第5話

春の訪れとともに、真紀と葵は高校生活の終わりを迎えようとしていた。


卒業式の日、真紀と葵は袴姿で理沙の前に現れた。二人とも、初々しさの中に、大人びた美しさを感じさせる。


「江口先生、お世話になりました」

「本当にありがとうございました」


二人から感謝の言葉を受けた理沙は、感極まって涙を浮かべる。


「私こそ、二人に教えられることが多かったわ。この出会いに、心から感謝しているの」


互いに深く頭を下げ合う三人。ここまでの道のりを振り返れば、胸が熱くなる。


式後、理沙は二人を連れて校庭に出た。満開の桜の下、理沙は二人の門出を祝福する。


「真紀、葵、新しい世界へ羽ばたいていくのね。自分を信じて、前を向いて歩いていってほしい」


真紀と葵は、理沙の言葉に力強くうなずいた。


「看護師になって、たくさんの患者さんを助けていきたいです。母のためにも、自分の夢のためにも頑張ります」


真紀の瞳は、希望に満ちている。


「私は、父さんとの関係を大切にしながら、自分の人生を歩んでいきます。江口先生に教わったことを胸に、前を向いて」


葵の言葉には、強い決意が宿っている。


理沙は、二人の姿を見守りながら、自身の成長も感じずにはいられなかった。生徒と向き合う中で、理沙自身も一回りも二回りも大きくなったのだ。教師としても、一人の人間としても。


「私も、二人から勇気をもらったわ。これからも生徒たちと真摯に向き合い、共に成長していきたい」


理沙は、教師としての新たな決意を胸に刻んだ。


桜吹雪が三人の周りを舞う。真紀と葵は、理沙との別れを惜しみながらも、希望に満ちた表情で新しい一歩を踏み出した。


「江口先生、これからもよろしくお願いします!」

「先生のことは忘れません。私たちの心の中に、いつまでも」


二人の言葉に、理沙は笑顔で手を振る。


「二人の門出を、心からお祝いするわ。そして、これからも見守り続けています」


理沙の言葉に、真紀と葵は晴れやかな笑顔を見せた。桜の花びらが、三人の新たなスタートを祝福するように、優しく舞い落ちる。


生徒と教師、そして人と人との絆。理沙はその尊さを、生涯忘れないだろう。教壇に立つ喜び、生徒と共に成長する喜びを胸に、理沙は教師としての道を歩み続ける。


満開の桜の下、三人の物語が、新たな一歩を刻んだのだった。

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彼方の光 島原大知 @SHIMAHARA_DAICHI

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