第33話:水島さんに初めてお弁当を作ってもらう

 次の日のお昼休み。


 昨日と同じく今日も俺は水島さんと一緒に女子バスケ部の部室に訪れていた。もちろん部室の中は俺達二人しかいなかった。


「それじゃあ……はいこれ!」

「うん、ありがとう水島さん!」


 俺達は部室の机に隣り合わせで座っていくと、そのまま水島さんは俺にお弁当を手渡してきてくれた。結構大きめのお弁当箱だった。中身のオカズは何が入ってるのかな?


「それじゃあお弁当の蓋を開けてみても良いかな?」

「うん、いいよいいよ! あ、まぁでも本当に普通のお弁当だからあんまり期待しないでね?」

「いやいや、水島さんの作る料理は美味しいから期待しちゃうよ。それじゃあ早速……って、おぉっ!」


 早速お弁当の蓋をぱかっと開けていくと、俺は一瞬にして俺は目を輝かせていった。


 今日のお弁当のオカズはハンバーグに卵焼き、根菜の煮物にプチサラダという構成で非常に彩り鮮やかなお弁当だった。一目見ただけでもかなり美味しそうだなと思った。


 という事でそんな美味しそうなお弁当を見て俺は感嘆の声を漏らしていくと、隣に座っていた水島さんはとても恥ずかしそうにしながらこう言ってきた。


「え、えっと……いやそんなに驚く程のお弁当じゃないからね? ほ、本当に普通のお弁当なんだから……あ、あんまり期待しちゃ駄目だよ?」

「いやいや、そんな事ないって! もう見た目だけでも十分に美味しそうだよ! それじゃあ早速食べてみてもいいかな?」

「う、うん、もちろんいいよ」

「うん、わかった。それじゃあ頂きます!」


 という事で俺はしっかりと手を合わせて頂きますと言ってから、まずはオカズのハンバーグを一口サイズにして食べていってみた。すると……。


「う、うまっ!? いや、マジでめっちゃ美味しいよ!!」

「え、ほ、本当に?」

「うん、本当本当! このハンバーグかなりジューシーで食べ応えもあって凄く美味しいよ! それに味付けもしっかりとしていて、これはご飯がかなり進んじゃうね!」

「そ、そっか。ふふ、そっか……冴木君の舌に合ったようで……うん、本当に良かったよ」


 俺がそんな感想を伝えていくと、水島さんはとても嬉しそうな笑みを溢しながらそう呟いてきた。


 でも俺にはとある懸念があったので、俺は少しだけ落ち込んだ表情を浮かべながらこんな事を呟いていった。


「うーん、でもこれはちょっとヤバイなぁ、これ絶対に箸が止まらなくなるヤツだよ……。せっかく水島さんに作って貰ったお弁当なのに、これじゃあすぐに食べ終わっちゃうかもだなぁ……」

「ふふ、良いよ良いよ、そんな悲しそうな顔なんかしなくても。もし冴木君のお弁当の量で全然足らないようだったら、その時は私のお弁当もいっぱい分けてあげるから気軽に言ってね?」

「え? いいの?」

「うん、もちろんだよ。だって私の作ったご飯をお腹いっぱいになるまで食べてくれる方が、その……私も嬉しいからね」

「そっか。うん、それじゃあ水島さんの御言葉に甘えて沢山食べさせて貰うね! それじゃあ改めて頂きます!」

「うん。ふふ、いっぱい召し上がれ」


 という事で俺はそれからもひたすらと水島さんのお弁当を美味しく堪能していった。


◇◇◇◇


 それからたったの数分後。


「ご馳走さまでした!」

「ふふ、お粗末様でした」


 俺はたったの数分で水島さんから貰ったお弁当を全て平らげてしまった。


 しかもさらに水島さんのお弁当から根菜の煮物と卵焼きも追加で頂いてしまった。いやマジでそれほどまでに美味しいお弁当だったんだ。


「改めてもう一度言うけど本当に美味しかったよ! 俺、こんなにも美味しいお弁当を食べたのは生まれて初めてな気がするなぁ」

「ふふ、流石にそれは言い過ぎだよー。でも冴木君さぁ……最初から最後までずっと私のお弁当を美味しそうに食べてくれてたよね? あんなに美味しそうに食べてくれて私……すっごく嬉しかったよ」

「え? そ、そんなに俺の顔に出てたかな?」

「うんうん、すっごく嬉しそうに笑みを溢しながら幸せそうに食べてたよ。ふふ、さっきの冴木君の顔はちょっと可愛かったなー」

「う……そ、それはちょっと恥ずかしいな」


 どうやら俺が水島さんのお弁当を食べている様子をずっと水島さんに観察されていたようだ。


 それで俺は水島さんにそんな事を指摘されてちょっと恥ずかしくなったんだけど、でも水島さんはすぐに柔和な笑みを浮かべながらこう言ってきてくれた。


「ふふ、そんなに恥ずかしがらなくても良いよ。だって料理を作ってる方からしたら、冴木君みたいにずっと美味しそうに食べてくれるのはさ……本当にすっごく嬉しい事なんだからね」

「……そっか、まぁ、それなら良かったよ。うん、それじゃあ改めて何度も言うようだけど凄く美味しかったよ! この水島さんの作るご飯を毎日食べたいって思っちゃうくらいに美味しかったよ!」

「ふふ、そう言って貰えて私も凄く嬉しいよ。あ、それじゃあ……明日も冴木君に美味しいって思って貰えるようなお弁当を頑張って作るね!」

「うん、わかった! あ、そうだ。そういえば水島さんって得意料理とかはあったりするの?」

「あぁ、うん、もちろんあるよー! 私の得意な料理はね……」


 という事でこの後も、俺達は和気あいあいとしながら料理についての話で盛り上がっていった。

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