第23話:水島さんの様子がおかしい気が……
翌日の授業休み中。
(……?)
俺は教室内で倉持と他愛無い話をしながら休み時間を過ごしていたんだけど、でも何というか今日はいつもよりも教室の中が静かな感じがした。
(あれ、何で今日はこんなにも静かに感じるんだろう……って、あ)
少し考えてみたらすぐに気が付いた。今日は朝からずっと水島さんと川崎の二人が一切口を聞いていないんだ。
(なるほど、だからいつもよりも教室内が静かな感じがしたのか)
だっていつもなら結構な頻度で水島さんと川崎による賑やかな幼馴染トークが聞こえてくるはずなんだ。それなのに今日はまだ一度もそんな賑やかな話し声は聞こえてきていなかった。
(うーん、一体どうしたんだろう? もしかして喧嘩でもしたのかな?)
理由はわからないけど、でもお互いに口を聞こうとしないという事はもしかしたらそういう事なのかもしれないな。
それに二人が仲良さげに楽しく話している場面もよく見かけるけど、逆に喧嘩をしてる場面もたまに見かけるしな。
という事で俺はその原因を解明するためにもお昼休みになったら水島さんに話しかけていく事にした。
◇◇◇◇
そしてそれから数時間後。
午前中の授業が終わってお昼休みに入ると、水島さんはすぐにお弁当箱を持って教室から出て行った。どうやら何処か別の場所でお昼ご飯を食べるようだ。
なので俺も昼飯を手に持って教室から出て行き、そのまま水島さんの後ろを追いかけていった。
すると水島さんは一階の校庭前にあるベンチにやって来て、そこに座ってお昼ご飯を食べ始めていっていた。
(よし、それじゃあ俺も……)
という事で俺は以前と同じように近くの自販機で飲み物を買ってから水島さんの方に近づいて行った。
「お疲れさま、水島さん」
「え……? って、あぁ、冴木君。うん、お疲れさま……」
「うん、お疲れさま。もしよかったら隣に座っても良いかな?」
「え? あぁ、うん……いいよ」
「そっか。うん、ありがとう」
俺は水島さんに軽く挨拶をしてからベンチに座っていった。
そしてそのまま俺は水島さんの様子をチラっと確認していったんだけど、何だか上の空のようだし表情もかなり暗い感じだった。うーん、これはちょっと心配だな……。
「おっと、忘れてた。それじゃあ、はいこれ」
「え……? あ……」
という事で俺は水島さんの事を心配しながらも、先ほど自販機で購入したペットボトルのお茶を水島さんに手渡していった。
「あ……う、うん、ありがとう……飲み物忘れてたから助かるよ……。あ、それじゃあお代を渡さなきゃだね……」
「お金なんて良いよ良いよー。ほら、今日も水島さんの隣に座らせて貰ったお礼って事でさ」
「え……? で、でも……」
「はは、本当に気にしないで良いって。あ、それでも気になるっていうんなら……それじゃあ今度俺がサイフを忘れた時に水島さんが飲み物を奢ってよ? それでチャラって事でどうかな?」
「……うん、わかった。それじゃあその……ありがとね、冴木君」
「うん、いいよ」
水島さんは申し訳なさそうな表情でそう感謝を伝えてきてくれた。なので俺は水島さんに向かって出来る限り精一杯優しく微笑みを浮かべていってあげた。
そしてその後はお互いに黙々とお昼ご飯を食べ始めていき、それから程なくしてご飯を食べ終えた後で俺は本題を尋ねていってみた。
「それでさ、どうかしたの水島さん? 何か嫌な事とか辛い事でもあったの?」
「え……? な、何でそう思うの……?」
「いや、だってさっきからずっと水島さんの表情は物凄く暗いからね? だから何かあったのかなって心配になっちゃってさ」
「え、ほ、本当に……? そ、それは、その……ご、ごめんね……冴木君に心配かけちゃって……」
「いやいや、全然そんなの気にしなくて良いよ。でも本当にどうしちゃったの? 何か悩みとかあるんだったら俺が相談に乗るよ?」
「え? で、でも……流石に冴木君の大切なお昼休みの時間を……そんな私の事に使わせちゃうのは申し訳ないというか……」
俺は水島さんにそう尋ねていったんだけど、でも水島さんはより一層暗い表情をしながらそう返事を返してきた。
だから俺はいつも以上に柔和な笑みを浮かべながら水島さんに優しくこう言ってあげた。
「はは、今更そんな他人行儀な態度なんて取らなくてもいいでしょ。俺達は今までずっと休みの日に一緒にランニングをしてきた仲なんだし、それに俺は水島さんの事は一番の友達だと思ってるんだよ? だからさ、そんな一番大切な友達が暗い顔をしてるのは凄く心配になっちゃうんだよ……」
「さ、冴木君……」
「だからもしも本当に何か嫌な事とか辛い事とかあるようなら、何でも良いから気軽に悩みを打ち明けてみてよ? 俺はどんな話でも水島さんの話なら真剣に聞くからさ」
「……っ」
俺は水島さんの目をしっかりと見つめながらそんな言葉を伝えていった。それは紛れもなく俺の本心からの言葉だった。
そして水島さんも俺の本心の言葉に納得してくれたようで……ちょっとだけ伏し目がちになりながらも俺に向かってポツリと一言呟いてきた。
「……うん。実はね……」
そう言って水島さんは昨日の夜に起こったある出来事を俺に教えてくれていった。
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