第5話 暇な時は後輩がいればいい
「ふぁぁぁ〜〜」
タマはまだ眠い。だが、起きることにした。体を伸ばすと目が覚めていくような気がする。
それはそうと、久しぶりのお昼寝をしたのでなかなかに気分がいい。今ならなんでも出来そうな気分だ。どこかにお出かけでもしようかと思ったが、今は17時である。微妙な時間である。ご飯の支度をしてもいいが、タマにとって食事は娯楽と同じような物なので特段必要というわけでもない。やっぱり、めんどくさいのでやめることにした。
「ひまーーー」
返事が返って来るわけでもないが、とりあえず悲痛な叫びをあげてみた。返事が返ってきたら少しだけ怖いので、返事が返ってこないこともほんの少し願っていた。だからといって、返事が返ってこないのもこないで寂しいのである。もう、どうしたらいいのだろうか……。
しばらく、感傷に浸る事にした。
ほんと、ちょうど半端な時間に起きてしまったものだ。もう少し、遅ければ二度寝もかんがえたのだが。こんな日に怠惰を貪るのはなかなかに乙なもの。
1人鬼ごっこでもしようか。いや、虚しい。あまりにも虚しい。やめておこう。
何か、ゲームでもしようか。
すると、階段の方から誰かが上がってくるような足音がした。
「タマちーー。おいっすーー」
「ミノちゃんではないか!!」
この子は、生意気な後輩その3である。つまり、近くの神社で祀られているうちの1人である。この子がとにかく生意気でしょうがない。確かに、今は廃れているかもしれないが、格はこちらの方が上! なら、それそうおうの対応をしてくれても良いものを。しかも、一度指摘したことがあるのだが、なんと言ったと思う?
『タマちは、マスコット感あるからなんかそういう気になれないというか……なんというか……』
むきぃぃぃぃぃぃ!
解せぬ! まことに解せぬ!
まことに遺憾じゃぞ!!
「おーーい。タマちーー。おーーい。戻ってこーーい」
「あぁ、すまぬ」
「いいよ。いいよ」
「で、急にどうしたんじゃ?」
「ん?」
「いや、どうしてここに来たのかと思ってのう」
「理由が、無きゃ来ちゃダメなの?」
まるで意味がわからないといった顔で、正論を返されてしまった。この子は生意気ではあるけど、根はいい子なのでこういうとき本当に困る。正論で返されたら何も言えないじゃないか。
「ま、何もないってのは嘘なんだけど」
「おい」
先程までの、純情な気持ちを返せ。
全く、変な後輩を持つと大変である。全く、まったくもう。
「はい。これ」
「何じゃ?」
「開けてからのお楽しみ」
「悪い方のサプライズ系ではなかろうな?」
「いいからいいから、開けてみ」
恐る恐る開けることにした。この子のことだし、万が一のこともありうる。しない後悔より、して後悔だ。
よし行こう。
「ん。シュークリームか?」
「だよー。うちの宮司がくれたの」
「あの人か」
「そ。タマちと食べたくて持ってきたの」
正直驚いてる。いい意味で。ミノちゃんが、私にここまでの事をしてくれるとは思っていなかった。こういうのはだいたい、ミノちゃんと仲のいい3人と食べるものかと。
だからこそ、唖然としてしまう。
「良いのか?」
「ん?」
「あの3人の分は」
「あー。3人にはもう渡してるし、私はタマちと食べるって伝えてるから」
「あ、ありがとう」
「え? なんだって?」
「ありがとうじゃ!」
「もっと、誠意を込めて!」
「ありがとうございます!!」
「よろしい」
「じゃかましいわ!」
シュークリームをくれるのはありがたいが、さすがにこれは……。それとこれは別。
これが、なかったら素直にいい子だって認められるんだけどなぁ。こういうところあるから。まぁ、ミノちゃんらしいけど。
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