第24話:落ち込んでいる水島さんの話を聞いていく

 それから数分後。


「……って事があったのよ」


 俺は水島さんから川崎との喧嘩の内容を聞いていった。それを聞き終えた俺はこう言っていった。


「あぁ、なるほどね。うん、そりゃあ完全にアイツが悪いわ……」


 水島さんの話によると、どうやら川崎は誕生日にあげたあのアクリルキーホルダーを勝手に後輩にあげてしまったらしい。その事で今二人は大喧嘩をしているようだ。


(いや流石に水島さんが川崎のためにあげたプレゼントを勝手に違う人にあげるのは駄目だろ……)


 まぁ川崎も先輩として仲の良い後輩に気前の良い所をアピールしたいっていう気持ちはわからなくもないけど、でもその前に幼馴染にちゃんとカッコ良い所をアピールしろよな。はぁ、全く……。


「まぁ、二人の喧嘩の原因についてはよくわかったよ。俺も水島さんと一緒に誕生日プレゼントを買いに行ったからこそ、水島さんの悲しい気持ちは十分に伝わってくるよ」

「あ、そ、そうだよね……本当にごめん……佐伯君には買い物にまで付き合って貰ったっていうのに……」

「いやいや、俺の事なんて全然気にしないで大丈夫だよ。というか水島さんの方が絶対に辛いでしょ? 俺で良ければ水島さんの愚痴とかいつでも聞くからさ、だからこれからはあんまり一人で気負わないで俺の事をもっと気楽に頼ってね」

「冴木君……」


 俺は優しく微笑みかけながらそう言っていったんだけど、でも何故か水島さんはちょっとだけまた暗い表情をしていった。


(あれ……もしかしてまだ他にも何か辛い出来事があったのかな?)


 俺は水島さんの表情を見て一瞬そう思ったんだけど、でも水島さんはすぐに暗い表情を止めて朗らかな笑みを浮かべながら俺に向かってこう言ってきた。


「……うん、ありがとう、冴木君。冴木君はいつもほんとに優しいよね。今までにも沢山の恩を貰っちゃってるし、もうそろそろ私もその恩を返していかないとだね」

「あはは、そんなの全然気にしないでも……って、あ、そうだ。それじゃあさ、前に言った俺への誕生日プレゼントの話覚えてる?」

「え? あぁ、うん、もちろん覚えてるよ。あ、もしかして何か欲しい誕生日プレゼントが見つかったの?」


 ちょっと前に俺の誕生日が近いという話をしたら、水島さんは誕生日プレゼントをあげるから何か欲しい物とかあったら教えてねって俺に言ってきてくれたんだ。


「うん、その誕生日プレゼントの件なんだけどさ……今度水島さんと二人きりで遊びたいっていうお願いに使っても良いかな?」

「……え? 私と遊びに?」

「そうそう。ほら、いつも土日に俺達って一緒にランニングしてるでしょ? だからその土日のどっちかを使って、水島さんと二人きりで遊びに出かけたいなって思ってさ。それでどうかな? 水島さん的には俺と二人きりで遊ぶのとかは駄目かな?」


 だから俺はそんな誕生日プレゼントのお願いをしていってみた。これは転校してきてからずっと水島さんと仲良くしてきたからこそ出来るお願いだった。


 そしてそんな俺のお願いに対する水島さんの返事はもちろん……。


「ふふ、そんなの全然良いに決まってでしょ。というか冴木君となら全然何処にでも遊びに行くよ」

「はは、そっか。それなら良かったよ」


 という事で今までずっと仲良く過ごしてきたからこそ、水島さんもそう言って俺のお願いをすぐに受け入れてくれていったのであった。


「あ、でもさ、遊びに行きたいって具体的に何処に行きたいの? 冴木君は何処か行ってみたい所とかあるのかな?」

「あぁ、うん。実は俺さ……水族館が大好きなんだよね」

「え? そうなの?」

「うん、そうそう。一番最初に俺は関西から引越してきたって言ったと思うんだけどさ、実は大阪にはめっちゃ巨大な水族館があるんだよね。それでその巨大な水族館が俺は大好きでさ、小学生の頃は両親にその水族館によく連れて行って貰ったんだよね」

「へぇ、そうなんだ。あ、でも確かに大阪の水族館って凄く有名だよね。私も名前はテレビとかネットでよく聞いた事があるよ」


 俺が大阪の水族館についての話をしていくと、水島さんは優しく笑みを浮かべながら俺の話を聞いていってくれていた。


「うん、それでせっかく東京に引っ越してきた事だし、そろそろこっちの水族館にも行ってみたいなって思ってきてた所なんだよね。ほら、都内にも有名な水族館って結構多いでしょ?」

「あー、確かにそう言われてみればそうかも! 都内だったら池袋とか品川とかにある水族館が有名だよね!」

「はは、やっぱりそうだよね。それじゃあ改めてだけどさ、良かったら俺と一緒に水族館に行かない? 水族館ならきっと見て回るだけでも癒されると思うし、もしかしたら水島さんの落ち込んだ心も少しは回復するんじゃないかな?」

「え……? あ……さ、冴木君……」


 俺は水島さんの目をジっと見つめながらそう言っていくと、水島さんはちょっとだけビックリとした表情を浮かべてきた。でも水島さんはすぐに優しく微笑みながら俺にこう言ってきてくれた。


「……うん、ありがとう冴木君。本当は私もちょっとしんどいなって思ってた所だったから……だからその……誘ってくれて本当に嬉しいよ。それじゃあ私で良ければ是非とも一緒に水族館に行かせて欲しいな」

「うん、それなら良かった。それに俺の方こそありがとうだよ。俺も水島さんと遊びに出かけたいって思ってた所だしさ。あ、それじゃあちょっと行ってみたい水族館が一つあるんだけど、良かったらそこに行ってみない?」

「うん、もちろん良いよ。どこどこ?」

「あぁ、えっとここから数駅先にある水族館なんだけどさ……」


 という事でこうして俺達は今度の土曜日に二人きりで水族館に行く約束を交わしていったのであった。今から水島さんと水族館に行くのが本当に凄く楽しみだな。

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