第3話 やはり、お金は全てを解決する

 神社の後ろ側の茂みがガサガサガサと音を立てた。

 タマは、その茂みの音が気になり近づいてゆく。




「ぷはーーーー!! やっとでれたーーーー!!」


「うわーー!!」


「うわーー!!」




 頭に木の葉を付けた男性が出てきたかと思えばいきなり大きな声をあげるものだから、驚いて声を出してしまう。男性もその声に驚いて声をだした。

 2人は暫く、お互いの顔を見ながら目をパチパチとさせていた。

 すると男性が




「えーっと、ここがどこかわかりますか?」


「……。えっとじゃな、わしの神社じゃ。そこの階段をおりて暫く道を歩けば街があるぞ」


「ありがとうございます!!」


「いや、何、気にすることはない。それよりお主は、どうして、ここから出てきたんじゃ?」


「はい。ここら辺の調査というか、研究というか。とりあえず、山の中を探索してたら恥ずかしながら……道に迷ってしまいまして……はははっ……」




 面目ないという顔で苦笑いを浮かべる男性。タマもタマで少し呆れてはいるが、苦笑いで返す。

 しかし、この神社の裏山は広い。

 迷ったにしては、よくここまで来れたものだ。普通は遭難してもおかしくないんだが。そうなんですよ!

 にしても、運が良いのだろうか。




「して、大分歩いたのであろう。少し休憩していかぬか? お茶しか出せぬがどうじゃ?」


「ありがとうございます。もうクタクタで……。あなたは命の恩人だ!!」


「重い重い重い! そんな感謝するようなことではない! じゃから、命の恩人はやめよ!!」


「わかりました!」




 そう言って、敬礼のポーズをする男性。先程は、頼りない者かと思っていたが、案外お調子者のようだ。あと、気軽に命の恩人とか言われるのはごめん被りたい。照れくさいし、ちょっと重い。たかが、現在地と休息所を提供するだけではないか。




◇◇◇


「ほれ、お茶じゃ」


「ありがとうございま、アッツ!」


「……はぁ………」




 ほんと騒がしいやつじゃな。呆れてしまうわ。




「ふぅふぅふぅ」


「そうじゃそうじゃ。冷ましてからゆっくーーり飲むんじゃぞ! いいな!」


「はい! では、アッツ!」


「振りではないんじゃが!?」




 なんじゃコイツ(困惑)

 なんで、こうもお約束を守ってくるんじゃ!?

 ある意味、凄い才能じゃぞ。こやつ、ただ者ではないのではないか?(迷推理)




「したやけろしやした」


「こらー。舌出しながら喋るでない。行儀悪いぞ!」


「………ママァ!」




 もうダメじゃコイツ。終わっておる。解散じゃ解散。

 確かに、甲斐甲斐しく世話を焼いたやもしれん!

 じゃが、初対面相手に母親呼ばわりされるわしの気持ちを考えて欲しいのう。ほんとに……。

 これ以上、相手は疲れるから、早く帰って欲しいよ。

 ほんとに。




「さて、選ぶがよい。帰るか。記憶を消すか」


「ぶふぅぅぅぅぅ」


「きったな! お茶を吹くな! お茶を!」


「仕方ないじゃないですか! 急に変なこと言うから!」


「……す、すまんかった」




 流石に、今回はタマに非があった事を自認しているのか素直に食い下がった。まぁ、その表情はあまり納得はしていないようだが。




「でもまぁ、そろそろ帰ります」


「そうか! そうか!」


「そう言えば、ここって神社なんですよね?」


「そうじゃが?」


「わかりました」




 そう言って、荷物を背負って外に出ていく。神社の前まで来ると荷物をガサガサと探り始めた。そして、お財布を取り出し、何枚かのお札と小銭を奉納し始めた。




「??!???!!?」


「では、今日はお世話になりました」


「?? あ、あぁー?」




 そう言って階段を降りていった。

 タマは未だに先程の光景を理解していない。

 今も、目をパチパチさせている。


 そして、しばらくして




「は? はーーー!!!???」




 廃れた神社がある山の上からは絶叫が聞こえたとさ。

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