第12話:長蛇の列を並んでようやくプレゼントを購入する

 という事で俺達は家電量販店の待機列に並び始めていった。


「これだけ長蛇の行列だと商品を買うのには2~3時間くらいかかりそうだね」

「うん、そうだね。いや軽い気持ちで冴木君に誕生日プレゼントを買うのを手伝って欲しいって言っちゃたんだけど、こんな長時間も付き合わせちゃう事になるなんて流石に申し訳ないよ……」

「はは、そんなの全然気にしないでいいよ。だって俺達は友達同士なんだからさ、こんなの幾らでも付き合うって。それに2~3時間程度の時間なんて水島さんと一緒なら雑談をしてるだけですぐに時間が経っちゃうから問題ないよ」


 俺は申し訳なさそうな表情をしている水島さんに向けて笑みを浮かべながらそう言っていった。すると水島さんはちょっとだけ笑みを浮かべてきてくれた。


「あ、確かにそう言われてみればそうだよね! ふふ、そういえば私達っていつも全然会話が途切れないもんね」

「そうそう! いや本当に水島さんの話がいつも楽しくてついつい長時間話しちゃいたくなるんだよねー」


 毎週土日に一緒にランニングをしているおかげで、俺は水島さんとはもう何時間でも他愛無い話が出来る程の仲にまでなっていた。だから今俺が水島さんに言った言葉は全部本心から出た言葉だ。


「ふふ、そっかそっかー。いやそう言ってくれるのは嬉しいなぁ。でも私だってさ、冴木君がいつも私の話を楽しそうに聞いてくれるから……だから私も冴木君と話しててすっごく楽しいんだよね!」

「はは、水島さんにそう言って貰えるのは嬉しいな。それじゃあこれからも沢山話していこうね?」

「うん、わかった! あ、それじゃあ早速今日もたっぷりと雑談相手をよろしくね!」

「うん、もちろんだよ」


 という事でそれから家電量販店が開くまでの間、俺は水島さんと楽しく雑談をしながら過ごしていった。


◇◇◇◇


 それから三十分くらいが経過した頃。


「……あ、そうだ。そういえば凄く今更なんだけどさ、今日買いに来た新商品って一体何なの?」


 水島さんと雑談をしていた時、ふと水島さんはそんな事を尋ねてきた。そういえばまだ水島さんに何を買いに来たのかの説明をしていなかった。


「あぁ、そういえば言うのをすっかり忘れてたね。今日買いに来た新商品はモンコレのアクリルキーホルダーだよ。この商品は今回が第三弾目らしいんだけど、第一弾、第二弾ともに初日に売り切れになる程の人気商品らしいよ」

「へぇ、そんなに人気な商品なんだ。うんうん、それはちょっと楽しみだね!」


 俺がそう言っていくと水島さんは楽しそうにしながら顔を頷いてきてくれた。


「はは、そうだね。それで詳しい内容についてだけど、価格は1個3000円のキーホルダーで中身はランダム封入になっているんだ。値段はちょっと高めに設定されているんだけど、でもその分クオリティが相当に高いらしいんだ」

「へぇ、そうなんだ。でもランダムで封入されてるなんて……何というかガチャガチャとかカードパックみたいな感じなんだね?」

「そうそう。でもそのランダム封入っていうのもコレクターの射幸心を煽るらしくて、それも相まって凄い人気商品になっているんだってさ」

「あぁ、なるほどねー。うーん、でも1個3000円もするんじゃあ……私は1個だけしか買えないわね。流石にバイトとかしてないから2個以上はお財布事情的にもちょっとね……」

「んー、まぁでも値段相応にクオリティは高いらしいから1個でも買えれば十分じゃないかな? それに今回のキーホルダーのラインナップは全部人気モンスターに統一されているから、多分どれが当たってもきっと川崎なら喜んでくれるはずだよ」

「なるほどね、うん、わかったよ。ふふ、まぁでも、せっかくなら悠斗の一番の好きなモンスターのキーホルダーを当てていきたいなー」

「はは、そうだね。応援してるよ」


 という事で俺は水島さんの応援をしていきながらも、それからも俺達はひたすらと他愛無い話を続けていった。


◇◇◇◇


 それから三時間後。


「ふぅ、ようやく買えたわね」

「はは、本当にお疲れさま」


 俺達はちょうど家電量販店から出てきた所だった。俺は商品を買わなかったので、水島さんの手にだけ購入してきたビニール袋を持っている状態だ。


「よし、それじゃあ早速開けてみようかなー!」

「うん、せっかくだし良いのが当たると良いね」

「うん、ありがとう! それじゃあ行くよー! ……って、あれ? 何だか物凄く可愛いモンスターだね?」


 水島さんは早速商品の箱を開けて中身を開封していくと、中からはとても可愛らしいモンスターのキーホルダーが出てきた。そしてそのモンスターとは……。


「あっ、凄いじゃん水島さん! そのモンスターは今回のシークレットレア枠だよ!」

「えっ? シークレットレアって?」

「あぁ、えっとね。さっきこの商品はランダム封入っていう話をしたと思うんだけど、その中でもさらに封入率が下げられているシークレットレアのモンスター枠が一体だけいるんだ。それが今水島さんが当てたモンスターだよ」

「えっ!? そ、そうなの!?」

「うん、そうなんだ。しかもそのモンスターってめっちゃ可愛くて相当に人気あるやつだから、多分マニアの間でも高値で取引されてると思うよ。あ、ちょっとだけ待ってね」

「え? う、うん……?」


 そう言って俺はポケットからスマホを取り出して一番有名なフリマサイトを開いていった。


 そして俺は今水島さんが買ってきたキーホルダーの商品名を打ち込んでいくと、今日発売にも関わらずモンコレのアクリルキーホルダーが既に沢山売られていた。


 そしてどれも販売価格の三千円をゆうに超えた価格で売られているんだけど、中でも水島さんが当てたそのシークレットレアのキーホルダーは……。


「……あ、見つけた! ほら、見てよこれ、今水島さんが当てたそのキーホルダーの価格だけどさ……」

「う、うん、どれどれ……って、えぇええっ!? こ、これ1つで2万円以上の値段がついてるの!?」

「うん、それだけめっちゃ人気のモンスターだって事なんだよ。でもたった1個だけしか商品を買ってないのにピンポイントでシークレットレアを引き当てれるなんて水島さんは物凄い豪運の持ち主だね! これならきっと川崎もめっちゃ喜んでくれると思うよ!」

「う、うん、そうだね! これできっと……悠斗も喜んでくれるよね! 本当にありがとう冴木君!」


 そう言って水島さんはとても嬉しそうに満面の笑みを浮かべてきてくれた。ま、とりあえずこれで今日のミッションは無事に完了かな。


 という事でその後はお互いにお腹も空いてきたので、駅前の近くにあったファミレスでお昼ご飯を食べてから今日は解散となった。

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