第17話:朝に桜からお弁当を渡される(悠斗視点)
とある日の朝。
「はい、これ。今日のお弁当」
「ん、ありがと、桜」
今日もいつも通り桜からお弁当を受け取ってから一緒に登校していっていた。すると桜はニヤニヤと笑いながらこんな事を言い始めていった。
「ふふん、今日のお弁当は本当に良い出来だからね! ま、楽しみにしてなさいよー?」
「あはは、何で今日はそんな強気なんだよ? ってか、いつもそんな事を言ってるけどそこまで美味しかった試し無いぜ?」
「は、はぁ!? いや今日は本当に美味しいって思って貰える自信があるんだから絶対に楽しみにしてなさいよ!」
桜は自信満々の笑みを浮かべながらそんな事を言ってきた。それに何だかちょっとだけドヤ顔を決めてて可愛くも見えた。
「あ、それじゃあ今日はお昼は何処で食べよっか? いつも通り教室にで良い?」
「うん、そうだな……って、あ、そうだ。そういえば今日はお昼休みに男子バスケ部のミーティングがある日だったわ」
「え、そうなの?」
そういえば昨日の夜にバスケ部のグループLIMEにミーティング開催の連絡が来てたんだっけか。危ない危ない、すっかりと忘れる所だった。
「あぁ、そうなんだよ。だから今日は昼休みが始まったらすぐに部室棟に向かう事にするわ。それでミーティングが終わったらそのまま部室で昼飯を食うから、今日はお互いに別で昼飯を食おうぜ」
「うん、わかった。それじゃあお昼ご飯を食べ終わったらいつも通りお弁当箱は返してね」
「あぁ、了解」
「あ、それと……今日のお弁当の感想もちゃんと聞かせて貰うからね?」
「はは、わかったわかった。まぁ自信満々な理由は全然わからないけど、でもどうせいつも通り味の薄い弁当だろ?」
「ふふん、それはどうかしらねー?」
という事で俺達はお弁当についての話で盛り上がりながら学校へと向かって歩いて行った。
◇◇◇◇
それから数時間後のお昼休み。
「お疲れさまー」
「あ、川崎先輩! お疲れ様です!」
俺はお弁当を入れた学生鞄を持って男子バスケ部の部室にやって来ると、そこには一番仲の良い後輩である
薮下は俺と同じ中学出身の男子生徒で、中学の頃から一緒の男子バスケ部に所属していたんだ。
「おっす、薮下。いつも通りめっちゃ早いなー。あ、隣座っても良いか?」
「はい! 大丈夫っす! お隣どうぞです!」
薮下は中学の頃に俺がバスケ部の先輩として教育係をしていた事もあって、今でも薮下は俺の事をかなり慕ってくれていた。
そしてもちろんそんな薮下とは今までに何度も遊んだりしてきていたので、俺にとっても薮下はかなり仲の良い弟分的な存在だった。
「あぁ、ありがとな。それじゃあ……よっと」
という事で俺は薮下にそんな挨拶をしてから隣の席に座っていった。席に座ってから辺りを見渡してみたんだけど、薮下以外はまだ誰も来ていないようだ。
なので俺は薮下と雑談をしながらミーティングが始まるまでの時間を潰す事にした。
「あ、そういえばさ、今日のミーティングってどんな話をするんだっけか?」
「はい、確か部費が下りたので備品購入を誰が行くか決めるっていう話と、あとは文化祭の出し物をそろそろ決めようっていう話の二つですね!」
「そっかそっか。ま、それだけなら今日のミーティングはすぐに終わりそうだなー」
いつもならもっとたくさんの議題があるんだけど、今日の議題はたったの二つだけならすぐにミーティングは終わってくれそうだな。
「はい、そうですね! これなら早く昼ご飯を食べに学食に行けそうで良かったです! ってかさっきまで体育だったんでもう腹ペコだから早く飯食いたいっすよ! 学食の大盛カレーを早く食いに行きたいなー!」
「あぁ、確かに学食のカレーってめっちゃボリュームあって最高に旨いよなー。俺もめっちゃ好きだよ」
「あはは、マジでめっちゃ旨いっすよね! しかもトッピングの豚カツとか温泉卵とかもめっちゃ旨くて自分好みにカスタマイズ出来るのも最高っすよね!」
「あっ、わかるわかる! 俺も時々学食行く時はいつも豚カツをトッピングした大盛カレーを頼んでるよ!」
という事で俺達はそんな学食についての話でどんどん盛り上がっていった。でもそんな話をしていると当然だけど……。
「あー、でも何かそんな話してたら俺も久々に学食のカレーが食いたくなってきたわ……」
「あはは、いやマジでここの学食カレーは毎日食っても全然飽きないくらい旨いっすからね! だから先輩が学食カレーの話をしてるだけで食べたくなっちゃう気持ちはわかるっすよ!」
「あぁ、そうだよな……よし、それじゃあミーティングが終わったら一緒に食堂に行ってカレー食いに行こうぜ!」
「あ、マジっすか!? はい、是非とも一緒に行きたいっす!」
薮下とそんな話をしていたら急激に学食のカレーが食いたくなってきた。いやここの学食のカレーってめっちゃ味濃くてマジで最高に旨いんだよなぁ。
「あ、でも……そういえば川崎先輩って彼女さんからのお弁当をいつも貰ってるんじゃなかったでしたっけ?」
「え? ……って、あぁ、もしかして桜の事か? あはは、そんなん気にしなくて大丈夫だよ。ってかそもそもアイツは彼女でも何でもないからな?」
「え、そうなんですか? でもいつもバスケの部活中に水島先輩とめっちゃ仲良く話とかしてるじゃないっすか?」
「はは、それはまぁ仲の良い幼馴染だからな。ま、でも付き合ってる訳じゃないから薮下はそんなの気にしなくても良いぞ。ってかアイツの作る飯って味しなくてマズイからさー……だから俺だってたまには学食の旨いカレーが食いてぇんだよ! だから薮下もそんな俺のために今日は一緒に学食に付き合ってくれよ! その代わりに今日は何でも奢ってやるからよ!」
「え、マジっすか!? あはは、それはめっちゃ嬉しいっす! あざっす!」
という事で俺は先輩風を吹かせて薮下に向けてそんな事を言っていった。まぁでも……。
(うーん、でも桜から貰ったお弁当はどうすっかなぁ……)
もう俺の口の中は完全に学食のカレーを食いたい口になってしまっている。そして学食の大盛カツカレーを食ってから桜のお弁当をさらに食うのは流石に無理だ。だからこのお弁当の処理をどうすれば……。
(……ま、でもあれか、部室から出る時にゴミ箱の中に捨てちゃえばいっか)
何だか今日の桜は物凄く自信満々にしてたけど、まぁでもどうせいつも通りの弁当だろうし、別に食わなくてもいいよな。桜にはテキトーに旨かったって誤魔化しとけば大丈夫だろ。
「あ、それじゃあミーティング始まるまで少し時間かかりそうなんでちょっとトイレ行ってきますね!」
「ん、あぁ、わかった。行ってら」
「はい!」
薮下はそう言って部室から出て行った。という事で今の部室には俺一人だけという状態になった。これは好都合だな。
「よし、それじゃあ……他の男子部員が来る前にお弁当の中身を処理していくとするかな」
俺はそう言いながら桜に手渡されたお弁当を鞄から取り出していき、そのまま蓋を開けて中身を全てゴミ箱の中に捨てていった。
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