第4話 こんな大金を拝めるとは...
「………ごくり」
タマは抜き足差し足忍び足に乗っ取って、お賽銭箱に近づく。まるで、爆弾に近づく者達のようだ。
まぁ、無理もないのかもしれない。
あんな大金(タマ基準)を目にすれば誰だって動揺してしまう。
「こ、これは、あやつのお、お礼という事デイイノカナ」
誰がいるわけでもないのに聞いてみる。もちろん返事が返ってくるわけわないが。
しかし、先程から挙動不審だ。しかも、口調も戻っているような。ここで、豆知識だが、タマが『〜なのじゃ』のような老人のような口調を使用しているのは彼女曰く、威厳を保つためらしい。タマも一応、古株の神様にはなる。だが、見た目が幼く、時たまに見た目相応な行動をしてしまう事を自覚しているため少しでも威厳を保とうと必死なのである。
まぁ、そんな行動自体逆効果ではあるのは彼女には内緒だ。
閑話休題。
「んん! さ、さて、中を確認するかのう!」
彼女はお賽銭箱だけに意識を向ける。目からは真剣なのがひしひしと伝わってくる。
「お、おおおお! お札がある!!」
彼がお札を入れていたところを見ていたはずなのにお札がある事に驚くとは……。どれだけ、現実と夢の区別がついていなかったのか。
「……ごくり。え、えっと、ゼロが4個? だから、いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……万? んん??」
固まってしまった。微動だにしない。瞬きすらしない。目が見開いている。
それから10分後。
彼女が再起動した。目が瞬きを始める。それは何度も。あ、目を擦り始めた。どうやら、見間違いかもしれないと疑っている様子。いい加減、現実を見るべきだ。
「はぁぁぁぁぁぁ!? はぁぁぁぁ!?」
静かな神社に絶叫がまた響き渡る。再放送かな?
とにかく、彼女はそれはそれは驚いた。
あ、動き出したようだ。神社の中に入っていく。
神社の中には昔からある廃れてはいるが立派な祭壇がある。どうやら、そこにいくようだ。
祭壇にお金を飾っているようだ。
おっと、拝み始めた。
あなた、拝まれる側だよね?
「ありがたやー。ありがたやー」
なんとも、シュールな様子だ。苦笑い必須と言っても過言ではないだろうか。
どうやら、落ち着いたのか、お金を床に置き、その周りに正座して何やら呟き始めた。
「しかし、あやつはよくもまぁ、こんな大金を。1000円札が10枚じゃよな? 一体、駄菓子などいくら買えるのやら。あやつには感謝せねばならぬな。にしても、今のお札はこんな感じなんじゃな」
興味深そうにお札を観察している。何を隠そう、彼女の神社を訪れる者はほぼいない。おまけに、お賽銭などする者など更にいるわけがない。しかも、お札がお賽銭箱に入っていた事など、過去に1、2回あったくらいなのでそこら辺には疎いのだ。
しかし、一体いつまでお札を見ているのだろうか。飽きないのだろうか。お賽銭箱の前で格闘してる頃を合わせても、もう1時間半ほど経過してるはずだ。
「んーー。今は貯金に回しておくかのう。駄菓子も買いたいが、神社の備品も少しくらいは新しくしたいし」
そう言って、タマの目の前の空間が歪んだ。あれは、歪んだと言ったが、少々形容し難いさまだ。
タマはその空間(?)にお札を持った手ごと突っ込んだ。そして、そこから出された手にはお札は無かった。
どうやら、彼女の保存空間のようだ。
「さて、掃除でもするかのう」
そう言って、彼女は箒がある場所へと向かっていった。
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