第20話:お弁当箱を返してもらうために悠斗を探していく(桜視点)
その日の放課後。
「はぁ、全くもう……悠斗は何処に行ったのよ?」
私は悠斗を探すために廊下を歩き回っている所だった。悠斗の机に学生鞄が置かれたままだったからまだ帰宅はしていないはずだ。
「もう……ご飯を食べ終わったらお弁当箱を返しなさいってちゃんと言ったのに、何で放課後になっても返してこないのよ?」
いつもは一緒にお昼ご飯を食べているから食べ終わったらすぐに私がお弁当箱を回収しているんだけど、でも今日は別々の場所で食べていたからお弁当箱を回収出来ずにいた。
「帰ったらすぐにお湯に漬け込んでおかないとご飯粒とかが固くなって洗いにくくなるっていうのに……全くもう! 事前にちゃんと言っておいたんだからお弁当箱くらい返しなさいよね!」
という事で私は悠斗にお弁当箱を返して貰うために悠斗を探し回って行っていた。まぁでも悠斗を探している理由は実はそれだけじゃなくてもう一つあった。
そのもう一つの理由とはもちろん今日のお弁当の感想を聞くためだ。悠斗はお昼休みは部活のミーティングでずっと教室にいなかったので、私はまだ悠斗から今日のお弁当の感想を聞けていなかった。
「ふふ、でも流石に今日のお弁当は美味しかったって言うはずよね!」
私は昨日冴木君に貰ったアドバイスを参考にして、今日のお弁当はだいぶ濃いめの味付けにしてあげてみたんだ。
さらに今日のお弁当のおかずはせっかくなので全部悠斗の大好物にもしてあげたんだ。これで美味しくなかったって言ってきたら流石に引っ叩いてやるわよ。
「悠斗から美味しいっていう感想を聞くのが今から凄く楽しみだなぁ……って、あっ、いたいた」
そんな事を想像しながら歩き回っていると、私は無事に廊下で悠斗を見つける事が出来た。どうやら友達と話しながらトイレか何処かに向かって歩いているようだ。
という事で私は早速悠斗に声をかけようとした。でも……。
「いやー、でも悠斗はあんな可愛い彼女がいて羨ましいよなー! 俺も水島さんみたいな幼馴染と付き合いたいぜー!」
「だ、だからいつも言ってんだろ。別に桜とは付き合ってるわけじゃないんだってさ」
(……あれ? もしかして私の事について話してるの?)
どうやら悠斗は友達と一緒に私についての話で盛り上がっているようだ。なので私は一旦悠斗に話しかけるのを止めて様子を伺ってみる事にした。
それに悠斗が私の事をどう思ってるのかも気になるしね。
(ま、でもどうせいつも通り私の事をゴリラ女とか脳筋女って呼ぶんでしょうけど)
ふふ、そんな悪口を言い始めたら後ろから悠斗の事を思いっきり脅かしてやろうかしらね? よくもまぁ私の悪口でそんなに盛り上がってるなぁ……? ってな感じでさ!
「あはは、そういやそうだったな。でも悠斗だって本当は水島さんと付き合いたいって思ってんじゃないのか? だってめっちゃ水島さん普通に可愛いしさー」
「えっ!? い、いやいや! アイツはマジでただのゴリラ女だぞ! 凶暴な所ばっかりで可愛い所なんて何一つ無いからな!!」
(ふぅん? そっかそっかぁ、私がゴリラ女ねぇ……私が後ろから聞いてるというのにそんなにも楽しそうに語っちゃって良いのかしらね……クスクス……)
やっぱり案の定というか、悠斗はいつも通り私の事をゴリラ女だとか凶暴女だとか言ってきていた。
まぁでも子供の頃から悠斗はずっと私の事をゴリラ女だって言ってたから今更過ぎて特に動じる事もないんだけどさ。
(でも楽しそうにそんな事を言ってるのは何だか癪に障るし、こうなったら頃合いを見て後ろから声をかけて脅してやるしかないわね!)
私はそんな事を思いながらゆっくりと悠斗の後ろに近づいて行った。
「はは、ゴリラ女とかひでぇ事言うよなー。水島さんは普通に可愛い女子だと思うけどなー」
「いやいや、お前は騙されてるだけだって! 確かに外見は多少は良いのかもしんないけど、でも中身はマジでただの脳筋ゴリラだからな! 子供の頃から部活ばっかりで自分の事には無頓着だし、服装だって男っぽい地味な服ばっかり着てるしさ! それに性格もガサツだし、女子力だって全然無くてもうマジでヤバ過ぎるんだぜ??」
「ふぅん、そうなんだ?」
いやいや、私なんかよりも悠斗の方がよっぽどガサツでしょうが! はぁ、全くもう……これは今日も悠斗の家でたっぷりとお説教コースに決定ね!
よし、それじゃあ早速後ろから悠斗の事を盛大に驚かしてやろう……!
「ちょっと、ハル――」
「あれ、でも水島さんって女子力は高い方じゃないの? だって悠斗っていつも水島さんに手作りのお弁当を作ってきて貰ってるじゃん?」
「え? あぁ、まぁそれは確かにそうなんだけどさ……でも桜のお弁当ってちっとも美味しくないんだぜ? 今日も桜から弁当を貰ったんだけど全然味しなくてクソ不味かったからな、あはは!」
「……って、え?」
私は悠斗にお説教をしてやろうと思って後ろから声をかけようとしたんだけど……でも私はギリギリの所で声をかけるのを止めた。
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