第16話:水島さんと料理についての話をする
その日のお昼休み。
「あれ、水島さん?」
「あ、冴木君。お疲れさまー」
食堂で昼飯を食べ終えた俺は食堂から出て廊下を歩いていると、バッタリと水島さんと遭遇した。
「あ、もしかして水島さんも今日は食堂でご飯食べてたの?」
「ううん、いつも通り悠斗と一緒に教室で食べてたよ。でも今日はお昼休みに部室棟に行く用事があったからさ、早めに食べ終えて部室棟に行ってた所なの」
水島さんは少し疲れた素振りを見せながらそう言ってきた。もしかしたら部活のミーティングでもあったのかな? ちなみに食堂の先に部室棟があるんだ。
「そうだったんだ。それはお疲れ様だね。もう用事は終わったの?」
「うん、無事に終わったよ。だから今から教室に帰る所なんだ」
「あ、そうなんだね。それじゃあ良かったら一緒に教室まで戻らない?」
「うん、もちろん良いよ」
という事で俺は水島さんと一緒に教室まで戻っていく事となった。せっかくなので水島さんと雑談をしながら教室まで歩いて行った。
「あ、そうだ。そういえばさ……もしかして男の子って味の濃い方が好きとかってあったりする?」
「ん、どういう事?」
そんな雑談をしている中で、水島さんはふとそんな事を俺に尋ねてきた。
でも俺には質問の意図がよくわからなかったのでキョトンとしながら聞き返していった。
「えっとね、前にも言ったと思うんだけど、私は昔から悠斗にご飯を作ってあげてるんだ。でも悠斗は私の作る料理がいつも味が薄いっていつも言うんだよね……」
「あー、なるほど? そうなんだ?」
そういえば川崎からそんな話を聞いた事がある。水島さんの作る料理はいつも味が薄くてクソ不味いっていう話を川崎は笑いながらよく喋ってた気がする。
でも川崎がそんな事を言ってたなんて水島さんが知ったらショックを受ける気がしたので、俺は敢てその事を口にしないで聞き役に徹する事にした。
「でも、私としては味のバランスは良い感じに調整出来てると思うのよ? それなのにいつもそんな事を言ってくるって事は……もしかして私の味覚がおかしいのかなってちょっと思ってきたんだよね。今日も悠斗と一緒にお弁当を食べてたらそう言ってきたしさ」
どうやら毎日川崎にそんな事を言われてしまい、料理の自信をちょっと無くしかけているようだ。料理が好きなのに下手だと思われるのは辛い事だよな。
「うーん、でもあれじゃないかな? 確か川崎も男子バスケ部に所属してるよね?」
「え? あ、うん、そうだけど?」
「だよね。まぁやっぱり運動系の部活をしているとガッツリと運動している分、他の人よりも汗とか沢山出るだろうし、塩分補給っていう意味で味の濃い物が食べたくなるって事はあるんじゃないかな?」
という事で俺は水島さんを元気づけるためにこんな話をしていった。まぁ一般論だけど汗をかきやすい人は塩分を欲するはずだしな。
「あとは基礎代謝とかも女の人よりも男の人の方が高いから、通常は男の人の方が汗をかきやすいって言われてるしね」
「あ、確かにそんな事を保健体育の授業で習ったかもしれないわ」
「うん、そうだよね。だから多分だけど水島さんの料理は味が薄いわけじゃなくて、川崎の基礎代謝が高いのと、運動系の部活をしているから汗が沢山出て濃い味を所望してるってだけじゃないかな?」
「な……なるほど! うん、確かにそうかもしれないわ! よく考えたらアイツって結構汗をかきやすい方だった気がするもん!」
俺がそんな例を出して話してみると、水島さんは納得したように何度も顔を頷いてきてくれた。
「なんだ、そういう事だったのかー。よし、それじゃあこれからは悠斗のためにちょっと味の濃い料理を作ってあげるのも良いかもしれないね!」
「それが良いと思うけど、でも夜に味の濃い料理を出しちゃうと胃がもたれるかもだから、お昼のお弁当で調整してあげた方が良いかもね。放課後になればバスケ部の運動で汗をかくことになるだろうしね」
「なるほど、それは良い案だね! うん、そうしてみるよ! ありがとう冴木君! いつも的確なアドバイスをくれて助かるよー!」
「はは、全然良いよ。また何か困った事があったらいつでも俺に相談してね」
「うん、わかった! 本当にいつもありがとね!」
という事でこの日は水島さんから盛大な感謝を貰う事になった。
(でもここまで気軽に相談してくれるようになったのは本当に嬉しい事だよなー)
水島さんとはこの三ヶ月でだいぶ仲が良くなっているので、何か困った事とかあると俺にアドバイスを求めて相談してくる事も多くなってきていた。
それだけ俺の事を信頼してくれている事だろう。そして俺はその信頼に応えて水島さんが困っている時にはいつでもすぐ助けられるように頑張ろうと思っていった。
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