第2話 突然訪れた幸運。タマ駄菓子屋に行く

 今日は久しぶりに、駄菓子屋に行こうと思っている。

 なんと、なんと、なんと!

 パンパカパーーン!

 そう、500円ほどだが、奉納してくれた者がいた!

 いやー、珍しい者もおるものだ!


 『そのお金を使って大丈夫か?』だって?

 ノー問題でーす。ぱちぱちぱち。なんたって、この神社は、管理している人はいないし、祀られてるのは何を隠そう私なのである! えっへん! だから、500円ぜーーんぶ使っても怒られないし、許されちゃう。えへへへ。嬉しくてたまりません。


 でも、こんなに喜んじゃうのも許して欲しいな。だって、3ヶ月ぶりだよ! そりゃあ、嬉しくなるよね!

 500円1回で全部使っちゃうのはもったいないから、計画的に買うよー! オーー!

 あ、フラグとか言われてる気がする。大丈夫だって〜。




「お出かけ〜♪ お出かけ〜♪ 今日は、駄菓子屋さーん♪」




 まずは、尻尾と狐見を隠す。と言っても、見えなくなるだけじゃ! そして、服を着替えて。お財布持って。




「よし。準備万端じゃ! では、ゆかん! 駄菓子屋さん!」




◇◇◇


「つ、着いたーー!!」


「あら、いらっしゃい。タマちゃん。久しぶりだねぇ」


「駄菓子屋のおばちゃん、久しぶり〜!」


「ふふふ。好きな物選ぶんだよ」


「はーーい! ど・れ・に・し・よ・う・か・な〜♪」




タマは鼻歌を歌いながら上機嫌でお菓子を選んでいく。まずは、自分が好きなものを何個か。でも、気をつけないといけないのが、買いすぎない事。計画的に! 計画的に!




「これとー。これは、うーん。買うかのぅ。うーん。1個ぐらい良いか! それと、これはうーん。ちょっと高いから今回は無しじゃ! うーん。これとこれじゃ。うんうん。これくらいにしておこう!」




 そう言って、決めた駄菓子を持っておばちゃんのところに行く。買い忘れた物はないか、駄菓子を確認しながら。

 よいしょよいしょと、駄菓子を入れたカゴを持つ少女は見てて微笑ましい。おばちゃんも心なしか表情が更に柔らかくなっているような。




「おばちゃん、これお願いします!」


「うん。ちょっと待っててね」


「わかった!!」



 キラキラした目で、袋に詰められていく駄菓子を見つめていた。おばちゃんは、値段を確認しながら、袋に詰めていく。




「はい。375円だよ」


「500円で!」


「はい。125円のお釣りだよ。気をつけて帰るんだよ!」


「はーーい!」




 お釣りを受け取ったタマは、急ぎ走りで帰路につく。心なしか軽やかな足取りだ。右手には駄菓子を入れたビニール袋を持っており、とても嬉しそうだ。




「早く、お家に帰るのじゃ!」




 そう言って、更に足取りは速くなった。どれだけ楽しみなのか。それは言うまでもないだろう。


 ここで、余談だがタマが暮らしている神社には、娯楽という娯楽がない。廃れているのはもちろん。電気すら通ってない。だから、テレビだとかゲームもない。それに、マンガや小説だってない。何にも、娯楽がないというわけではないが、時間をしっかり潰せるものはあまりない。だから、基本的に、寝たり、神社を掃除したりするしかないのだ。まぁ、神社の外にも出れはするが、祀られている者が長時間そこから離れるのもどうかと思う。だから、彼女にとっては駄菓子屋で駄菓子を買うことは何よりも楽しみなことなのだ。おまけに1年で、片手で数えれるくらいしかいけないのだ。そりゃあ、こんなに浮き足立つのも大目に見てもいいだろう。




「駄菓子〜♪ 駄菓子〜♪ 何から、食べようかな〜♪」




 そう言って袋の中身を見ながら考える。この量を1日で食べちゃうわけにもいかないから、何を食べるかはすごく迷う。

 チョコ系を食べるか、ガムを食べるか、グミを食べるか。

 チョコとガムは、一緒に食べると変な感じになるから注意だ。




「10円グミを食べるのじゃ!」


「ん〜。美味しいのぅ。体に染み渡るのじゃ〜」




 そう言って、蕩けたような顔を浮かべた。

 ほんとうに美味しそうだ。


 彼女が幸せそうで何より。

 廃れた神社で奉納した者は、偶然だったかもしれない。そして、知らず知らずのうちにタマを幸せにしていたということもまた偶然なのかもしれない。

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