黒幕登場
「んあ~、いてェ……」
いつの間にか気を失っていた遥翔はズキズキ痛む頭を抑えながらゆっくりと起き上がった。
「ったく、ここはどこだ?」
辺りを見回すと、鉄の壁で囲われた狭い空間。一方のみに鉄格子の扉があった。
「牢屋か?」
悪いことした記憶ないんだけどな~。と遥翔は不満げに呟いた。
「はるとん?」
どうしてこんなことになったのか分からず、遥翔がうんうん唸っているとすぐそばから声をかけられた。
「あ、ミコトじゃん。お前も捕まったのか?」
同じ牢屋にミコトも一緒に入れられていた。
「そうみたい。でも、あーしにもどういう状況かよく分からなくて」
「いや、普通に考えたら、お前が家出するからじゃないか? もう家出するなよってことだろ」
「それなら、どうしてはるとんもいるの?」
「あ、確かに」
「恐らくだけど、これは人攫いだと思う」
「人攫い? 誘拐されたんか俺? うちに身代金払う金なんかないぞ」
「あ、いや、あーしたちは商品として攫われたんだと思うよ」
「商品?」
「ママから聞いたことがあるんだけど、人を攫って別の世界で売ったりする商売があるって。珍しい人種とかは高く売れるみたい」
「なるほど、俺売られるのか」
「なんで嬉しそうなの?」
遥翔がニヤニヤしてると、ミコトが呆れたような声でそう言った。
「だってあれだろ? 俺が優秀な人材だから攫われたんだろ。ヘッドハンティングってやつだろ?」
「……それは違うよ」
少々遠慮がちにミコトは遥翔の言葉を否定した。
「多分だけど、本当の目的はあーしだと思う」
「え? なんで?」
「あーしはね、一応これでも神の娘だから」
「それがなんか関係あんのか?」
「それはそうだよ。神の子供だからね、神性の質が高いから欲しがる人は多いと思う」
「神性? それってなんだ?」
「神の力のことだよ。神子の人たちが使う力もその神性を用いているんだけど、その純度と量は神の足元にも及ばないの」
「ん? 全然わからん」
「あーしは神の子だから利用価値が高いって思ってもらえればいいよ」
「それならさ、お前じゃなくて、イザナミを攫った方がいいんじゃないのか? 子供より親の方がいいだろ」
「確かにママの方が神性の純度も量も私より全然多いけど、神を捕まえるなんて人間には出来ないよ」
「神子ってのは、すごい異能力みたいなの持ってんだろ? それ使えばイケそうじゃね?」
「神子の能力は神相手には使えないよ。使えたとしても、効かない。それにもし捕まえることが出来たとしても、神は他の世界に行くことは出来ないから、別の世界で売るってことも出来ない。リスクに対して得られるものがないんだよ」
「え? じゃあ、ミコトも異世界行けないんじゃねえの?」
「うんん、あーしはまだ正式には神になってないから、異世界にも行けるし、神子の力もあーしには通じちゃう。だから、ママじゃなくて私を攫ったんだと思う」
「ふ~ん、そうなのか」
「でも、一体誰がこんなことを。あーしを攫ってもママがすぐに見つけて、ヤナギさんたちがすぐに助けに来ると思うし。無謀なこととしか思えない」
「そうか?」
無謀だと言うミコトの言葉に遥翔は疑問を持った。
「それをどうにかできると思ってるから、お前を攫ったんじゃないか?」
「そうだ、そこの小僧の言う通りだ」
遥翔の言葉を肯定する声が牢屋の外から聞こえた。
「え?」
声のする方を見た瞬間、ミコトは驚きのあまり固まった。
「どうして、ヤナギさんがいるの?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます