第28話:水族館に行った日の夜(桜視点)

 冴木君と一緒に水族館に行った日の夜。


「ふふ、今日の水族館……すっごく楽しかったなぁ……」


 私はお風呂上りの後、自分の部屋に戻って今日撮影したスマホの写真を眺めながらそんな事を呟いていった。


 今日は沢山の写真を撮った。水族館の魚や動物達の写真や館内レストランの料理の写真、最後に貰ったペンギンのぬいぐるみの写真とか、本当に沢山の写真を撮っていった。


 私はそれらのスマホで撮影した写真をスライドさせていきながら今日の遊んだ内容を思い出していった。


「あ……ふふ、二人とも良い笑顔だなぁ……」


 するとその時、私のスマホ画面には冴木君と一緒に撮影した写真が表示されていた。これは水族館のスタッフさんに撮って貰った記念撮影の写真だ。


 ふふ、私も冴木君も満面の笑みを浮かべながらスタッフさんに撮って貰ったんだね。うん、これは良い思い出になりそうだ。


「それにしても本当にさ……冴木君って凄く優しい男の子だよね……」


 私はその冴木君と一緒に撮った記念写真を見つめながらそう呟いていった。


 私は小学生の頃から体格が結構良くてスポーツとか運動をするのが大好きだったので、当時から私は悠斗とか他の男の子達と一緒にサッカーとかバスケとか外で遊ぶ事が多い女の子だった。


 まぁでも小学生の頃は男の子と混ざって遊んでる事が多かったので、私は周りの男の子達からはあまり女子として見られてこなかった。どちらかというと男子特有の割と雑なノリで今まで接してこられる事が多かった気がする。


(ま、今でも高校の男子生徒達からは他の女子と違ってサバサバとしてノリが良いから話しやすいって言われたりするしね)


 だから幼馴染の悠斗とも未だに男の子特有の煽り合うような感じの接し方をされていたというわけだ。まぁ私自身そういうサバサバとした関係はとても好きだったから全然それで良いと思ってたんだけど……。


「でも冴木君は……悠斗とかとは全然違うタイプの男の子だよね……」


 冴木君は私のために今日は一日中水族館の中をエスコートをしていってくれたし、多分水族館についての情報も事前に沢山調べてくれてたんだろう。


 それに私がペンギンが好きだと何となく呟いた発言も冴木君はちゃんと覚えていてくれてたし、最後にはペンギンのぬいぐるみを私にプレゼントしてくれたりもした。


「ふふ、本当に嬉しかったなぁ……」


 私が何となく喋った事をしっかりと覚えてくれていて、しかも最後にその喋った事に関するプレゼントまでもくれるなんて……本当に冴木君は凄く優しい男の子だよね。そしてだからこそ……。


―― 映画館とか遊園地とか海とかさ……何処でも良いからこれからも水島さんと二人きりで色んな所に遊びに行きたいなって思ってね。


 そしてだからこそ、そんな事を言ってくれた冴木君の言葉が本当に嬉しかった。何というかその……私の事をちゃんと一人の女の子として見てくれてるんだなってそう感じたんだ。


「うん、だから私も冴木君と一緒に色々な所に沢山遊びに行きたいなぁ……って、あ、あれ?」


―― ドキドキ……


 そしてその瞬間、私は冴木君の事を考えていると何故か心臓の鼓動が早くなっている事に気が付いた。それに何故か私の顔もどんどんと熱くなってきてしまっていた。


「あ、あれ……? わ、私……一体どうしちゃったんだろう……?」


 こんなにも心臓がドキドキとしてしまう事はあまり経験した事がなかったので、私は自分の胸に手を当てながらちょっとだけビックリとしてしまった。


 で、でもさ……冴木君の事を考えるとこんなにもドキドキしちゃうなんて……あれ? も、もしかして私って……。


「え……い、いや、違う違う! 冴木君とはすっごく仲の良い友達ってだけだから……! そ、そもそも……冴木君が私みたいなゴリラ女の事を好きになってくれるわけないだろうし……」


 私はそう言ってちょっとだけ落ち込みながらベットの枕に顔を沈めていった。


 だって私は自分でも図体がデカくてガサツで女子っぽい所が少ないという事はちゃんと自負しているもん……。


 だから冴木君のようなカッコ良くて優しくて素敵な男の子に好きになって貰えるわけはないんだ……うん、だから高望みはやめておこう……。


―― それじゃあ、はいこれ。水島さんへのプレゼントだよ。


「……って、あ、そ、そうだ……あの子をベッドに招待しなきゃだ……!」


 私はちょっとだけ落ち込んだ気分にもなってしまったけど、でも一旦考える事を中断してベッド横に置いてた紙袋の中からペンギンのぬいぐるみを取り出していった。


 そしてそのままペンギンのぬいぐるみをベッドの上にちょこんと置いていってあげた。


「うん、やっぱり凄く可愛いなぁ……よし! それじゃあ君の名前はペンタ君と名付けてあげよう! これからよろしくね!」


 私はそう言いながらペンギンのぬいぐるみをぎゅっと優しく抱きしめていった。


「ふふ……こんなにも嬉しいプレゼント……生まれて初めてだよ……冴木君……」


 私は思わず笑みを溢しながらそんな事を呟いていった。だって私の事をちゃんと喜ばせようと思って買ってきてくれたプレゼントなんだもの。そんなの当然嬉しくなるに決まっているよ。


「あ……でも……結局私は冴木君の誕生日のお祝いはあまり出来なかったなぁ……」


 今日は冴木君の誕生日のお祝いとして冴木君の好きな水族館に一緒に遊びに行くという事だったのに、気が付いたら一日中私がエスコートをされるという結果になってしまった。だから私は……。


「……よし、それじゃあ近い内に改めて私の方で冴木君に何か良さそうな物をプレゼントしてあげなきゃだね!」


 きっと冴木君なら私がプレゼントした物をちゃんと大切にしてくれるはずだよね。だから私はそんな優しい冴木君のために……何か冴木君のためになりそうなものをプレゼントしていこうと改めて思っていった。

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