第2話 消えた賽銭
朝日が神社の石段に優しい光を投げかける中、美鈴彩は目を覚ました。昨夜の戦いがまだ夢のように感じられたが、その疲れは確かに彼女の体に残っていた。彩は朝の清掃を終えた後、祖父の墓前で手を合わせた。静かな祈りの時間は、彼女にとって一日の中で最も平穏な瞬間だった。
しかし、その平穏は長くは続かなかった。鉄矢と楓が急いで彼女のもとに駆け寄ってきた。
「彩さん、大変です! お賽銭が全部なくなっています!」楓が息を切らしながら報告した。
「どういうこと?」彩が急いで賽銭箱の場所へと向かった。確かに、いつも賽銭箱に入っているはずの硬貨が一枚もない。これはただ事ではなかった。彩の変身に必要な10円玉が盗まれたのだ。
「昨晩、何か変わったことはありましたか?」彩が二人に尋ねた。
「何も変わったことはありませんでしたが、夜中に何度か奇妙な音が聞こえたような気がします。」鉄矢が答えた。
彩は考え込んだ。これは単なる窃盗事件ではない。何者かが彩の力を狙っているのかもしれない。彼女はすぐに行動を開始することにした。
「鉄矢、楓、神社の周辺で不審な人物を見かけなかったか、周囲の住民に聞いて回ってください。留五郎さんにも連絡を取ります。」
彩自身は、神社の境内と周辺を調査することにした。彼女は地面に残されたわずかな足跡をたどりながら、犯人を追った。その足跡は、神社の裏の小道へと続いていた。
彼女が小道を進んでいくと、突然、前方から影が現れた。その影は、昨夜戦った水の龍とは異なる、人間の形をしていた。しかし、その雰囲気は明らかに普通の人間ではなかった。
「お前が賽銭を盗んだのか?」彩が問いかけた。
影はにやりと笑いながら答えた。「さあ、何のことでしょうね? ただ、あなたのような力を持つ者が、簡単に変身できなくなるのを見てみたいと思ってね。」
彩は心を落ち着け、戦闘態勢に入った。しかし、この戦いはただの力のぶつかり合いではなく、彼女の使命と直接関わるものだった。賽銭なしでは彼女の力は制限されるが、彼女は神社を守るという使命を全うする覚悟を決めていた。
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