第8話:水島さんとランニングをしていく

 それから数日後の土曜日の朝。


「おはよう、冴木君!」

「あぁ、うん、おはよう、水島さん」


 押野公園の入り口付近にあるベンチ前で待機してると、待ち合わせ時刻の10分前に水島さんがやってきた。


「あ、もしかして結構待っちゃったかな?」

「ううん、俺もさっき来た所だよ」


 水島さんが心配そうにそう尋ねてきたので、俺は笑みを浮かべながらついさっき来た所だと言っておいた。


「そっか、それなら良かったよ。うん、それじゃあ今日は頑張って行こうね!」

「うん、わかったよ!」


 水島さんは俺の言葉を聞いてホッと安堵しながらも元気な声でそう言ってきた。なので俺も水島さんの言葉に呼応していった。いや、それにしても……。


(うーん、いやそれにしてもやっぱり水島さんって細くて健康的な身体付きをしてるよなぁ……)


 今日の水島さんの服装は上は伸縮性抜群のトレーニングパーカーで、下はレギンス付きのショートパンツを履いていた。どちらも吸汗性がとても良さそうだ。


 そして上下ともにピッタリ目の服装なので、水島さんの身体のシルエットがいつも以上にはっきりと見えてしまう状態になっていた。


 うん、これはきっと毎日規則正しい生活を送って、運動もしっかりしてるからこそこんなにもスラっとした健康的な身体をしてるんだろうな。


(……というかさ、これの何処が図体のデカいゴリラ女なんだよ??)


 水島さんはこんなにもスラっとしているのに何で川崎はいつもあんな酷い事を言ってるんだろうな? 普通に水島さんって綺麗なモデル体型じゃん。


「……? どうかしたの冴木君?」

「ん? あぁ、いや、何でもないよ」


 そんな事を思いながら水島さんの恰好をジっと眺めていると、水島さんはキョトンとした表情で俺の事を見てきた。なので俺は何でもないと言って咄嗟に誤魔化していった。


「よし、それじゃあ無事に集合も出来たし、早速ランニングをしていこうか」

「うん、そうだね。それじゃあ改めて今日はよろしくね!」

「うん、こちらこそ!」


 そう言って俺達はしっかりと準備体操をしてからランニングを始めていった。


◇◇◇◇


 それから一時間程が経過した頃。


「はぁ、はぁ……ふぅ。流石にちょっと疲れちゃったな」

「ふふ、お疲れさま、冴木君」


 ランニングを終えた俺達は近くの芝生に座り込みながら休憩をしていく事にした。


「はいこれ。水分補給はしっかりとしないとだよ」

「え? あぁ、ありがと、水島さん」


 水島さんはそう言って近くの自販機で買ってきたスポーツ飲料を俺に手渡してきてくれた。


「あ、それじゃあお金を渡さないとだね。いくらだった?」

「あぁ、いいよいいよ。ほら、前に冴木君にはココアを奢ってくれたでしょ? だから今日は私に奢らせてよ。それに今日は冴木君と一緒にランニングが出来て嬉しかったしさ」

「そっか。うん、わかった。それじゃあ御言葉に甘えさせて貰うよ。本当にありがとう!」

「うん! よし、それじゃあ一休みをしていこっかー」


 という事で俺達は芝生に座ったままスポーツ飲料を飲みながら休憩を始めていった。


「んく、んく……ぷはぁ。いやそれにしても水島さんは全然息が乱れてないね」

「んく、んく……ん? ふふ、そりゃあだって私はバスケ部だもん。これくらいで息は乱れたりなんてしないわよー」

「はは、流石だね。確かバスケって一試合40分なんだっけ? でもそれだけの長時間をずっと全力疾走しなきゃいけないんだから、バスケ部って本当に凄いよね」

「あはは、そんな凄いなんて事は全然ないよー。あ、そういえば冴木君はこっちに転校してきてからは部活にはまだ入ってないよね? 何か部活には入らないの?」


 バスケ部についての話をしていると水島さんから部活には入らないのかと尋ねられていった。


「うーん、いや実は今は結構平日にバイトを入れちゃってるから、部活に入ったとしてもあまり参加出来そうにもないんだよね。それに二年の途中で部活に入っても三年生になったらすぐに引退する事になるし、それなら入らなくてもいいかなって思ってね」

「あ、なるほどー、確かに今の時期に部活に入ってもそこまでしっかりと部活動に励めないもんね」


 俺がそんな事を言っていくと水島さんは納得したように頷いてきてくれた。


「うん、そうなんだよねー。でもさ、今日は初めてランニングをやってみたけど、これは本当に凄く気持ち良いね! 部活は入れないけど運動はしたいってずっと思ってたからさ、だからこれからもランニングはずっと続けてみたいな」

「えっ!? ほ、本当に?」

「うん、もちろん本当だよ。だからさ、良かったらこれからも水島さんと一緒にランニングをしていきたいんだけど……また一緒に水島さんと走っても良いかな?」

「うんうん! そんなのもちろん良いに決まってるよー! 私も一緒に走ってくれる友達が出来て本当にすっごく嬉しいしさ!」


 という事で俺は水島さんにこれからも一緒にランニングをしていきたいと言うと、水島さんは二つ返事でオッケーを出してきてくれた。


「はは、それなら良かった! あ、それじゃあ水島さんって毎週土日はこの公園でランニングをしてるんだよね? それじゃあ明日も一緒に走っても良いかな?」

「あはは、もちろん良いに決まってるじゃん! それじゃあ明日も同じ時間に同じ場所集合で良いかな?」

「うん、了解。それじゃあ明日もよろしくね、水島さん」

「うん、こちらこそだよ、冴木君!」


 という事でこれから毎週土日の朝は水島さんと一緒にランニングをする事になった。


(はは、水島さんと仲良くなりたい俺としてはこれで毎日水島さんと会える事になるから最高のプランになったな)


 よし、それじゃあこれからも水島さんと仲良くなっていけるように頑張っていこう。

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