第15話:倉持と他愛無い話をして過ごす

 水島さんと誕生日プレゼントの買い物に付き合ってから数週間が経過した頃。


「おはよっすー」

「ん? あぁ、おはよっす、倉持」


 学校に登校すると早速友人の倉持が俺に挨拶をしてきてくれた。


 倉持とはこの学校に転校してきてから一番初めに仲良くなった友人だ。これまでにも結構な頻度で一緒に遊んだりもしている。


「あ、そうだ! ちょっとこれ見てくれよ冴木!」

「どうした? って、これは……?」


 そう言って倉持は興奮気味にスマホを取り出して俺の方に見せてきた。そのスマホ画面には倉持と可愛い女の子が仲良さげにしている写真が映し出されていた。


「あ、もしかして……これって前に言ってた例の女の子か?」

「そうそう! ちょっと前に隣駅の女子高の文化祭に行った時に仲良くなった女の子だよ。それで今までもその子とはちょこちょこ遊んでたんだけどさ、昨日の休みに意を決して告白してみたら無事にオッケーを貰えたんだ!」

「へぇ、そうなんだ! はは、それはめっちゃ良いなー! おめでとう倉持! それじゃあこれからは彼女さんの事をしっかりと大切にしてあげろよ」

「あぁ、もちろんだよ! ありがとな、冴木!」


 俺がそう言って全力で倉持の事を祝福していくと、倉持は嬉しそうな笑みを浮かべながらそう返事を返していった。


「いやー、でも冴木ってあれだよな、本当に良い奴だよな! 休みの日に俺に合いそうな服を一緒に買いに行ってくれたり、デートプランとかも一緒に考えてくれたじゃん? それで実際に付き合う事が出来たらこうやって全力で祝福してくれるなんてマジで良い奴過ぎるって!」

「いやそんなの当たり前だろ。倉持みたいに頑張ってる奴は大好きだから、俺も全力で応援したいし手伝える事は何でもしたいって思っただけさ。だからこそ付き合えたっていう報告を聞けてめっちゃ嬉しいよ。本当におめでとう」


 俺は頑張らない人間の事は大嫌いだけど、少しでも前に進もうと頑張ったり努力しようとしてる友達は大好きだし全力で応援だってしたくなるんだ。だからこそ俺は倉持の恋愛相談を親身になって行っていたわけだ。


「冴木……お前、顔も良くて性格も良いとかマジでイケメン過ぎるだろ! 冴木がもしも女子だったら俺絶対に惚れてたわー!」

「あはは、そりゃあ倉持の彼女さんに悪いから全力で振っておくわ。悪いな、だから彼女さんと仲良くしてくれよ?」

「そっかそっか。そりゃあ残念だなー。あぁ、でも本当にありがとな、冴木。この恩は一生忘れないぜ!」

「別にそんな恩に感じなくて良いんだけどさ。まぁ、でもそれじゃあいつか倍返しで恩を返してくれる事を期待してるな」

「あぁ、任せておけって!」


 俺達はそう言ってお互いに笑い合っていった。やっぱり倉持は気の合う良い友達だな。倉持と一番最初に友達になれて本当に良かった。


「……あ、そうだ! そういえば冴木も東京に引越してきてだいぶ日にち経ってきたよな?」

「ん? あぁ、そうだな。もうそろそろ三ヶ月くらいは経つかな?」

「だよな! それじゃあ冴木もそろそろ彼女とか欲しいんじゃないか? 良かったら俺の彼女に誰かフリーの女の子の紹介とかお願いしてみようか? 彼女は女子高だから男子との出会いがあんまり無いらしくてさ、だから可愛くてフリーの女子がいっぱいいるらしいぞ?」

「へぇ、そうなんだ?」


 倉持は笑みを浮かべながらそんな提案を俺にしてきてくれた。可愛くてフリーの女の子を紹介してくれるなんて、それは思春期の男子高校生にとっては最高峰に嬉しい提案だ。まぁでも……。


「うーん、それはめっちゃありがたい提案だけど……でもすまん。今俺は普通に好きな女の子がいるんだ。だから女の子の紹介とかはしなくて大丈夫だよ」

「あ、そうなのか? あぁ、わかったよ。ってか冴木も好きないつの間にか好きな女子とか出来てたんだな?」

「はは、そりゃあ俺にも好きな女の子くらいいるさ。俺だって倉持と同じで遊びたい盛りの男子高校生なんだぜ?」


 俺は笑いながら倉持にそう言っていった。まぁやっぱり男子高校生たるもの彼女と一緒に遊ぶ事が一番の青春だしな。


「はは、それもそっか。あ、ちなみに冴木の好きな女子って誰なんだ? 俺の知っている女子なのか?」

「え? あー……まぁとりあえず今は秘密って事にしといても良いか? ちゃんといつか必ず報告するからさ」

「あぁ、わかった。まぁ好きな女子を言うのって気恥ずかしいもんだしな。それじゃあ俺に何か手伝える事とかあったらいつでも気軽に言ってくれよ? 冴木のためなら何だって協力するからさ!」

「あぁ、ありがとな、倉持。それじゃあ困った事があったら頼りにさせて貰うよ」


 そう言って俺は改めて倉持に向かって感謝の言葉を伝えていった。やっぱり本当に良い奴だよな、倉持ってさ。


 という事でその後は授業が始まるまで倉持と他愛無い話をしながら朝の時間を過ごしていった。

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