第1話 波紋
夜は深く、月が水面に銀色の道を描いていた。美鈴彩は、神社の階段を下りながら心を落ち着けていた。海の神を祀る神社の住職である彼女には、平穏な夜がどれほど貴重か、よくわかっている。
彩はまだ、OSS10としての全能力を掌握しているわけではなかった。しかし、祖父から受け継いだ力と使命を理解し、それを受け入れていた。彼女が今夜向かうのは、地元の港町で最近発生した一連の怪事件の現場だった。その事件は、普通の人々には理解しがたい、超自然的な力が関与しているように思えた。
港に着くと、不穏な空気が漂っていた。波は荒く、風は建物の隙間を鳴り響かせていた。彩は深呼吸を一つし、額に現れた賽銭箱に10円玉を投じた。青い光が彼女を包み込み、戦士「OSS10」としての姿に変わる。
「誰も近づくな! これは警告だ!」と、港の端から声が上がった。声の主は、影のように薄暗い角に立っていた。それは人間の形をしているが、明らかに普通の人間ではなかった。彼の身体は時折、透明になりながら波と同じリズムで揺れていた。
彩は剣を構え、静かに応じた。「私はこの地を守る者。あなたが何者であれ、この町に危害を加えることは許さない。」
怪物は一瞬、形を変え、巨大な水の龍となって彩に襲い掛かった。彩は敏捷に動き、剣を振るうごとに清らかな水流が龍を切り裂いていった。戦いは激しく、彩は何度も追い詰められながらも、海の力を借りて反撃した。
「時間が...」彩は変身の持続時間を意識しながら、戦いを続けた。限られた時間内で、敵を倒すか、撤退するかの判断が迫られていた。
最終的に、水の龍は一つの大きな波となり、消え去った。彩はほっと息をつきながら、変身が解け、元の姿に戻った。彼女は海を見つめ、静かに呟いた。「また一つ、試練を超えた。だが、これが始まりに過ぎないことも知っている。」
彩は剣を納め、神社へと戻る道を歩み始めた。新たな日が近づき、彼女の戦いはまだまだ続くのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます