第3話 桜子の度胸

 おれは桜子の家の前に来ていた。

 ピンポンを押す前にやる事がある。

「ハムニブ本当にいいのか?」

 ハムニブは一人で偵察をすると手を挙げてくれた。

「俺は大丈夫だ心配するな」

「そうか……なら頼んだ」

 おれはケージを開けてハムニブを外に出した。ちなみにハムスター達はちゃんとハムスターサイズの小さい大きさでケージに入れて連れてきている。さすがに人間サイズでは連れてこれないからね。

 おれはピンポンを押した。

「はいはーい♪どうぞいらっしゃい」

 すぐに桜子が出てきた。

「おじゃましまーす。ハムスター達も連れてきたよ」

「ユーキ君4匹も飼ってるんだ」

「本当はもう一匹いるんだけど、体調が悪くてさー」

「五匹も飼ってるんだーすごいね」

 おれとハムスター達は桜子の部屋へ通された。適当な場所に座る。机にはお菓子が置いてあった。

「ところで桜子、飼い始めた犬はどこにいるの?」

 桜子の家は庭付き一戸建てだ。庭には犬はいなかった。

「お母さんの部屋にいるの、今連れてくるね」

 桜子はそう言うと部屋から出ていった。出ていって少し経つと

「ユーキひとつのケージに四人はきついっす」

「おやつ食べたいッチ」

 ハムスター達が騒ぎだす……

「おまえら桜子の前ではしゃべるなよ……」

 そんな事を話していると、桜子が戻ってきた。




 桜子は犬を抱いてやってきた。どうやら柴犬のような感じだ。

「名前はなんなの?」

「ジョンだよ。お母さんが名づけたんだ♪」

「そうなんだ。いい名前だね」

 今のところ宇宙怪人の気配はない。宇宙怪人ではなかったらいいのだが……

「ユーキ君お菓子も食べてよ」

「おう、いただきます」

 その時だった。

「おやつ私も食べたいッチ」

「お腹減ったんよ。ワシも食べるけん!」

 ハムスター達がしゃべりだした……どうしよう、やばいよ……

「今の声何?ユーキ君の声でもないし、お母さんの声とは違うし」

「気のせいだよ」

 おれは、なんとかごまかそうと考えるが、いいごまかし方が思いつかない……その間に、ハムスター達はさらにしゃべる……

「おいらも腹が減ったっす」

「僕も食べるんじゃ!」

 ハムスター達はケージを自分達で開けて、外に出てきた。そして

「このままじゃあ食べれないっす!」

 そう言ったあと、ハムスター達は人間サイズに巨大化した!

 勘弁してくれよ……




「ハムスターが大きくなった……しかもしゃべれるの?」

「実は……」

 もう隠し事は無理だ。おれは全てをしゃべることにした。

「え、宇宙怪人?本当に?」

 桜子はかなり驚いている。それも当然だ……すぐには受け入れられまい。

「すごーい♪ねえおしゃべりしようよー」

 すぐに受け入れたようだ……それならいいや、ハムスター達も嬉しいだろう。

 その時だった。

「宇宙怪人ハムスターだと!我ら宇宙怪人犬の敵ではないか!」

 なんと犬もしゃべった!しかも宇宙怪人だって!

「どうしたのジョン!ハムちゃん達は敵じゃないよ!」

 桜子は犬を止めようとするが、無駄だった。

宇宙怪人ハムスター達は小さくなってしまった。これが、怪電波か!そして今回もおれまで小さくなってしまった……

 なんでなんだ!




 小さくなったおれは前回と同じく、ハムケンの背中に乗る事にした。

 桜子はびっくりして動けないようだった。まあそらそうだろうな。

 その時ハムシーバーから声が聞こえてきた。

「ハムニブか!?今どこに居るんだ?」

「俺は庭に居る。落とし穴を仕掛けた。ここまで連れてこいぞ!」

「そうか!庭まで犬を誘導するよ!ハムニブもこっちにきて戦ってくれ!」

「わかったぞ!」

 しかしどうしたものか……桜子の家は二階建ての一軒家だ。そして今いる桜子の部屋は二階にある。階段を降りないと庭には行けない。

 今は、コタローとハムタクとハムッチがなんとか戦っているがここにハムニブとハムケンが加わっても、一階まで誘導するのは難しいかもしれない。

 ちなみにハムスター達には武器を渡している。ハムスターサイズの武器なんてないので、えんぴつと消しゴムを装備させているだけだが……

 宇宙怪人犬も棒を持っていて、二足歩行でハムスター達を攻撃している、牙とか爪で攻撃してこないのだろうか……しかしえんぴつと消しゴムが、棒攻撃を防ぐには役に立っているようだ。




 そうだ!

「桜子!手を貸してくれ!」

 おれの声に桜子は気を取り直したようだ。

「ユーキ君なんで小さくなっているの?」

「それは後で話す。なんとか犬を庭に誘導する方法はないか!?」

「そうだなぁ。ジョンは今お腹が減っているからエサで誘導できるかも♪」

「それだ!あとおれを手のひらに乗せてくれ。」

 ハムケンの背中に乗ってるより、桜子の手のひら方が安全だ。

 それにハムスター達も思い切って戦える!おれはハムスター達に指示をだす!

「犬が限界まで腹が減るまで頑張ってくれ!」

「おいっす!」

「わかったけん!」

「私も腹減ってるッチよ!」

「僕も頑張るんじゃ!」

 ちょっと文句もあった気がするが、頑張ってくれるようだ。

 その時ハムニブも戻ってきた!

「俺も戦うぞ!」




 宇宙怪人同士の戦いが始まってから五分くらいが経った。

 相変わらず犬は棒でハムスター達に襲いかかっている、噛み付いたりはしないんだな……しかし犬はかなりよだれを垂らしている。そろそろじゃないか!

「ユーキおいら達も腹減ったす!」

「私はずっと腹減っているッチ!」

 ハムスター達も限界みたいだ。じゃあ作戦開始といくか!

 作戦とは、まず桜子が犬にエサを見せる、そして庭まで一気にダッシュするというものだ。成功するといいが……

「ほらジョンおやつだよ…」

 桜子は少し怖がっているようだ。戦いを間近で見ているのだから無理はない。

 すぐに犬は反応してこっちに向かってきた!

「桜子走るんだ!」

「うん♪」

 桜子は犬に背中を向けて走り出した。一気に階段を駆け下る。

 犬はついてきている!

「そうだこのまま庭へ行くぞー」

 階段を降りて、ドアを開けた。もう少しだ!

「桜子頑張れ!」

 その時ハムニブから連絡があった

「ユーキ落とし穴には目印してあるぞ!」

「わかった!」

 桜子はまでたどり着いた。そのまま庭を走る!犬はついてきている!

 ハムスターのシールが貼ってあるところがあった!あそこだ!

「桜子あそこ飛べ!」

「うん♪」

 桜子は落とし穴のところで飛んだ!そして何も無い場所に着地した。

「飛べた♪」

 犬がダッシュで来た、そして落とし穴に落ちた!

「今がチャンスっす!」

 ハムスター達も来たようだ。おれは指示を出す。

「タコ殴りだ!」

「「「「「おお!」」」」」

 ハムスター達は一斉に攻撃した。土煙が舞い上がりその様子は見えない。

「ちくしょー!!!」

 犬はなんとか落とし穴から抜け出した。そして逃げて行った。

「おいら達の勝ちっす!」

 ハムスター達とおれは喜びの声を上げた。




 おれとハムスター達はその後桜子の家でご飯をご馳走になった。

 宇宙怪人犬は桜子の家族には危害を加えた事はないので、戻ってきたら飼い続けるらしい。

 宇宙怪人って結構受け入れられるんだな……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る