第37話 約束の花
朝の光が柔らかく神社を照らす中、美鈴彩は境内の花壇に新しい花を植えていた。これは彼女が特別な意味を込めて選んだ花で、その花は「約束の花」と呼ばれる稀少な種類で、長い間、伝説として神社の文献に記されていた。
花を植え終えたとき、不意に風が吹き、花から軽やかな香りが広がった。その香りはやがて全境内を満たし、神秘的な雰囲気を漂わせた。彩が花の成長を見守る中、突然、時間がゆっくりと流れるような感覚に襲われ、彼女の前に一人の若い女性が現れた。
女性は清楚な着物を身に纏い、穏やかな微笑を浮かべていた。彼女は自らを「ユメ」と名乗り、約束の花にまつわる守護者であることを明かした。「美鈴彩さん、この花はあなたが真に大切に思うものを守る力を持っています。私はその力を見届けるために、時を越えてここに来ました。」
ユメは彩に、約束の花が特定の願いを叶える能力を持っていると説明した。しかし、その力を使うには、彩自身が何か大切なものを花に託す必要があると言った。彩は深く考え、神社とその訪れる人々の平和と幸福を願い、その思いを花に託した。
その夜、花から発する光が一層強くなり、その光は遠くまで届いた。翌朝、彩が花壇を見ると、驚くほどに花が豊かに咲き誇っており、境内には以前にも増して多くの人々が訪れていた。彼らはその花の美しさと不思議な力に引かれ、心から平和を感じ取っていたようだ。
ユメは彩のそばに再び現れ、「あなたの純粋な願いが花に力を与えました。これからもこの花は神社を守り、訪れる人々に幸せをもたらすでしょう。」と言い、満足そうに微笑んだ。
そして静かにユメは姿を消し、彩は再び一人となったが、彼女の心はこの奇跡によって大いに激励され、神社の守護者としての役割をより一層誇り高く感じていた。これからも、彼女は約束の花と共に、全ての訪れる人々に平和と幸福を届け続けることを誓った。
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