第26話:水島さんと駅前で待ち合わせをする

 翌週の土曜日。


「あ、冴木君、おはよう!」

「あぁ、うん。おはよう、水島さん」


 俺は待ち合わせ場所の駅前で待っていると、待ち合わせ時刻の五分前に水島さんがやって来た。


 今日の水島さんの服装はジーパンに半袖シャツとキャップを被った夏っぽい感じのシンプルコーディネートだった。やっぱり水島さんはシンプルな服装が好きなようだな。


「もしかして結構待たせちゃったかな?」

「ううん、俺も今来た所だよ」

「そっか、それなら良かったよ。あはは、もしかしたら遅刻しちゃったかなって思ってちょっと焦っちゃったよー」

「あはは、全然そんなの心配しないで大丈夫だよ。それじゃあ合流も出来た事だし早速水族館に行こうか?」

「うん、わかった!」


 という事で俺達は早速水族館へと向かって歩いて行った。それにしても……。


(ここ何日かで水島さんの調子がだいぶ戻ってきたみたいで本当に良かったな)


 二週間くらい前の水島さんは本当に辛そうな感じだったんだけど、でもあれから俺は毎日水島さんの愚痴を聞いてあげたり、土日に一緒にランニングをしたりしてたおかげで、水島さんのストレス軽減はだいぶ出来てきているようだ。


 なのでまだ本調子では無さそうなのはわかるけど、それでもだいぶ元気な調子になってくれていて本当に良かったよ。


 という事で俺はそんな調子を戻してきた水島さんと他愛無い話をしていきながら水族館を目指していった。


「うーん、それにしても最近一気に暑くなってきたよね。こうなってくると八月とかになったらヤバそうだよね」

「あぁ、うん、本当にそうだよね。それに日差しもだいぶキツくなってきたよね。私すぐに日焼けしちゃうからさ、今日はいつもよりも沢山日焼け止めクリームを塗ってきちゃったよー」

「へぇ、それはちょっと意外だね。水島さんって肌が白いから日焼けとかあんまりしないタイプなのかなって思ってたよ」

「あはは、そんな事ないよー。私は肌のお手入れを怠るとすぐに日焼けしちゃうんだよ。小学生の頃なんて夏休みに入ったら毎日外で遊んでたからさ、あの頃はすぐに日焼けして黒くなっちゃってたんだよねー」


 そう言いながら水島さんは袖から出ている自分の腕をさすっていっていた。


「へぇ、そうなんだ? はは、でも日焼けしちゃうくらい毎日外で遊んでたなんて元気な小学生だった証拠だね」

「あはは、確かにそう言われてみればそうだね。いやー、あの頃は暇な時間があればいつも男子達に混ざって一緒にサッカーとかバスケをやってたなー」

「そうなんだ。それじゃあ水島さんは小学生の頃からスポーツをするのが大好きだったんだね」

「うん、そうそう! あ、まぁでも私はずっと男子達と混ざって遊んでたからさ、その時の名残で今でも動きやすい服装を好んで着ちゃうようになったんだよね……ほら、こういうちょっと男の子っぽい服装っていうかさー」


 そう言って水島さんは自分の履いているジーパンを指差しながら笑っていっていた。


「あぁ、なるほど、そういう事だったんだ。でも水島さんってスタイルが物凄く良いからそういうシンプルな服装もオシャレで似合ってるよ」

「え? そ、そうかな? そう言って貰えるとちょっと嬉しいな。実は私さ、こういうシンプルな服が結構好きなんだけど、でも悠斗に見せても全然可愛くないとかセンスないとか普通に言ってくるんだよ? だからもしかして私にはこういう服って似合わないのかなって思ってたんだけど……でも冴木君にそう言って貰えて本当に良かったよ」

「はは、そっか。それなら俺も良かったよ」


 そう言って俺達は笑い合いながらそのままお互いの好きな服装についての話をしていった。いやそれにしても……。


(女の子の服装とか髪型とかについてセンス無いとか言うのは流石に駄目だろ……)


 俺はそんな事を内心で思いながらも、とりあえずアイツの事は一旦忘れていく事にした。


◇◇◇◇


 それからしばらくして、俺達は水族館に無事に到着した。


 水族館に到着した後は水族館の中をコース通りに歩き回っていった。


 回遊魚のコーナー、サメのような大きな生物のコーナー、クラゲやヒトデのような不思議な生物のコーナーなどなど、色々なコーナーを順番に歩き回っていった。そして……。


「わわっ! 冴木君! 今からペンギンの餌やり時間が始まるってよ!」

「あ、本当だね。うわー、めっちゃ可愛いね!」

「うんうん、凄く可愛いよね! あっ、ペンギン達が皆餌を求めて皆でよちよち歩きしてるー! うわぁ、皆すっごく可愛いなぁ!」


 そして俺達は今はペンギンのコーナーに到着した所だった。


 ちょうどペンギン達への餌やりが始まる時間だったので一斉にペンギン達が歩き出していっていたので、それを見て水島さんは目を輝かせながらスマホを取り出して写真をパシャパシャと撮り始めていっていた。


「はは、すっごく楽しそうにペンギンの写真を撮ってるね。もしかして水島さんはペンギンが好きなの?」

「うん、すっごく大好きだよ! もしかしたら一番好きな動物かもしれないね! あー、もう本当に丸っこくて可愛いなぁ……!」


 俺がそう尋ねると水島さんは満面の笑みを浮かべながらそう答えてきてくれた。なるほどなるほど、水島さんはペンギンが好きなんだな。


「……あ、見てみて水島さん! あっちにペンギンに餌やり体験が出来るコーナーがあるらしいよ!」

「えっ!? ほ、本当だ!」


 ちょうど近くの立て看板にそんな事が書かれていたので、俺は水島さんにそれを教えてあげた。


「なるほどなるほど。これは有料で餌を購入してペンギン達にあげる事が出来るようだね。これは貴重な体験が出来そうだし、お金はちょっとかかっちゃうけどやってみない?」

「う、うん! やりたいやりたい! やってみようよ冴木君!」

「うん、わかった!」


 という事で俺達は今度はペンギンの餌やり体験のコーナーへと向かって行った。

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