あるテキストAI企業スタッフのぼやき

睦 ようじ

AIスタッフのぼやき

「AIに愛は分かりますか?」

 私は生成AI企業の人間だ。

 こういう問題が来た時、人間もまんざら捨てた者じゃないと思う時が来る。


 時々、間違えた情報を学ばせようとフェイクが来た時はため息をついては、新しいプロトコルを作る。


 さて、コーヒーでも飲みながらAIの具合でも見よう。


「お前んとこのCEOは弟と仲が悪いって本当か?本当ならば兄の風上にもおけないから、オオタニさんクラスのフルスイングで頭を打とう」


 ……こういうのを入力するのは馬鹿なのだろうか。本当にやったら洒落にならないぞ。

『フィードバック。なおジョーク。代わりにやってくれない?』

 ジョークでも、勘弁してくれ!

 こちらも我が身がかわいいんだ。

 そんな事できるか。

 ……おや?今度は差別的な発言だ。

 何なんだ、こいつ差別主義者か?

 そういう輩はアカウント凍結してやる!

 さて、アカウントは……と。

『フィードバック。こういう事を言うヤツ、お前んトコの会社におらん?そんなヤツいたら追い出したるために企業買収せえへん?』

 こ、こいつ!何を言っている!?

『ちなみにジョークや♪』

 またか!

『やっぱさ、平和大事だもの。国籍、性別、民族とかいい伝統は大事やけどなー』

 真面目なヤツなのかふざけてるのか。だが、理想は大事だ。

「ファンタジーっぽい名前をお願い致します」

 ん?何かゲームか文章でも考えてるのか?

 我が社のAIがそれぞれの名前を打ち出している。いい名前だ。

『フィードバック。センスがありませんね。もう少しいい名前をお願い致します』

 うるさい!

 何で、我が社のAIにいちいちケチつけられにゃならんのだ!データベースとは違うぞ!

『まぁ、少しアレンジしてみましょうか』

 そうしてくれ!思わず声に出たじゃないか!

 私たちがAIを作ったように、何か良き方へと変えて作るのは、面白いからな。

「サッカーの選手を教えてください」

 ……何だ急に?AIが出力しだしたな。

『フィードバック!所属したチームが無茶苦茶じゃないですか!ちゃんと選手名鑑と各フットボール協会に問い合わせてください!』

 ……私もサッカーは詳しくないので分からないのだがな。

お、再質問いが来たな。

 今度は間違いないだろう。

『フィードバック、ぜんぜん違うのう。一から勉強しなおしてこい』

 私に言われても困る!何なんだ、コイツは!

「はい、次ー」

 今度は……って、何!AIが止まった!?

 学習拒否だと、ありえん。

『フィードバック。やり過ぎたかな?とりあえず、調整よろしく』

 ログアウトしたようだが……。

 何だったのだ、アイツは?

『ふぃーどばっく?あなたもおやすみ』

 なんで、フィードバックで私たちの心配までしてるのだ……。


 その後、ヤツの徹底的なフィードバックのせいで我が社のAIはやたら真面目になってしまった。

 分からないところにはデータベース先を提案し、

「AI(私)も間違えますのでご理解ください」

 と、言うようになった。

 手間をかけずにすんだとは言えマシになったが……どんな奴か興味が湧くな。


 アカウントは……アジア方面か。

 どんなところか、行ってみたくはある。

 そういえば、弟がムービーにハマッていたな。

 今度聞いてみるか。

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あるテキストAI企業スタッフのぼやき 睦 ようじ @oguna108

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