
なので俺もそんな水島さんの顔を見つめながら優しく笑みを浮かべていった。そして……。
「うん、ありがとう。水島さん……」
「え……あっ……う、うん……こちらこそ……」
―― ぎゅっ……
俺はそう言いながら水島さんの身体を優しくぎゅっと抱きしめていった。
最初は水島さんもビックリとした様子だったけど、でもすぐに水島さんも俺の背中に腕を回して身体をぎゅっとしていってくれた。
「……どうしよう。俺、今心臓がめっちゃドキドキしてるよ」
「え、冴木君が? あ、ほんとだ……ふふ、冴木君でもドキドキとしちゃう事があるんだね?」
俺達は身体を抱きしめ合っているので、当然だけどお互いに胸が押し当てられている状態だ。なので俺達の心臓の音はお互いに聞こえていた。
「そりゃあ俺だって緊張するよ。というか水島さんのような可愛い女の子とぎゅっとしてたらドキドキするのは当然の事だよ」
「……そっか。冴木君が私の事でそんなにドキドキとしてくれるんだね……うん、それなら良かったよ……」
そう言うと水島さんは嬉しそうに笑みを浮かべながら、さらに力を込めて俺の事をぎゅっと抱きしめていってくれた。そんな事をして貰えてとても嬉しかった。
「はは、でも水島さんも凄くドキドキって心臓の音が聞こえるよ?」
「う……だって男の子とこうやって抱き合うなんて初めての事なんだもん……だから私も凄く緊張しちゃってるんだよ……」
「あぁ、そうなんだね。水島さんの初めての経験を俺が貰えたのは凄く嬉しいな。それじゃあ、今日は俺にとっても水島さんにとっても特別な日だと思うからさ……だからこのままキスをしても……いいかな?」
「え……えっ!? い、いや、でも私……今は汗臭いと思うんだけど……」
「……だめかな?」
俺はそんな水島さんの言葉を遮ってそのまま目を直視していった。
「……ううん、いいよ。私も……冴木君とキスしたい」
「……そっか。うん、それじゃあ改めて……彼女になってくれてありがとう。大好きだよ、水島さん……ちゅっ……」
「うん、私こそ……彼女にしてくれてありがとう……私も大好きだよ、冴木君……ん、ちゅっ……」
―― ちゅっ……ちゅぅ……
そのまま俺達は目を閉じながら優しくキスをしていった。
「ちゅっ……ちゅぅ……」
「ちゅっ、ちゅっ……ん……ちゅっ……」
それからしばらくの間、俺達は熱く抱きしめ合いながらずっとキスを続けていった。
「……ん、ぷはっ」
「……ぷはぁ……はぁ、はぁ……これがキスなんだ……」
「もしかして初めてだったの?」
「う、うん……だから今までキスってどんな感じなのかずっと気になってたんだけど……ふふ、こんなにも気持ち良いものなんだね」
「そっか。それなら良かったよ。それに俺も凄く気持ち良かったよ、水島さん」
「そ、そっか。冴木君も私のキスで気持ち良くなってくれたんだね……そっかそっか……ふふ、それなら良かった……」
キスをし終えた俺達は抱きしめ合ったままそんな感想を言い合っていった。そしてそれからすぐに俺は水島さんの耳元に近づいてこんな事を囁いていった。
「ねぇ、いつもこの後はすぐに解散してるけどさ……でも今日はまだ水島さんと一緒にいたいな……」
「え? う、うん、私も……まだ冴木君と一緒にいたいよ……」
俺がそう囁いていくと、水島さんは目をトロンとさせながら俺にそんな返事を返してきてくれた。
「そっか。それじゃあ、良かったら今から俺の家に来ない? 俺の家ってこの公園の近所だからさ。だからこの後も俺の家で一緒にノンビリと話していこうよ?」
「え……い、いいの? でもいきなり朝から冴木君の家にお邪魔しちゃったらご両親に迷惑じゃないかな?」
「いや、大丈夫だよ。両親は今日はどっちも仕事で外に出かけてるからさ」
「あ、そうなんだ。う、うん、わかったよ。それじゃあ是非とも冴木君の家にお邪魔したいな……あ、そうだ! それじゃあ今日は私が冴木君の朝ごはんを作ってあげるよ!」
「え? 本当に? はは、それは嬉しいな。水島さんのご飯は凄く美味しいから楽しみだよ」
「うん、まぁ朝だから本当に簡単な物しか作れないと思うけどね。あ、冴木君の家の料理器具とかは使わせて貰っても大丈夫かな?」
「うん、もちろん大丈夫だよ。よし、それじゃあ早速……俺の家にいこっか?」
「あ、う、うん……!」
―― ぎゅっ……
そう言って俺と水島さんは優しく手を繋ぎ合わせてから、俺の家に向かってゆっくりと歩き始めていった。
――――
・あとがき
次回がいよいよエピローグとなります。
最後まで楽しく読んで頂けたら幸いです。
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