第13話:誕生日プレゼントを渡していく(桜視点)

 とある土曜日の朝。


 今日は待ちに待った悠斗の誕生日だ。


「はい、これ。誕生日おめでとう」

「お、サンキュー」


 という事で私はいつも通り悠斗のご飯を作るために悠斗の家にお邪魔していたんだけど、ご飯を作る前に先に誕生日プレゼントを渡してあげる事にした。


 もちろん誕生日プレゼントは少し前に佐伯君と一緒に家電量販店で買ってきたあのキーホルダーだ。私はあのキーホルダーを綺麗にラッピングして悠斗に渡していった。


「でも桜って誕プレのセンス圧倒的に皆無だからなぁ。今回はちゃんと良い物入ってんのかよ??」

「う、うるさいわね。今回のプレゼントはかなり喜ぶ物を入れといてあげたわよ。ふふん、ビックリしすぎて腰を抜かすんじゃないわよ?」

「へぇ、自分からハードルを上げるなんて珍しいな? それじゃあどれどれ……って、えっ!? こ、これ……モンコレのアクリルキーホルダーじゃん! これどうしたんだよ!?」


 プレゼントの包みを開けていった悠斗は、その中身を見てかなり驚いたような声を上げてきた。


「ほら、悠斗って昔からそのゲーム好きでしょ? だからそのゲーム関連のキーホルダーとか好きかなって思って買ってきたのよ」

「あぁ、子供の頃から大好きだよ! いやマジで凄いじゃん桜! 今まで貰ってきた誕プレの中でもマジで一番嬉しいよ! 本当にありがとな!」


 悠斗はそう言って満面の笑みを私に見せてきた。どうやら本当に嬉しがっているようだ。


「ふふ、それだけ喜んでくれるのなら良かったわよ。それじゃあちゃんと大切にしてよね?」

「あぁ、もちろんわかってるよ。それじゃあ一番使うスマホに取り付けておくとするかな」


 そう言って悠斗はスマホのカバーにモンコレのキーホルダーを取り付けていった。


「いやそれにしてもこのキーホルダーのデザイン凄く良いなー! ってか、こんな良い物を買ってきてくれるなんて今回の桜はセンスめっちゃ良すぎだろ! いつも変な誕プレばっかりなのに急にどうしたんだよ??」

「ふふん、たまには私も良いプレゼントを渡せるって事よ。あ、それじゃあ私の誕生日プレゼントも期待してるからね?」

「はは、もちろんわかってるよ。マジで良い物プレゼントしてやるから期待しとけよ」


 という事で私達はお互いに笑い合いながらそんな話をしていった。ふふ、これは私の誕生日プレゼントも楽しみだ。


◇◇◇◇


 それからしばらく経過した頃。


 私はいつも通り悠斗にお昼ご飯を作ってあげていっている所だ。


 まぁ今日は悠斗が誕生日という事なので、お昼ご飯には悠斗の好物を沢山作ってあげる事にした。


「よし、お昼ご飯の準備出来たよー」

「あぁ、わかったー。今すぐ行くよー」


 料理を作り終えた私はテーブルの上に料理を並べながら悠斗を呼んでいった。するとテレビを見ていた悠斗はテレビを見るのをやめてすぐにテーブルに座ってきてくれた。


「よし、それじゃあ、いただきます」

「いただきまーす」


 という事で私達は手を合わせてから一緒にお昼ご飯を食べ始めていった。


「どう? 今日の料理は美味しい?」

「んー、まぁそこそこって感じかな? ま、いつもの薄味の料理に比べたら遥かに美味しいけど」

「いや、だからいつも言ってるけどあの味付けでちょうど良いんだからね? というかいつも悠斗は私の料理は味が薄いって言ってるけどさ……ひょっとして悠斗の舌ってちょっとおかしいんじゃないのかなー? くすくす」

「は、はぁっ? いやいや俺の舌がおかしいんじゃなくて、絶対に桜の舌がおかしいんだって! マジで桜の料理は誰が食っても絶対に味薄いって言うからな!」

「いや絶対に味薄いなんて事はないわよ! っていうかそんな事ばっかり言ってるともう二度と悠斗にご飯なんて作ってあげないわよ?」

「えっ!? い、いやそれは困るって! マジでごめん! 桜の料理は世界一美味しいからこれからも作ってくれって!」


 私は頬を膨らませながらそう言っていくと悠斗は慌てて私に謝ってきた。


「ふふん、わかれば良いのよわかれば。それじゃあこれからも優しい私が悠斗のために世界一美味しいご飯を作ってあげるわよ。だから嬉しく思いなさいよ?」

「あ、あぁ、わかってるよ。はは、いやそれにしてもさー、せっかく俺の誕生日だっていうのに、何だか俺達っていつも通りだよな」


 ふいに悠斗は笑いながらそんな事を言ってきた。


「ふふ、確かにそうね……って、いや、というか何で私達は高校二年生にもなって未だにお互いに煽ったり煽られたりの生活を送ってるのよ?? 小学生の頃からちっとも変わってないじゃないのよ」

「あはは、いやマジで全く持ってその通りだよなー。だからもっと大人になった方がいいぞ、桜さん?」

「いやその言葉はそっくりそのままアンタに返すわよ、悠斗くん?」


 そんな感じで今日も私達はお互いに煽り合いながら楽しくご飯を食べ進めていった。


「いやー、でも本当に今年の誕プレはめっちゃ嬉しいよ。ありがとな桜」

「ふふ、別に良いわよ。あ、でも……そう言えば去年の誕生日にあげたペンはちゃんと使ってくれてるの?」

「……え?」


 ふと私はそれがちょっと気になったので悠斗に尋ねてみた。


 私は去年の誕生日プレゼントに少し高めのペンを悠斗に買ってあげたんだけど……でもそういえば悠斗があのペンを使っている所を私はまだ一度も見ていなかった。


「えって……どうしたのよ?」

「あ、あぁ、えぇっと……いやすまん。実はあのペンさ……無くしちゃったんだよな……」

「……えっ?」


 私はその言葉の意味を理解する事が出来ずに一瞬言葉を詰まらせていってしまった。だって私があげた誕生日プレゼントを無くしてるだなんて思いもしなかったから……。


「い、いや……何で無くしちゃったのよ?」

「え、えっと……いや実はさ、前に部屋の掃除をしてた時に整理整頓も兼ねて使ってない物をどんどんと捨てていったんだけど……そん時に使ってなかった筆記用具もあらかた全部捨てちゃったんだ。それでその時に間違えて桜から貰ったペンも一緒に捨てちゃったんだよな、あ、あははー……」

「あ、あははって……いや何してんのよ……何で人から貰ったプレゼントを捨てちゃうのよ……」

「い、いやだから本当に悪かったって! 代わりに今回の誕生日プレゼントはマジで一生大切にするから! だ、だからその……本当にすまん!! 今回だけは許してくれ!!」


 そう言って悠斗は私に向かって頭を下げてきた。


 私は誕生日プレゼントを捨てられていたという事実を知ってそれなりに大きなショックを受けたんだけど……でもまぁ今日は悠斗の誕生日だし、そんな特別な日に怒るのは可哀そうだと思ったので、今回だけは仕方なく許してあげる事にした。


「……はぁ、全くもう。わかったわよ。それじゃあ今回は許してあげるけど……でも次はないからね? ちゃんと大切にするって約束よ?」

「あ、あぁ、わかってるって! 俺が約束を破った事なんて一度もないだろ?」

「いや無限にあるわよ。ちょっと前だって晩御飯の要らない時は事前に連絡するっていう約束を破ったじゃないのよ、はは……」

「あはは、確かに言われてみればそうだなー」


 という事で誕生日に怒りたくないと思った私はハハっと愛想笑いを浮かべていくと、悠斗もつられて笑ってきた。まぁ今日は誕生日だしね……。

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