第34話:友達と一緒に歩きながら帰っていく(桜視点)

 それから数日後の放課後。


「何だか最近冴木君とすっごく仲良いね?」

「え、そ、そうかな?」


 今日は部活が無い日だったので、私は同じクラスの友達の折笠美月おりかさみつきと一緒に帰っていた。そして帰る途中に美月は私に向かってそんな事を言ってきた。


「うん、だって休み時間とかに二人が楽しそうに話してるのをよく見かけたりするもん。でも転校してきたばかりの冴木君ともうそんなに仲良くなってるなんて、何か仲良くなるきっかけとかあったりしたの?」

「え? うーん、いや、元々冴木君って気さくで話しやすいタイプだから、気が付いたらいつの間にか凄く仲良くなってたって感じだなぁ。あ、あとはその……最近は冴木君と一緒にお昼を食べたりとかもしてるから、そういうのもあって凄く仲良くなれたのかもしれないね」


 今言ったように私はここ最近は毎日冴木君と一緒にお昼を食べていた。それだけではなく、冴木君の食べるお弁当も私が作ってあげていた。


 いや、まぁ最初は私のお弁当を作るついでに冴木君のお弁当を一緒に作っていってたんだけど、でも今は冴木君のためにお弁当を作るようになっていた。


 だって冴木君ってさ……私の作るお弁当をいつも美味しそうな顔をしながら食べてくれるんだもん。それが本当に嬉しくて私もここ最近は毎日冴木と一緒に食べるお昼休みをとても楽しみにしていた。


「へぇ、そうなんだ! でも冴木君と一緒にお昼ご飯を食べるなんてすっごく羨ましいなー。私も冴木君みたいなカッコ良い男の子と仲良く一緒にお昼ご飯とか食べてみたいよ」


 という事で私がそう言うと美月はとても羨ましそうな顔をしながらそんな返事を返してきた。


「ふふ、確かに冴木君はすっごくカッコ良いもんね。あっ……ま、まぁでも、冴木君って凄く気さくで優しい男の子だから……だから美月も冴木君に一緒にご飯を食べたいって言ったら……きっと冴木君も一緒に食べてくれるんじゃないかな?」


 私はちょっとだけ声のトーンを落としながら美月にそう言っていった。


 だって私と冴木君は別に付き合ってるわけじゃないしね……私達はただの仲の良い友達というだけの理由で一緒にお昼を食べてるだけなんだ……。


 それに美月は凄く可愛いし、冴木君も男の子だから……だからきっと可愛い女の子にお昼を誘われたら、冴木君だってそっちの女の子とご飯を食べるに決まってるよね……。


「んー? いやまぁそりゃあ冴木君が優しくて話しかけやすいのはわかるけど……ふふ、でも流石に冴木君をお昼に誘うのは遠慮しておくよー」

「え? そ、そうなの? な、何で?」

「ふふ、だって多分だけどさ……多分だけど冴木君って桜の事が好きなんだと思うよ?」

「え……って、え、えぇえええっ!? い、いや、何でそう思うの!?」


 唐突に美月は私に向かってそんな事を言ってきた。私はそんな事は絶対にないと思ったので慌てて大きな声を出していってしまった。


「んー、だって冴木君っていつも桜と話してる時はすっごく楽しそうな表情をしてるんだよ? 他の子達と話す時よりも一段と楽しそうっていうかさ。だから何となくだけど冴木君は桜の事が好きなんじゃないかなーって、私はそう睨んでいるね!」

「え……って、い、いやいや! それは絶対に無いって! だって私そんな可愛くもないしガサツで図体もデカイい……だ、だから冴木君みたいなカッコ良い子が私の事を好きになるなんて事は絶対にないって!」


 私はそんな美月の推理に真っ向から否定していった。だって冴木君は凄くカッコ良くて優しくて素敵な男の子なんだよ?


 それに対して私は図体がデカくて結構ガサツなタイプの女の子だし、部活をばかりで今まで女子力とかもそんなに磨けてない。髪の毛だって部活のためにちょっと短くしちゃってるし。


 だからそんな私の事を冴木君が好きになってくれるわけがない……そう思って私は美月のその推理を真っ向から否定していった。


 でも美月は笑いながら私に向かってこう言ってきた。


「んー、そんな事はないと思うけどなぁ。私の予想では冴木君は桜の事が好きだと思うけどね。あ、それにさ……ふふ、実は桜だって本当は冴木君の事が気になってるんでしょ?」

「え……えっ!? な、なんでわかるの!?」

「あはは、そんなのわかるよー! だって桜が冴木君と話してる時ってさ、冴木君と同じように桜もすごく楽しそうな顔してるもん! だから私はお互いにお互いの事を好き合ってるんじゃないかなって思ってるよ」

「え……あ……う」


 美月にそう指摘されて私は顔が一気に熱くなってしまった。どうやら美月からは私の冴木君に対する好意がバレバレだったようだ。それは流石に恥ずかしいよ……。


「ふふ、でも桜って今は誰とも付き合ってないんでしょ? それだったら思い切って冴木君に告白とかしちゃえば良いじゃん! きっと冴木君なら受け入れてくれるはずだよ!」

「え……えぇぇぇっ!? い、いやそれだけは絶対に無理だよ! だ、だってその……冴木君が本当に私の事を好きかどうかなんてわからないし……そ、それに……告白して断られでもしたら流石にちょっとしんどいし……」


 美月は自信満々にそう言ってくれてるけど、でも冴木君が私の事を好きでいてくれてるなんて保証はどこにもないしね……。


 それにそういう事を期待しても、実は全然違うって結果になったら凄く悲しいから……だから私には告白する勇気なんて全く出ないんだ……。


「んー、私はそんな事気にしないでも大丈夫だと思うけど……まぁでもそればっかりは勇気がいる事だししょうがないよね。うん、わかった! あ、でも私は二人の事を応援してるからね! だからいつでも何かあったら私を頼ってね」

「う……うん、わかった。あ、それじゃあその、せっかくだからちょっと美月に相談したい事があるんだけど……」

「うん、良いよ! 何でも相談してよ!」

「う、うん。それじゃあ……えっと、実は冴木君にプレゼントを渡そうと思っているんだけど……」

「へぇ、そうなんだ! うんうん、それで?」

「う、うん、それでね……」


 という事でその後も私達はそんな女子トークを繰り広げながら駅前へと向かって歩いて行った。

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