第32話:水島さんと一緒にお昼ご飯を食べる。
月曜日のお昼休み。
今日は初めて女子バスケ部の部室にお邪魔して水島さんと一緒に他愛無い話をしながらお昼を食べていっていた。
「へぇ、冴木君が元々住んでた所って海が近かったんだ? それじゃあ夏休みとかは海に行ったりする事も多かったの?」
「そうだね、夏は海に行く事は多かったかもね。友達で集まって海で泳いだりとか浜辺でバーベキューをしたりとかめっちゃ遊んだりしてたよ」
「それは楽しそうだね! 私は今まで海にはあんまり行った事がないから、冴木君みたいに友達と海で沢山遊んだりした経験があるのは羨ましいなー」
「あ、水島さんはあんまり海は行かないんだ? もしかして泳ぐのが苦手だったりするとか?」
「あー……いや、そういうわけじゃないんだけど……でもほら、私って女子的には身長はちょっと大きい方でしょ? それにほぼ毎日運動もしてるから全体的に筋肉がついててゴツイからさ……ちょっと水着とかは似合わないだろうなって思ってね……はぁ……」
水島さんはそう言いながらちょっとだけ暗い表情をしていった。
「そうかな? 俺は水島さんの水着姿とかめっちゃ見たいけどな。ほら、水島さんって確かに身長は高いかもだけど、スタイル凄く良いしさ」
「ほ、本当に? そうだったら嬉しいんだけど……」
「うんうん、本当だよ。あ、それじゃあ夏休みになったら一緒に海とか行かない? 関東にも海水浴場は沢山あるだろうし良かったら一緒にどうかな?」
「え? そ、それはその……冴木君と海に行くのは凄く楽しそうなんだけど……でもやっぱり水着になるのはまだちょっと恥ずかしいかもだよ……」
「そっか。うん、わかったよ。それじゃあ、もしも海に行きたいって思ったらいつでも俺に言ってね? その時は俺で良かったらいつでも一緒に行くからさ!」
「う、うん、その……わかった。ふふ、その時は絶対に冴木君を誘うね」
俺がそう言うと水島さんはちょっとだけ顔を赤くしながらも笑みを浮かべていってくれた。そしてその後はまた一緒にのんびりと昼ご飯を食べ進めていった。
でもそれからすぐに、俺はふとある事が気になったのでそれを水島さんに尋ねていった。
「あ、そういえばさ、水島さんが食べているそのお弁当って水島さんの手作りなんだよね?」
「え? あぁ、うん、そうだよ?」
俺はそう尋ねると水島さんはそうだと答えてきてくれた。なので俺は続けてこんな事を言っていった。
「いや、実は前々から思ってたんだけどさ、水島さんのお弁当って凄く美味しそうだよね」
「え……えっ!? そ、そうかな? い、いやでも、私はいつも悠斗にご飯を作ってたけど……でも評判は全然良くなかったからね……」
「あー……そういえばそんな事も言われてたんだっけ? あ、そうだ。それじゃあさ、良かったら俺にそのお弁当のオカズを一口食べさせてくれない?」
「私のお弁当を? うん、別にそれくらい全然良いよ? それじゃあ……はい、好きなオカズを取っていっていいよ」
そう言って水島さんは俺の方に弁当箱を近づけてきてくれた。
「ありがとう、それじゃあこの里芋の煮たやつ貰ってもいい?」
「うん、いいよいいよ。はい、それじゃあどうぞ」
「うん、それじゃあ頂きます!」
俺は水島さんのお弁当箱から里芋の煮物を一つつまんで口の中に放り込んでいった。そしてそれをゆっくりと食べていってみると……。
「……うん! これ凄く美味しいよ!」
「え? ほ、本当に?」
「うん、本当本当! とても柔らかくて里芋に味がしっかりと染み込んでいて物凄く美味しいよ。これって水島さんが一から手作りしたの?」
「うん、そうだよ。まぁ昨日作った晩御飯のオカズの残りなんだけどね。ふふ、だから一日経って味がしっかりと染み込んだのかもしれないね」
「へぇ、そうなんだ。でもこれだけ美味しい味の調整が出来るなんて水島さんは本当に凄いね。それに出汁の風味もしっかりと感じるよ。これはひょっとしてカツオの出汁かな?」
「えっ!? う、うん! そうなんだ! これちゃんとカツオ節から出汁を引いて作った醬油味なんだよ! ふふ、ちゃんと出汁の風味まで感じてくれるなんて……凄く嬉しいなぁ……」
俺がそんな事を言っていくと水島さんはぱあっと一気に明るい笑顔を浮かべてきてくれた。
「あはは、そりゃあわかるよ。俺もご飯を食べるのは好きだし、それに関西圏は出汁の文化が結構強い地域だしね。だから俺も子供の頃は母さんの料理の手伝いで、出汁を取るために煮干しの頭と腹わたを取る作業とかしてたしね」
「へぇ、そうなんだ! なるほどー、冴木君の家は煮干しで出汁を取る家系なんだね!」
「そうそう。俺が住んでた所は海が近かったから美味しい煮干しが沢山買えるって事でいつも煮干しを使って出汁を取ってたよ。まぁでも毎回煮干しの頭と腹わたを取らされるのは中々にメンドクサかったけどね」
「あー、確かに煮干しの頭と腹わたを取るのって結構メンドクサイ作業だよね。ふふ、でもちゃんとお母さんの手伝いをしてるなんて、冴木君はとても立派なお母さん孝行者だね!」
「あはは、そうかな? まぁ、普通だと思うけどね」
水島さんがそう言って俺の事を褒めてきてくれたので、俺は笑いながら返事を返していった。
「いやそれにしても水島さんってやっぱり料理が上手だったんだね! こんなにも美味しい料理を自分で作れるなんて凄いよ!」
「え、そ、そんな事ないよ。全然普通だよ。で、でもそんな風に言ってくれて嬉しいな……あ、それじゃあ良かったら、もう少しだけ食べる?」
「え、いいの? ありがとう! それじゃあ早速もう一口……うん! やっぱり凄く美味しいよ!」
「そ、そっか。ふふ、冴木君の口に合ったようで本当に良かったよ」
俺が大手を振って水島さんの作る料理が美味しいと伝えていくと、水島さんはちょっとだけ顔を赤くしながらも嬉しいと言ってきた。
「うん、ごちそうさま! こんなにも美味しいオカズを食べさせてくれてありがとう、水島さん!」
「う、ううん、私の方こそありがとうだよ。そんな何度も美味しいって言ってくれるなんて凄くその……嬉しいよ。あ、でもそういえば……冴木君って普段はお昼ご飯はお弁当とかは持って来ないの?」
「うん、そうだね。俺はいつもコンビニとか学食とか購買を利用する事が多いかな。俺の両親はどっちも共働きだからさ、基本的にはお昼はいつもそんな感じなんだ」
俺は水島さんにそう尋ねられたので、俺は普段の昼飯事情を話していった。
「そ、そっか、なるほどね。そ、それじゃあさ! こ、これからはその……冴木君のお弁当を……良かったら私が作ってあげようか?」
「えっ? いいの? そりゃあ水島さんの作るお弁当は食べてみたいけど……でも水島さんに迷惑がかかっちゃうんじゃない?」
「ううん、大丈夫だよ! 私もいつもお弁当を作ってるから、冴木君の分のお弁当も作るくらいなら全然問題ないよ! それに……」
「それに……?」
「それに……私の作るご飯を美味しいって何度も沢山言ってくれるのなら……ふふ、そんなの全然いくらでも作ってあげるに決まってるよ」
水島さんはニコっと笑みを浮かべながらそう言ってきてくれた。
「そっか。うん、それじゃあ是非とも水島さんにお願いしても良いかな? あ、もちろん食費はちゃんと渡すからね? そこはちゃんと水島さんに礼儀を尽くさせて欲しいからさ」
「うん、わかった! それじゃあ早速だけど明日からお弁当を作って来ても良いかな?」
「うん、大丈夫だよ! それじゃあ改めてこれからもよろしくね!」
「うん、こちらこそだよ!」
という事でこれからは水島さんにお弁当を作って貰えるようになった。これは明日からのお昼休みもかなり楽しみになってきたな。
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