10円のOCEAN

みっちゃん87

プロローグ

夜が深まるにつれ、海の波音はより一層、その声を高めていった。神社の境内は静かで、ただ月明かりが石段を照らしている。この場所は古来から、海神を祀る聖地であり、美鈴彩にとってはただの家以上のものだった。


彩は神社の階段を上がりながら、祖父から聞かされた言葉を反芻していた。「力は、常に代償を伴う。だが、それを恐れてはならない。」彼女の手には、その力の代償として支払われる10円玉が握られていた。彼女自身がその力の継承者であることを、心の底から受け入れた瞬間だった。


今宵、彩の運命が新たな局面を迎えようとしていた。神社の裏手で、ある不穏な動きがあったのだ。影が一つ、境内の境界を越え、神聖な空間に侵入してきた。その者の目的は明らかに、何かを探している様子だった。彩は息を潜め、祖父から教わった古の技を駆使して、静かにその影に近づいた。


「10円の力を、今ここに解き放つ時が来た。」彩は囁くように言い、額に浮かび上がる小さな賽銭箱に硬貨を投じた。たちまち、彼女の周囲に青い光が満ち、戦士「OSS10」としての装いに変わる。この夜、彼女がこの力を用いるのはこれが初めてだった。


静寂を破り、剣を抜く音が響く。美鈴彩、新たな戦いの幕開けである。

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