第19話:仲の良い後輩と一緒に食堂に向かう(悠斗視点)

 その出来事よりも十分程前。


「それじゃあ今日のミーティングはこれで終わりにするぞー、お疲れーっす!」

「「お疲れさまーっす」」


 という事で今日はミーティングは予想通りすぐに終わった。まぁそうはいっても休み時間の半分くらいは終わってしまった気はするけど。


「よし、それじゃあさっさと食堂に行こうぜ。早く行かないと飯が売り切れちまうかもだしさ」

「はい、了解です! 確かに早くいかないとカツカレーとかの人気商品は売り切れになっちゃってるかもしれないですよね」

「あぁ、そうだな。ってか今の時間はどれくらいなんだろ? えぇっと、どれどれ……」


 俺は現在時刻を確認するためにスマホをポケットから取り出していった。するとその時……。


「あっ! それモンコレのアクリルキーホルダーじゃないっすか! しかも最新の商品のヤツじゃないっすか!」

「ん? あぁ、そうなんだよ。あはは、めっちゃ出来栄え良いよなー、これ」


 俺がスマホを取り出したその時、薮下は俺のスマホケースに付いてあるアクリルキーホルダーを見て目を輝かせていっていた。


 実は薮下も俺と同じでゲームが大好きで、薮下とは中学生の頃から休みの日とかに一緒にネットでゲームをしたりする仲でもあった。


 一緒にやっているゲームはFPSゲームとか格ゲーとか、もちろんこのキーホルダーが元になっているモンコレも一緒に遊ぶ間柄でもあった。


「はい、凄く完成度の高いキーホルダーですね! うわー、めっちゃ綺麗で良いなー……」

「んー? 何かめっちゃ羨ましそうにしてんじゃん? って、あぁ、そういえばこのモンスターって薮下がかなり好きなヤツだったな?」

「え? あ、はい! そうなんですよ! そのモンスターめっちゃ可愛いからついつい使いたくなっちゃうんですよねー……って、あれ? でもよく俺の好きなモンスターがわかりましたね?」

「そりゃあ薮下とは中学の頃からモンコレでずっと対戦してる仲だしな。ってか、薮下はいつも手持ちにこのモンスターを入れてるんだからそんなのわかるに決まってるだろー」

「はは、確かに毎回手持ちに入れてたら大好きなのバレバレですね。でも先輩にオススメされてモンコレを始めましたけどめっちゃ神ゲーですよね! マジでこんな面白いゲームを紹介してくれてありがとうございます!」


 そう感謝の言葉を言いながら薮下は俺に向かって深々とお辞儀をしてきてくれた。いやマジで出来た後輩だよな。だからこそこういう後輩の事はついつい可愛がりたくもなるってもんだ。


「はは、いいっていいって。まぁその代わりこれからも俺と一緒に色んなゲームで遊んでくれよな?」

「はい、もちろんです! いやー、でもマジでそれうらやましいっすわー……そういえばそのキーホルダーって何処で買ったんですか?」

「え? あー、えぇっと、確か家電量販店で買ったんだっけかな?」

「あ、家電量販店で買ったんですね! なるほどー、それなら俺でも簡単に買えそうな商品っすね!」

「あぁ、うん。多分普通に買える商品だと思うぞ」


 確か桜にこのキーホルダーを何処で買ったのかと尋ねたら家電量販店で買ったと言っていた。


 そして家電量販店で買える商品って事は普通に考えたら大量生産品のはずだよな? よし、それなら……。


「……よし! それじゃあ薮下はいつも俺と一緒に遊んだりしてくれてるしさ、今日はそのお礼って事でこのキーホルダーをお前にやるよ!」

「えっ、いいんですか!? でも先輩だってモンコレ大好きじゃないっすか? それなのにこのキーホルダーを貰っちゃうのはちょっと申し訳ないというか……」

「はは、いいよいいよ。それにこのモンスターは俺よりも薮下の方が好きなんだし、きっとお前の方が大切にしてくれるだろうしさ。だから……ほらよ」


 そう言って俺はスマホケースからそのアクリルキーホルダーを取り外して薮下に手渡していった。


(ま、それにどうせ1000円くらいのキーホルダーだろうし、薮下にあげちゃっても別に構わないよな)


 その時、一瞬桜の顔が脳裏にちらついたんだけど、まぁでも家電量販店で買えるようなキーホルダーなんだし、別に友達にあげたくらいでアイツも怒るわけないよな。


「まじっすか! ありがとうございます! マジで一生大切にします!」

「あぁ、大切にしてくれよ。あ、そうだ。それじゃあせっかくだし、今日も帰ったらまたオンラインでモンコレの対戦しようぜ!」

「はい、了解っす!」


 という事で俺達はそんなゲーム話をしながら一緒に食堂へと向かって歩いて行った。

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