第37話:水島さんに告白をする
数日後の土曜日。
「おはよう、冴木君!」
「あぁ、うん、おはよう、水島さん」
今日も俺達は早朝に押野公園に集まった。理由はいつも通り一緒にランニングをするためだ。でも……。
「って、あれ? どうしたのそのポーチ? なんだかいつもより大きくない?」
「え?」
俺は水島さんと出会ってすぐにそんな指摘をしていった。
いつも水島さんは小さなランニングポーチを身に着けていて、その中にはタオルとか小銭とかスマホとかそういう細々とした物を入れてるんだ。
でも今日の水島さんが身に付けているポーチはいつもよりも一回りだけ大きかった。
「あぁ、うん。ちょっとね。ふふ、まぁ気にしないで大丈夫だよ!」
「……?」
水島さんは笑いながら気にしないで大丈夫だと言ってきた。
まぁその様子からして重い物が入っているわけではなさそうなので、俺も気にする事はせずにいつも通りの感じで接していく事にした。
「うん、わかった。それじゃあ今日も一日頑張っていこうか」
「そうだね! 今日も一緒に頑張ってこうね!」
という事で俺達はいつも通り今日も楽しく朝のランニングを始めていった。
◇◇◇◇
それから一時間近くが経過した頃。
「はぁ、はぁ……ふぅ。うーん、今日も頑張って走ったなぁ……」
「お疲れ様、冴木君!」
「うん、お疲れ様。いやそれにしても流石水島さんだね。俺と違って息が全然切れてないのが本当に凄いよ」
「あはは、そりゃあ私はバスケ部でいつも鍛えられてるからね! まぁでも流石に夏場は暑いからインナーの中は汗でビッショリだよー。って事でちょっと休憩しよっか?」
「うん、そうだね。それじゃあいつも通りあっちの芝生で休憩しようよ」
「うん、わかった!」
という事でランニングをやり終えた俺達は公園の芝生の方に向かって歩き、そこにペタリと座り込んで休憩を始めていった。
「それじゃあ改めて今日も一日お疲れ様でした。ふふ、それにしても冴木君はここ最近で体力がかなり付いてきたよね」
「え? そうかな?」
「うんうん、そうだよ! だって最初の頃は20~30分くらい走っただけで息切れしてたのにさ、今は一時間以上もランニングが出来るようになってるでしょ? これは本当に物凄い成長だよ!」
水島さんはそう言って笑みを浮かべながら俺の事を褒めていってくれた。
「あー、確かにそう言われてみれば……って、あはは、そんな昔の俺の事を覚えててくれたんだ? それはちょっと嬉しいな」
「ふふ、そりゃあ今までずっと一緒にランニングしてきた最高の友達の事だもん! そんなのちゃんと覚えてるに決まってるでしょー! ……って、あ、そうだ! それじゃあそんな毎回頑張っている冴木君にさ……実はプレゼントがあるんだ!」
「え? プレゼント?」
「うん! それじゃあ、えぇっと……はい、これ!」
そう言うと水島さんはランニングバッグの中から綺麗に包装された包みを取り出してきた。そしてそれをそのまま俺に手渡してきてくれた。
「え? これを俺に?」
「うん、そうそう! ちょっと遅くなったけど……これが私からの誕生日プレゼントだよ! 改めて誕生日おめでとう、冴木君!」
「誕生日プレゼント? いや、でもさ、水島さんからの誕生日プレゼントは一緒に水族館に行きたいっていうお願いに使ったよ?」
「うん、まぁ確かにそうだったけどさ、でもあの時は全部冴木君が私の事をエスコートしてくれたじゃない? それに最後にペンギンのぬいぐるみもプレゼントしてくれたでしょ? だからそのお礼も兼ねてさ……冴木君に改めてちゃんと誕生日プレゼントをあげようって思ってね!」
水島さんは満面の笑みを浮かべながら俺にそう言ってきてくれた。
「そっか。それは嬉しいよ。ありがとう水島さん! あ、それじゃあ早速中身を開けて見てもいいかな?」
「うん、どうぞどうぞ!」
「うん、それじゃあ早速……って、わぁっ!」
俺は水島さんに感謝の言葉を送りながら早速プレゼントの包装を開けてみた。
するとそのプレゼントの中身はスポーツタオルだった。とても柔らかい素材で出来ていて汗を沢山吸収してくれそうなタオルだった。
「これってスポーツタオルだよね? これを俺にくれるの?」
「うん、そうそう! 私が部活の時にいつも愛用しているスポーツメーカーのタオルなんだ! ほら、冴木君も夏休みになったら毎回一緒にランニングをしてくれるって言ってくれたしさ、もしかしたらこういう実用的な物が嬉しいかなって思って買ってきたんだ」
「あぁ、なるほど。俺の事を考えてスポーツタオルにしてくれたんだね。うん、これは凄く嬉しいよ! 本当にありがとう、水島さん!」
「うん、どういたしまして。ふふ、でもそんなに喜んでくれるのなら買ってきた甲斐があったよ。それじゃあ良かったらその……大切にしてくれたら嬉しいな」
「うん、もちろんだよ。ありがとう。それじゃあ水島さんと一緒にランニングをする時には必ず愛用するね!」
水島さんははにかんだ笑みを浮かべながら俺にそう言ってきてくれたので、俺も満面の笑みを浮かべながら水島さんにそう返事を返していった。
(うん、それにしてもやっぱり……水島さんってとても優しくて素敵な女の子なんだよな)
俺は水島さんに貰った誕生日プレゼントのスポーツタオルを見つめながら改めてそんな事を思っていった。
そして俺はこんな素敵な女の子を誰にも渡したくないと本気で思っていった。だから俺は……。
「あ、そうだ。それじゃあさ、俺からも水島さんに伝えたい事があるんだけど、ちょっと良いかな?」
「え? うん、もちろんいいよ! 何かな?」
「うん、それじゃあさ……俺、水島さんの事が好きだ」
「……え?」
俺は水島さんの目をしっかりと見つめながら……水島さんに告白をしていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます