第25話:桜の事をどう思っているかと言えば……(悠斗視点)
昼休み。
(はぁ、昨日の夜は大変だったなぁ……)
俺は昨日の夜に桜と喧嘩をしてしまった。そしてそれから一日経ってもまだ桜は俺と口を開こうとはしてくれなかった。
まぁ正直桜と喧嘩をする事なんて日常茶飯事だから俺は全然気にしてないんだけど、でも桜の怒りは一日経ってもまだ収まっていないようだ。
(はぁ、全く……アイツはちょっとガキ過ぎる所があるよな……)
桜に貰ったキーホルダーを仲の良い後輩に譲ってあげたくらいで何もあそこまで怒らなくてもいいのにさ。だってあれ販売価格1000円くらいのキーホルダーだろ?
そりゃあ高価なアクセサリーとかだったら流石に俺だってあげないけど、でも普通に安物のキーホルダーなんだから後輩にあげたって別にいいじゃん。
(はぁ、全く……アイツも高校生になったんだからもっと大人になって貰いたいもんだよな、はは)
という事で俺は心の中でそう思いながら笑っていった。
まぁでも日常的に喧嘩を桜としているとは言っても、別に俺は桜の事が嫌いなわけでは決してない。というかむしろ好きな方だ。
だって桜とは子供の頃から毎日のように一緒にテレビを見たり、ゲームをしたり、飯を食ったり、バスケをしたりと……本当に色々な事をして遊んできた仲なんだ。
しかも桜はノリも結構サバサバとしているというか、女子というよりも男勝りな感じの性格だったので、男の俺にとっても物凄く話しやすいタイプの女の子だった。
だから俺は子供の頃から桜の事を仲の良い男友達っぽい感じでずっと接してきていたんだけど……。
(うーん、でもそういえば桜って、何だか高校生になってからマジで一気に美人になったよなぁ……)
子供の頃の桜は図体がデカくて男勝りな性格だったんだけど、でも高校生になってからは見た目に気を遣うようになったり、ボディミストみたいなのを使って良い匂いを発するようになってりとか、だいぶ女の子っぽい感じになっていっていた。
それに元々スタイルは良かったし整った顔付きもしてたんだけど、高校になってからさらにその美貌に磨きがかかってるような気がする。いやマジでアイドル級に可愛くなったよな。
まぁでも本人にはそんな事を言うのは何か負けた気分になるので、俺は桜を褒めたりする事は今まで一度もなかった。
というかむしろ未だに桜の事を小学生からのあだ名であるゴリラ女とついつい呼んでしまっていた……。
(はぁ、未だにそんな事を言ってる場合じゃないよなぁ……ちゃんと好きだって告白しないとだなぁ……)
もちろん俺は桜の事は幼馴染として好きなんだけど、でも一人の女の子としてもちゃんと好きだった。
だから本当は桜と付き合いたいと思ってはいるんだけど……でも日常的に俺達の事を付き合ってるとか茶化してくる奴が多いせいで、俺は桜にちゃんと告白するタイミングが無くて困っていた。
(うーん、どうにかして桜に告白出来る絶好のタイミングとかがあれば良いんだけどなぁ……って、あ)
そんな事を考えていると桜が教室に戻ってきた。どうやら昼飯を食い終えて帰ってきたようだ。
そして桜はそのまま俺の席に近づいてきてこう喋りかけてきた。
「……昨日はごめん。ちょっと怒り過ぎたかもしれないわ」
「え? あぁ、別に良いよ。ってか全然気にしてないしさ、はは」
「そっか」
桜はそう言いながら俺に向かって謝ってきた。どうやら昨日の桜の怒りは静まってくれたようだ。
(あぁ、もしかしたら気分転換に外に出た事で多少は冷静になれたのかもしれないな)
妙に桜はスッキリとした表情になってるし多分そういう事なんだろう。まぁ何はともあれすぐに仲直りが出来て良かった。
「あ、でも料理をするの疲れたからしばらくは料理作るのやめるわ。だからこれからの昼食と夕食は各自で好きに食べる事にしましょう?」
「えっ? あ、あぁ……まぁ、わかったよ」
桜は唐突にそんな事を俺に言ってきた。料理が大好きな桜がそんな事を言うなんて珍しい気もするけどな……。
まぁでも本人が料理をするのが疲れたって言ってるのだから、そればっかりは仕方ない。なので俺はその桜の提案に了承していった。
うーん、でもそうなるとこれからしばらくの間は桜の手料理は食べる事が出来なくなるって事かぁ……あっ、でも!
(あ、でもそうなるとこれからしばらくの間は毎日学食を食えるって事じゃん!)
はは、それはかなり嬉しいなー! よし、それじゃあ桜がまた料理をしてくれるようになるまでの間は毎日学食で飯を食う事にしよう!
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